美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

MMTの変わり種・モスラーの『経済政策をめぐる7つの嘘っぱち』を訳してみました(その22)

2019年09月16日 00時13分25秒 | 経済


*海外との取引は、米国統合政府にとってみれば、spreadsheet(表計算ソフト)という自分の手のひらのなかの単なる数字の移動にすぎない、という趣旨の議論が展開されています。当論を突き詰めれば、どうやら「貿易赤字が膨らむのは困ったことだ」という通念は一面的すぎる、という結論に至りそうです。

再び思い出してください。合衆国財務省証券は、FRBに設けられた普通預金口座にほかなりませんでしたよね。同証券の買い手は、FRBにお金を預け、その後利子を受け取ります。だから同証券は普通預金なのですね。

中国が一年物の財務省証券を買ったとしましょう。それで起こるのは、FRBがFRBに設けられた中国の当座預金口座から1億ドルを引き落とし、FRBに設けられた中国の普通預金口座に1億ドルの数字が付け加えられること。それだけです。

では、中国が合衆国財務省証券を2兆ドル保有しているとしましょう。それらが満期になり中国に返済すべきときを迎えたとき、私たちは何をするのでしょうか。私たちは、2兆ドルをFRBの普通預金口座から同じくFRBの当座預金口座に移して、中国が次に何をしたいと言うのかを待つのです。

すべての合衆国の負債が満期を迎えたとき、これがなすべきすべてなのです。そうして、こういうことは絶え間なく行われていることなのです。FRBは、ドルを自分の帳簿の普通預金口座から当座預金口座に振替えます。人々が財務省証券を買うとき、FRBは、ドルを当座預金口座から普通預金口座に振替えます。それだけのことで大騒ぎをしているわけです。

馬鹿げたことですが、悲劇的なことでもあります。

中国は、私たちアメリカ人が、“赤字を埋め合わせする”のに財務省証券を必要としてなどいないことを知っています。私たちのことを愚か者だと思っていることでしょう。その愚か者には、ガイトナーもクリントンもオバマもサマーズもそのほかすべての閣僚も、米国議会もメインストリームメディアも含まれます。

読者のなかで、興味をお持ちになった方々のために、いま述べたことをもっと技術的な流儀で述べることをお許しいただきたいと思います。例えば、財務省短期証券や中期証券や長期証券が銀行によって買われたとき、政府は、私たちが“通貨制度”と呼ぶ表計算ソフトに2つの記入をします。まず、政府は、FRBに設けられた買い手の準備金口座(当座預金口座)に借方記入をします(すなわち、同口座から控除します)。その次に、FRBに設けられた買い手の証券勘定(普通預金口座)を増やします(貸方記入をします)。前にも述べたとおり、政府は単に自分自身の表計算ソフトの数字を変えるだけなのです。ひとつの数字が減り、もうひとつの数字が増える。中国が保有する財務省証券が満期になり、返済をするという“恐るべき日”を迎えたとき、FRBは、ふたたび自分自身の表計算ソフトの二つの数字を単に入れ替えるだけなのです。FRBは、FRBに設けられた中国の証券勘定に借方記入をします(すなわち、同口座から控除します)。そうして、FRBに設けられた中国の準備金口座(当座預金口座)に貸方記入されます(すなわち数字が上乗せされます)。それがすべてです。それで負債は返済されたのです!

さて、中国は、お金を返却されました。中国は、FRBの当座預金口座に多額のUSドルを所持しています。もし中国がそのお金で何か、たとえば車やボートや不動産やほかの通貨を欲しいと思うのなら、ドルという保証金と交換に喜んでそれらを売ろうとする者から市場価格でそれらを買わなければならなりません。そうしてもしも中国が何かを買うなら、FRBは、中国の当座預金口座から代金相当額を差し引き、中国に品物を売った者の当座預金口座に同額を上乗せします。

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