*今回から、「Deadly Innocent Fraud #2」です。連邦政府の財政赤字についての議論が続きます。「次世代の子どもたちにツケを回すな」というのは、選挙での候補者たちの訴えの常套句ですが、それはまったくの誤りである、という趣旨の議論が展開されます。
ひどい無知による嘘っぱち#2:
「私たちが財政赤字を残すことは、次世代の子どもたちに借金の重荷を背負わせることである。」
事実:
〈総合的に判断すれば、本当の意味において、そのような重荷などありえない。借金があろうとなかろうと、次世代の子どもたちは、彼らが生産しうるものは何でも消費するのだから。〉
この、財政赤字は次世代の子どもたちの重荷になるという嘘っぱちは、人びとが政府の財政赤字に関連した主要な問題に言及するとき、開口一番、飛び出してくる文言の定番です。いま借金することは、今日の出費に対する後の支払いを意味する、というのです。もしくは、メディアでよく見聞きするがごとく、
“今日の財政赤字の増加は、明日の税金の増加を意味する”
後にツケを回すことは、私たちの子どもたちの生活水準や一般的な幸福度が財政赤字のせいで将来低下することを意味する、と。もし連邦政府が財政赤字を出したら、将来世代によって支払われるべき重荷が残されることになる、と彼らは考えているのです。
そうして赤字の数字は、安定せずよろめいている!
しかし、幸運なことに、ほかのすべてのdeadly innocent fraud と同様に、この嘘っぱちもたやすく理解されうる方法で進んで捨てられています。実際、次世代の子どもたちが、いわゆる“国の借金”なるもののせいで、将来の財やサービスを奪われているという考えは、馬鹿げているというよりほかはありません。
ここに、それがよく分かるお話しがあります。数年前、私は、セントクロイクスのボート乗り場の桟橋で、コネチカット州の元上院議員で知事のローウェル・ウェイカーと彼の奥さんのクローディアに偶然出会いました。私は、ウェイカー知事に州の財政政策の何が問題なのか尋ねました。彼は「われわれは財政赤字の増加と次世代の子どもたちに今日の支出のツケを回し重荷を残すことを止めなければなりません」と返事をしました。
それを受けて、私は、できうることならば彼のロジックの背後にある欠陥をあぶりだそうとして、次のような質問をしました。「次世代の子どもたちが、いまから20年間毎年1千5百万台の車を作るとすれば、彼らは借金を清算するために2008年に舞い戻らなければなりませんか。私たちは、第二次世界大戦がもたらした長引く借金を清算するために1945年に舞い戻っていまだに財やサービスを送り続けていますか」と。
そうして今日、私はコネチカット州の上院議員に立候補していますが、何も変わっていません。ほかの候補者たちの進行中の訴えは、自分たちは支出に対する支払いのために中国のようなところからお金を借りていて、子どもや孫たちにツケを回しているといったものなのです。
もちろん私たちはみんな連邦政府の赤字を清算するために昔に舞い戻ってそこに財やサービスを送ったりしていないことや次世代の子どもたちもまたそんなことをするには及ばないことを知ってはいます。
過去の財政支出によって、次世代の子どもたちが、働いて彼らが生産しうる財やサービスが生産できなくなる理由などまったくありません。合衆国財務省債券がどれほど際立って多かったとしても、次世代の子どもたちの将来において、今日がそうであるのと同じく、生きている者はだれでも、働いて財やサービスという生産物を生産し消費することができます。過去のせいでいまの生産をあきらめたり、前世代に舞い戻ってそれを送り届けたりするいわれはまったくないのです。仮に、彼らがそうしたいと思ったとしても、です。
赤字財政を補填することは、まったく重要ではありません。政府が財政支出をするとき、単に私たちの銀行口座の数字が増えるだけです。もう少しきちんと言えば、私たちが利用するすべての商業銀行は、アメリカの中央銀行であるFRBに準備金口座を設けています。FRBに設けられたこれらの準備金口座は、どの銀行においても設けられている当座預金口座のようなものです。
課税なしで政府が支出をするとき、FRBの適切な当座預金口座(準備金口座)の数字が増えるだけのことです。これは、例えばあなたが政府から2000ドルの社会保障の支払いを受けるとき、あなたの銀行がFRBに設けた当座預金口座の数字が2000ドル増え、自動的にあなたの銀行に設けたあなたの口座の数字もまた2000ドル増えることを意味します。