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桜の花と伊藤彦造の初陣の絵

2009-04-08 21:04:45 | 弥生美術館&竹久夢二美術館 日本出版美術研究会
伊藤彦造、滅びの美学を描く、血塗られた絵師とも称される私の大好きな挿絵画家の一人。
サムライの姿を多く描いたこの昭和の絵師の絵の中でも、特に好きなのが初陣のタイトルで発表されたこの一枚。(少年画報・1951年4月号)
進学、就職の春のはなむけとして描かれた爽やかな一枚の絵、彦造自身は
馬上の若武者は、吹き散る桜花を馬足にかけるのを惜しんで、軍扇にうけとめようとする優雅で、しかも勇ましい心をあらわした絵です。
とコメントしているのだが、私には、この絵の中に一つのドラマが見える。


父親がまだ幼い頃に合戦で討ち死にしたため、いまは没落しかけた武家の名門の一族の若武者。
初陣に際して、父の代わりに叔父達の手により、一族の若武者としてはずかしめを受けないだけの立派な武具や甲冑を揃えて貰い合戦に赴くところだ。
だがこの合戦、既に敵方の方が有利との情報もあり、武将なのにも関わらずお供の者たちもなく、一人敵陣へと馳せ参じなければならない。
その道中、桜の花の散るのを見て、ふと立ち止まり

今年も綺麗な桜の花が咲き誇っている。
だが、果たして我が身は来年もこの桜の花が見れるのであろうか。

と一人、物思いに耽る姿。
サムライとは、義のためならば、負けるとわかっていても戦いにのぞまなければならない。
その自らの宿命に従い、精一杯日々を生きていく姿。
画像は、少年画報大全発売時に、読者プレゼントとして8枚組限定500セット作成した絵葉書の一枚。
2001年の私の年賀状は、漫画史研究家としての初陣にあたり、決意表明を兼ねてこの絵を使った年賀状を15枚ほど送らせてもらった。ここ数年の年賀状は200枚前後に増えている。

春、桜の花が咲く季節になると、いつも部屋に飾っているこの絵を一人眺めている。
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