美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

三日連続・人民元切り下げをめぐる諸動向(十四日、追加あり)――フェイス・ブックより(美津島明)

2015年08月13日 18時32分31秒 | 経済
三日連続・人民元切り下げをめぐる諸動向(十四日、追加あり)――フェイス・ブックより(美津島明)



中共当局が、今月十一日から三日連続で、人民元切り下げを断行しました。おそらく、中国経済は、金融面・実体面ともに、きわめて苦しい状況にあるのでしょう。つまり、中共当局は、自国通貨切り下げを、なにがしかの確固とした見識によって実行しているのではなくて、苦し紛れにやっているという印象があるのです。この経済政策は、中国経済に対しておそらくなんらのプラスの効果ももたらさず、むしろ悪影響を与えることになるような気がします。のみならず、今後世界経済にも少なからぬ災いをもたらすことになるのでしょう。

人民元切り下げが目下どのような余波を諸方面にもたらしているのか、ここ数日間の動向を時系列順にお伝えいたします。


●八月十二日(水)<中国>人民元2%切り下げ 輸出促進の狙い (yahoo japan ニュース十一日)http://news.yahoo.co.jp/pickup/6170236

二〇一二年以来、元の実効為替レートは、一貫して上がり続けてきた。そこには、「強い元」をアピールし、元の国際化を実現しようとする、中共当局の強い意志があったものと思われる。しかし、不動産価格は下がるし、株価は暴落するし、実体経済はもとより振るわないし、それに加えて、ここにきて、輸出額が低下してきた(注1)。それはまだまだ内需の乏しい中国経済にとってはゆゆしき事態である。そこで、やむなく、中共当局は、元を切り下げ、輸出の促進を図ろうとしたわけである。相当に苦しい台所事情をうかがわせる。しかし、それにしても、輸出促進のための意図的な自国通貨切り下げは、国際社会のルールに反する。アメリカは、だまっているのだろうか?

(注1) 私は八月九日(日)に、「中国輸出、8.3%減=景気に影響も―7月」( gooニュース)というニュースを受けて、FB上に、次のようなメモ書きをしています。

〈大陸中国は、内需主導型経済の日本とは異なり、韓国と同様にまだまだ外需依存体質を脱していないので、輸出8%減は、国内実体経済に少なからざる影響を及ぼすものと思われる〉。


●八月十二日(水)「上海株、続落で始まる 連日の人民元基準値下げ、資金流出懸念大きく」
(日経新聞 十二日)http://www.nikkei.com/markets/kaigai/asia.aspx?g=DGXLASFL12H70_12082015000000

連日の人民元基準切り下げ。中共は、あいかわらず、攻撃的だ。にしても、元安が加速すれば、輸出は確かに増えるが、株安で顕著になっている資金流出が加速され、資産価値が下落することでバブル崩壊の傷口が広がることになる。「あっち立てれば、こっち立たず」が、大陸中国経済の現状である。中共はいったい何をどう考えているのだろうか。その本当のねらいはなんなのか。あるいは、混乱しているだけなのか。しばらく静観する必要がある。昨日も書いたが、アメリカは、この露骨で攻撃的な自国通貨安誘導を座視するのだろうか?

●八月十二日(水)「ベトナム、取引幅拡大=人民元切り下げで―輸出競争力維持・「通貨戦争」に発展も」(時事通信社 十二日)
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-150812X120.html

中共の人民元切り下げのはらむ攻撃性に、ベトナムが反応したわけである。アジア諸国に自国通貨切り下げの連鎖反応が生じる危険性がある。中共発のアジア通貨戦争が火ぶたを切ってしまうのか。輸出依存国家・韓国がまずは敏感に反応しそうである。気が早いかもしれないが、そうなると、アメリカの利上げのタイミングへの思惑とも重なって、アジアからのドルの大量流出もありうることになる。つまり、アジア通貨危機の再来である。それが最悪のケースだ。

●八月十三日(木)株、「一時400円超安 人民元安でちらつく2万円割れ」(日経新聞 十二日)http://www.nikkei.com/markets/features/30.aspx?g=DGXMZO9045126012082015000000

