美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その7)

2019年06月26日 18時31分53秒 | 経済


*以下は、当時のアメリカが、リーマン・ショックによって引き起こされた「100年に一度」の大不況の最中にあったことを頭の片隅に置いて読むとリアリティが湧いてくるものと思われます。FRB議長バーナンキの大胆な金融緩和が脚光を浴びていましたね。
〔イントロダクション〕
本書の目的は、アメリカの繁栄の復活を促進することです。私は、例の「7つの嘘っぱち」が今日の困った経済状況とアメリカの繁栄の復活の間に立ちはだかっていると主張します。

本書を出版してから、私は、道義心からたったひとりで、私が住んでいるコネティカット州で上院議員を応援する運動をしています。私は、次に掲げる3つの提案でアメリカの繁栄の復権を実現するために私が作成した国家目標を推進しようと動いています。

一つ目の提案は、いわゆる「全給与税の免除期間」の設定です。
*所得税(income tax)は被雇用者のみが負担するのに対して、給与税または給与支払税(payroll taxまたはemployment tax)は雇用者側も負担があります。
それによって、合衆国の財務省は、生きるために働いている人々から一週あたり総額200憶ドルの取り上げをやめることになります。その代わり、雇い主と被雇用者の双方への連邦保険寄与法に基づく支払いがなされることになります。一年間にふたりで10万ドル稼いでいるアメリカのカップルは一月当たり650ドル以上手取りの給料がアップします。そのアップ分を家のローンの支払いに充てて、お金のやりくりの危機的な状況から脱却し、家に安心して居続けることができるようになるかもしれません。あるいは、臨時の手取り分はみんなが請求書の支払いをしたり、ショッピングを楽しんだりするのをうながすかもしれません。それは、アメリカ人が昔の当たり前の生活の仕方に回帰することなのです。

私の二つ目の提案は、連邦政府が州政府に一人当たりの税収につき500ドルを――紐付きではない形で――分け与えることです。これによって州政府は窮地を切り抜けられるし、欠くことのできない公的サービスを維持することもできるようになります。全給与税の免除期間によって生み出される臨時の手取り分がもたらす人々の出費に基づく購買力と数百万の新たな仕事口は、経済活動を復活させ、連邦政府の税収は、リーマン・ショック以前の状態にまで回復することでしょう。

私の3つ目の提案は、連邦政府資金による時給8ドルの、みんなが喜んですることのできる仕事に就くことを通して、アメリカの復権を強く求めることです。この計画の第一の目標は、失業者を民間部門の雇用に導くことです。全給与税の免除期間と州政府への税収のシェアリングは、停滞する経済活動の即効薬になることでしょう。民間部門の雇用者たちは、彼らの生産物を求める需要の高まりに直面して、数百万人を即座に雇い入れようとするでしょう。過去の不況において、長期間の失業状態にあった人々はもっとも魅力がない存在だったので、企業は彼らを雇い入れることに消極的であることが判明しました。過渡的な雇い入れは、こういう人々を労働力に引き入れることでしょう。そうすれば彼らは、自分たちに何ができるかを、また、自分たちが責任感にあふれていて、時間通りに始業することができることをも示すチャンスが与えられるでしょう。このことは、民間部門での仕事にありつくのが難しかった人々に仕事を得る機会を与えることでもあります。そういう人々には、仕事を失って自分たちの失業手当給付金を使い果たしてしまった中年の人たちと同様に、危険性の高いティーン・エイジャーや出所したての人々や身体障害者や老人も含まれます。この計画は、私の3つの提案のなかでいちばん金がかかりません。また、経済が成長するのにしたがって、民間部門の雇用を円滑に最適化するのにも重要なものです。

では、これらの提案を推進するために、私はどのように比類なき資格を与えられるのでしょうか。私の提案が正鵠を射たものであるという確信は、金融経済界での40年間の経験に基づいています。私は、以下の質問に答えうるおそらくただひとりであるとあえて申し上げましょう。すなわち、「おまえはどうやってその膨大な支出をするというんだい」という質問に。本書は、この問題と真正面から取り組んでいます。また、経済学が今日の貨幣制度の操作可能な現実と取り組むことに勇気を与えます。

*次回からいよいよ本文に入ります。
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