美津島明編集「直言の宴」

政治・経済・思想・文化全般をカヴァーした言論を展開します。

中国経済をめぐっての覚書――フェイス・ブックより (美津島明)

2015年08月09日 20時12分31秒 | 経済
中国経済をめぐっての覚書――フェイス・ブックより (美津島明)


出井伸之・ソニー元CEO

目下の世界経済のおもな着眼点は、①ギリシャ問題に象徴されるEUの動向、②アメリカ・FRBの利上げのタイミング、③中国経済の崩壊の可能性やそのタイミングの3つであると言われています。それに、ISをめぐる中東情勢の不安定化・危機の深化を付け加えてもよいかもしれません。

そのなかで、日本にとっていちばん直接的な影響がありそうなのが、③の「中国経済の崩壊の可能性やそのタイミング」であるというのは、衆目の一致するところでしょう。むろん、そのほかの論点を過小評価してならないことは言うまでもありません。

それで、昨日・今日、中国経済をめぐってフェイス・ブックにアップしたいくつかの覚書をお見せしようと思います。みなさまが中国経済について考える材料にでもなればと思います。

●八月八日(土)「中国経済成長率、実際は公式統計の半分以下か 英調査会社が試算」
(ロンドン 六日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/2015/08/07/china-economy-data-idJPKCN0QC0G520150807

中共当局の公式発表の成長率7%の半分どころか、鉄道貨物輸送量、消費者物価指数の下落傾向を勘案すれば、いまの中国経済は、デフレに突入した可能性さえありうる。つまり、ゼロ成長。鉄道貨物輸送量は十四年当初から、消費者物価指数は十二年当初から前年同月比で低下し続けているのである(鉄道貨物輸送量については、ナンバー・ツーの李克強首相が「当局が発表する経済指標のなかで唯一信頼できるもの」と評したことはよく知られている)。

このことは、中共当局が、適切な経済政策を施すための正確な経済指標をほとんど持っていないことを意味する。おそろしいことである。なぜ、おそろしいのか。そういう場合、荒っぽいけれどさしあたり高い効果が期待できる経済対策=戦争に走る公算が大きいからである。かつて、ヒトラーがそうだったように。

●八月九日(日)「崩壊する中国“成長の方程式” 不動産ブーム支えた外準の減少が止まらない」(田村秀男 産経ニュース 八日)
http://www.sankei.com/economy/news/150808/ecn1508080008-n1.html?fb_action_ids=1482866432012327&fb_action_types=og.recommends&fb_source=other_multiline&action_object_map=%5B849715265124060%5D&action_type_map=%5B%22og.recommends%22%5D&action_ref_map=%5B%5D

中共の通貨発行は、中央銀行である中国人民銀行が、国内に流入するドルを買い上げて外貨準備とし、その額を基準にして通貨人民元を発行し、その元資金を商業銀行に供給する、というしくみである。ドルの裏付けのある通貨発行をすることで、元の信用をキープしてきたわけだ。実質的にドルペッグは継続されているのだ。

ところが、この一年間、外準が減少し続けているせいで、通貨発行が思うようにできず、機動的な景気対策がかなわなくなっている。AIIB構想も、潤沢な外準があってこそなのであるから、外準の減少傾向は、中共にとって、きわめてゆゆしき事態なのである。

それゆえこれから、日本政府に対する友好姿勢が際立ってくるはずである。すでにその兆候はある。日本政府には、例のごとくに中共からコロッと騙されるお人好しにならないよう注意していただきたい。心配なのは、外務省の事なかれ主義である。彼らは、中国の「軟化」にヒョイと乗っかり、政府を自分たちの都合のいいように誘導しそうな気がしてしょうがない。

●八月九日(日)「中国失速、鉱業に打撃=金属相場安で人員削減」(時事通信社 八日)
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-150808X672.html

大陸中国の経済失速のせいで、金属相場が下落している。そのため、世界経済に悪影響が出始めている、ということ。具体的には、英資源大手アングロ・アメリカンの業績が悪化したり、有力鉱業国の南アフリカがあわてふためいたいりしている。中国経済の世界経済への影響は、金融面にとどまらない、ということである。

●八月九日(日)「中国輸出、8.3%減=景気に影響も―7月」(時事通信社 八日)
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-150808X650.html

大陸中国は、内需主導型経済の日本とは異なり、韓国と同様にまだまだ外需依存体質を脱していないので、輸出8%減は、国内実体経済に少なからざる影響を及ぼすものと思われる。大陸中国の輸出依存率(輸出総額の対GDP比)は、22.67%、日本は15,26%である。ちなみに韓国は、43.87%と突出している。

日本は、バカマスコミが喧伝したがっているような輸出依存型の経済構造ではない。そういう経済構造からは、高度経済成長期に早々と脱却しているのである。アメリカに次ぐ内需主導型経済国家なのである。
http://www.globalnote.jp/post-4900.html

●八月九日(日)「ソニー元会長の出井氏、中国のゲーム企業顧問に」(YOMIURI ONLINE 八日)
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/business/20150808-567-OYT1T50114.html

たしか出井・ソニー元CEOという人物は、ソニーをボロボロにした張本人ではなかったか。これから混迷の度を深める公算の高い中国経済にあえて首を突っ込むところから、彼がソニーをダメにした大本の原因が、中国経済に対する見通しの甘いその媚中性にあった、ということを垣間見るような気がするのは私だけか?日経新聞が、ヨイショ記事を書きそうなネタである。遊族ネットは、出井氏をおそらく日本から金を引っ張り出す金ヅルとしか見ていないのではなかろうか。まあ、推測の限りでしかないが。

私は、出井氏を個人的に誹謗中傷したいわけではない。むろん、彼には何の恨みもない。理不尽なことに、財界に「大陸中国は、巨大な市場」という「中国幻想」が根強く残っている事実を指摘したいだけである。ほんの数年前に反日暴動によって多大なる被害を受けたうえ、中共当局からなんの補償もされなかったという「泣きっ面に蜂」の経験をしておきながら、懲りずに、伊藤忠のように大陸中国に投資し続ける日本企業がまだまだ存在するのである。

むろん、撤退したくても、先方の法律上のご無体な縛りがあって思うに任せないという事情があるのは理解できる。既存の現地日本企業はいわば人質にとられているようなものなのである。だったらなおさら大陸中国に対しては警戒モードで臨むのが常識だろう。出井氏の身の処し方や、日経新聞等の大陸中国がらみのネタの取り扱い方から、そういう危機感や緊張感が感じられないことが、私は不思議でしょうがないのである。そういうことが、経団連の媚中体質につながっているのだろう。

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