
1958年吉原治良を中心に若い美術家達で結成された前衛美術家集団の「具体」
の活動の軌跡をを振り返る展覧会。
吉原治良の死によりその18年という短い活動を終えてしまったが、その影響は
日本のアバンギャルドやモダンアートに強い影響を与え、単なる抽象の範疇を越え
アートとして今の商業美術を担う先駆にもなった。
今や日本は中高年の中でもアートは人気になり、地方都市でもモニュメントなどの形で
アートは受け入れられているが、その端緒の一端を担うのが「具体」グループや堂本尚郎
高松次郎、篠原有司男等の前衛美術家達であった。
彼らの活動は絵画にどどまらずパフォーマンスなどの幅広い領域に広まっていき、今
それらを見ても活力溢れる作品は現代に通じるものがある。
「具体」は大阪が中心だったため、関東で行う回顧展としては初めてだそうだが、
今回充実した展示内容だったので、ぜひ多くの人に見てもらいたい。
夏休み中でもあり、もっと子供たちにもこれらの作品に触れてもらえれば、新しい感覚が
また生まれてくるような気がして、隣のサントリー美術館で行われている「おもしろびじゅつ
ワンダーランド」展と連携するのもいいのになぁと思う。
国立新美術館としては、未だ方向性がさだまらないなか、今回や東京近代美術館の「ジャクソン・ポロック」展のような視点の展覧会を企画開催し、公募展ばかりでなく特徴や視点が20世紀現代美術の拠点のようになれればと思う。
これからも積極的によい展覧会を開催して欲しいと思う。
追記・その後、森美術館で「アラブ・エクスプレス」展をのぞいたのだが、
美術やアートはその国の時代と文化を反映していることは、展示内容から
よくわかる。
「具体」展のあとでは、一層平和の尊さが感じられるほど、アラブの地の
その色彩や明るさとは裏腹の重い内容だった。