福島の処理水問題でまた中国との関係が悪化して来ている。
だからといって、お互い頭に血が上って罵詈雑言(ばりぞうごん)の投げ合いはやめたほうがいい。
伊藤忠商事の会長を務め、初の民間出身の中国大使だった丹羽宇一郎氏の言葉が心に響く。
「私が中国大使だった時に親しくしていた中国政府の要人がいる。人格識見ともに優れた国際人である。私とは肝胆相照らす仲であった。その彼に、あるときこう言ったことがある。
”たしかに戦前の日本は中国にひどいこともしたが、いつまでも過去の出来事にこだわっているよりも、未来志向でいくほうが日中にとってもよいのではないか”
外交官としてではなく、中国のよき友人に対する私の率直な意見である。
彼の意見も、また外交官ではない彼の本音だった。
”私の家族は日本軍に殺された。日本軍はその遺体を戦車で轢いた。あなたはそれを忘れろというのか!”
普段は温厚な彼が、このとき少し激しているように見えた。
あまり物怖じすることのない私であるが、このときの彼の言葉に反論できなかった。
彼らは日本軍を許していない。彼らが許したのは、軍国主義によって戦場へ出ることを余儀なくされた日本国民である」
このところ気になるのは「歴史修正主義」が段々と鎌首をもたげてきていることだ。
日本にとって嫌な歴史は抹殺してなかったことにしようという動きだ。
このような動きに対して、
実際に戦争体験をした人やその体験を聞かされて育った人たちの言葉をしっかりと受け止めることだと思う。
習近平政権のみが中国の実像ではない。背景にある文化を尊重することからお互いの理解が生まれる。