(1992年)松本清張死去
日本を代表する推理作家。
トリック重視だったそれまでの探偵小説の限界を打ち破り、より現実に根差した動機・背景を織り込ませた社会派推理小説の分野を確立させた(「清張以前・以後」というフレーズは決して大袈裟ではない)。
また、歴史物の執筆や実際に起きた事件の真相に迫るノンフィクション作品(とりわけ『昭和史発掘』の2・26関連は圧巻)も多数発表。
扱うジャンルの広さ・多作ぶりには驚かされる。
推理小説はそんなに読まない僕でさえ、清張の小説だけは沢山読んだ。
が、余りに数が多い為、全巻読破は生涯達成出来そうにない(笑)。
亡くなった日のテレ朝「ニュースステーション」で、これほどの国民的作家を国家レベルで表彰していない(してこなかった)怠慢ぶりを久米宏が示唆し、批判する論調を唱えていたが、それは違うと感じた。
清張は上滑りでない、本物の「弱者」の側の視点の持ち主である。
如何なるかたちであれ、体制側により持ち上げられる姿は清張には似合わない。
賞状ひとつなかった現実こそが作家・清張にとっての勲章であり、かけがえのない誇りである。