フーバー元大統領
今回は、「林千勝さん、大東亜戦争を語る」シリーズから、ちょっと脇道にそれます。林千勝さんが、ご自身の最新刊『日米戦争を策謀したのは誰だ!』を語っている動画をたまたま目にし、とても興味深かったもので。
本書は、フーバー元米国大統領の自伝『裏切られた自由』を導きの糸にして話が展開されます。
林さんは、フーバーがフランクリン・ルーズベルトの第二次世界大戦への参戦をめぐる謀略を生々しく暴いている点を高く評価しながらも、フーバーに対する3つの違和感を表明します。それは、以下のとおりです。
① 開戦前の日本についてよく分かっていないこと。
フーバーは、権力掌握のためには、共産主義者でも極右でもだれでも利用し、日本が破滅しても平然としていられた近衛文麿を日本における良心的リベラルであり、彼こそが日本の平和実現の核であると思っていました。また、当時の陸軍参謀が実は最も平和的であったのにもかかわらず、日本が無謀な戦争に突入したのは陸軍と独裁者の暴走によると考えていました。さらに、当時のアメリカと同様に日本でも政治の世界に国際共産主義者の謀略が渦巻いていたことをまったく認識していませんでした。林さんは、フーバーのそのような無知に違和感を抱いたそうです。
② 反戦についての言葉だけがあり、それを実現するための策がない点。
戦争路線を推進しようとあの手この手の策謀をめぐらしている敵に対抗するためには、それを上回る策謀をめぐらし、スキを突かれてひっくり返されないようにしなければなりません。ところがフーバーは、反戦平和についての言葉だけがあり、それを実現するためのインテリジェンスや深謀遠慮がありませんでした。
③ 自伝のなかに、戦争路線を推進しようとする勢力に資金を提供し、実質的にそういう勢力を支える存在である「国際金融資本」という言葉、あるいは、ロック・フェラーやロス・チャイルドの名がまったく出てきません。林さんは、そのことに違和感を抱いたそうです。
林さんによれば、それらの3項目の逆をうまくまとめれば、戦争の道筋に対する正しい認識ができるのではないかと考えたそうです。
すなわち、こうなります。
ルーズベルトが、国民の大多数の厭戦気分を「見事に」ひっくり返して日米戦争を実現できたのは、①日本の政治状況を正しく把握していたからであり、②戦争を企てる陰謀・策謀を精緻にめぐらしていたからであり、③国際金融資本の資金的バック・アップがあったからである、と。
次に林さんは、戦争に関わる歴史をつかまえるための4段階を唱えます。
第一段階は、日本人ならだれでも一度はその洗礼を受ける「東京裁判史観」あるいは「自虐史観」の段階。多くの人は、この段階にとどまります。ちなみに、私の知り合いでもこの段階にとどまっている方がほとんどです。南京「大虐殺」や従軍慰安婦の強制連行を頭から信じ込んでいるのがその典型例でしょう。また、本人がこの段階を超えたつもりになっているだけ、という場合もあります。頭では「東京裁判史観」を否定しても、感性レベルになると超えられないのです。帝国陸軍や特攻隊や核兵器の保持に関して俄然否定的になったりするのがその例です。私はそう考えています。私自身、自分が東京裁判史観をどこまで乗り越えることができているのか、懐疑的です。
第二段階は、東京裁判史観・自虐史観からの脱却の段階。この段階にある人はぐっと少数になります。
第三段階は、コミンテルンの罠や謀略の存在を明瞭に認識する段階です。日本は、日米戦争に突入しアメリカに惨敗する過程において、国際共産主義者の罠にはまり、してやられました。その事実を直視することが、正しい歴史認識に通じる。林さんは、そう言います。
第四段階は、コミンテルンを動かし、そこに資金を投入し、サポートした国際金融資本の存在をはっきりと認識する段階。独裁者スターリンが、世界情勢の一から十までを把握し、的確に資金を過不足なく投入し、意図した方向に世界情勢を動かしたとは考えられません。世界を動かすには莫大な資金が必要なのです。国際金融資本がコミンテルンの資金源であるという歴史の真相をしっかりと認識するのが歴史の第四段階である、というのです。
第四段階に至ることで、東京裁判史観・自虐史観の乗り越えもより確かなものになる。林さんは、そう強調します。
それらをふまえたうえで、林さんは、次のように述べます。
① ロックフェラー一世とロックフェラー二世に触れないことには、20世紀は語りえない。
② 日本の共産主義系列と国際金融資本系列の一群は、大日本帝国を日米戦争に導き、国家の破滅を通じて革命を成就しようとした。近衛文麿は、その一群を徹底利用することで日本の覇権掌握の野望を果たそうとした。ところが、その一群の関係図は、近衛との接触の前にすでにできあがっていました。つまり近衛は、利用したつもりになっていたが、実は利用されていた。
共産主義系列と国際金融資本系列の一群とはなんでしょうか。共産主義系列のトップは、第一次近衛内閣で内閣書記官長に抜擢された風見章でしょう。国際金融資本系列の重鎮は、松本重治でしょう。その二人をつなぐ人物が、かの有名な尾崎秀美(ほつみ)です。いずれ明らかになるでしょうが、彼らを頂点とする20名ほどが、近衛とともに日本を破滅の淵に追いやった張本人、すなわち、戦争犯罪人の最たるものなのです。ちなみに、このグループの四分の一は朝日新聞社の人々です。朝日新聞は、戦前も戦後も「なんとしても日本を壊したい」というコケの一念を堅持する点で一貫しているのです。社風が、まったく変わっていないのです。これは批判というより単なる事実です。
ついでながら、意外なことに、海軍の重鎮、すなわち、米内光政・永野修身・山本五十六の三人は、100%の共産主義者である風見章を通じて、共産主義系列の一角を占めます。本書を紐解くまで、私は彼らのそういうつながりをまったく知りませんでした。この事実は、大東亜戦争のなりゆきに致命的な悪影響を及ぼすことになりました。それについては、いずれ。
では、ごらんください。
【林 千勝】日米戦争を策謀したのは誰だ!【WiLL増刊号 #016】