株の一時的な変動はあまり気にならないが、記事のなかで、「市場関係者は人民元のさらなる下落を見込む。人民元の基準値は前日の終値をベースに決めるため、13日以降も切り下げが止まるかが不透明」とあるのは無視できない。人民元安がさらなる株価安と不動産価格安を招くと、その影響は、アジア大に広がり、大規模な通貨安を招き、世界経済に大きな影響を与えることになるからだ。安倍首相は、中共の人民元切り下げの動きがとまらないようであれば、遅滞することなく、消費増税の無期限延期を発表し、内需強化によって、中共発の世界経済のデフレの大波に対する防波堤をいち早く張り巡らせるべきである。国民はその意思決定を歓迎し、低落気味の内閣支持率が回復することだろう。景気の舵取りを誤れば、ヘタをすると麻生政権の二の舞である。安保関連法案に、その次は、川内原発再稼働問題に、間髪入れず食い下がろうとするアンチ安倍ネガキャン勢力の執拗さをあなどってはならない。

●八月十三日(木)「<中国>人民元、連日切り下げ…市場の動揺拡大」(毎日新聞 十二日)
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/mainichi-20150813k0000m020108000c.html

人民元の連日の切り下げの影響が、強いインパクトを伴って、世界に広がりはじめている。特に、新興国の場合、〈『資源安』『人民元切り下げ』『米利上げ』の三重苦に陥っている〉。BRICS神話は、もはや過去のものになりつつある。アメリカの対応に注視したい。

●八月十三日(木)「米国の幹部議員ら、中国の人民元切り下げを『挑発的』と非難」(ロイター 十一日)
http://jp.reuters.com/article/2015/08/11/china-markets-yuan-congress-idJPKCN0QG2B720150811

米国は、議員レベルでは、中共による人民元切り下げの強行を不正行為、挑発行為として、厳しく批判しているようである(日本の国会議員の間でそういう声がある、という話は聞いていない)。「為替操作国と認定すべし」という声もある。もし、オバマ政権が中共を為替操作国と規定すれば、大陸中国の保有する米国債は紙くずになる。

●八月十三日(木)「人民元3日間で4・65%下げ…元安誘導が加速」(読売新聞 十三日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150813-00050063-yom-bus_all
中共による、この露骨で強引な人民元安誘導操作が、世界経済に災いをもたらすことは必定である。通貨によって、世界に戦争を仕掛けているのと同然である。なんとも困った国である。加地伸之氏がかつて中共を「巨大な田舎国家」と喝破したのは正鵠を射ている。ここは、アメリカに頑張ってもらうしかなかろう。

●八月十三日(木)「3日連続人民元切り下げ 中国、特異な“相場管理”『国際秩序乱す』批判の声も(産経新聞 十三日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150813-00000088-san-cn

通貨の国際化を積極的に推し進めていないにもかかわらず、中共が、AIIBを立ち上げたり、IMFのSDR(通貨引き出し権)の獲得を目指したりするのは、じつは、おこがましいにもほどがあるというべきである。また、中共は、国際的な通貨秩序を守る気や世界経済に貢献する気などさらさらなくて、横暴かつ強引に、自国の都合のみを優先させようとするので、ヘタに元を国際通貨に昇格させると、世界経済には災いがもたらされるだけであるような気がする。そのことが、今回の人民元切り下げ騒動ではっきりとしたのではなかろうか。

〔追加〕
●八月十四日(金)「人民元、窮余の策に限界 切り下げ幅3日で4.5% 」(日経新聞 十四日)http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM13H84_T10C15A8EA2000/

「人民元切り下げ騒動」は、世界の、中共に対する不信感を残しただけで、とりあえず収束しそうである。今回の措置で貿易収支が改善されるとも思えない。元の国際化には明らかにマイナスの振る舞いだった。当局の「迷走」の印象はぬぐえない。

これは憶測の域を出ないが、三日連続で人民元を切り下げた後、申し訳程度に切り上げたところから察すれば、オバマ政権から、中共の今回の露骨な為替操作に対して、なにがしかの強烈なメッセージが発信されたのではなかろうか。
   

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