ドイツの気鋭の哲学者、マルクス・ガブリエルによれば、日本は「優しい独裁国家」だと言う。
何をもってそう感じるかというと、例えば時間通りに運行する電車のシステムについてだ。
完璧になめらかな機能性は、日本文化が非常に発達しており、誰もが美の共通認識を持っており、食べ物も庭園も、すべて完璧に秩序が保たれている。それが日本文化の素晴らしい面だと評価している。
しかし表には裏があるように暗黒の面があると指摘する。
時間に遅れてはいけない、問題を起こしてはいけないと、まるで精神性まで抑えるかのような力だ。
安倍晋三が独裁者になるのではないかと一時期心配したが、このところコロナウイールスへの対応を見るとそんな心配も吹っ飛んだ。
今回のような「狼狽えぶり」ではとても独裁者にはなれない。
逆に心配なのは、自治体が「自粛要請」に従わないパチンコ店を公表すると、抗議や脅迫が殺到する事態になった。
「コロナウイールスによる死」を防ぐことが、金科玉条の如くにすべてに勝るという発想は危ない。
パチンコ店を休業することによってそのパチンコ店を生活の糧としている人たちへの思いが至らないのだろう。
もう少し客観的な数字を見ると、パチンコ業界の雇用は、25~30万人と言われている。
日本の産業の柱である自動車業界が20万人だから、無視してよいような数字ではあるまい。
もっともかねてから行儀の悪い業界だと指摘されてきたので、この際だから叩けとなったのかもしれない。
自粛要請に従わない者とかコロナウイールスにかかった人間は排除しても良い、というような「空気感」は早めに潰しておくに越したことはない。
山本七平が、日本教の教義としての「空気」が大きな力を持ちやすいのは、絶対的一神との契約と言う考え方が無いからだという。
マルクス・ガブリエルが「優しい独裁国家」と感じた日本の「空気感」は、それなりに生かして使えば「自粛要請」で8割が従う。しかしその裏にはダークサイド(暗黒面)があることを充分わきまえておくべきだろう。