「皆既食」 ~Total Eclipse~    シアターコクーン

2014年11月25日 | 演劇

いくつもの燭台にともる炎の中、一瞬の暗闇の中から現れた、ヴェルレーヌの落ちぶれた姿。
かつてのランボーを回想し暗転。

そうしてはじまった苦しくも美しいランボーと、ヴェルレーヌの物語。

抑えきれないランボーの才能を愛情とともに受け入れようとしながら、一方では妻とも離れられないヴェルレーヌ。
人間の欲望の醜さを体現するヴェルレーヌと、理想を追い求め、ヴェルレーヌに何度となく裏切られながらも
愛と憎しみのはざまを彷徨うランボーには悲しい結末が待っている。

岡田将生は、彼の透きとおるような美しさをもって、まさに、ランボーの情熱が乗り移ったかのようにランボーを演じ切っていた。
対する生瀬勝久のヴェルレーヌの卑屈で弱さと欲望丸出しの屈折した詩人は、醜い人間のありようを切り取り、名演だった。

蜷川さんが満を持して選んだだけあるキャストの妙が、一瞬の光のように駆け抜ける舞台を作り上げたと思う。


それにしても、あんな美しい繊細な言葉の数々をむすびながら、陰で、どれほどの欲望や苦しみが流れていたのだろう。
画家であれ、音楽家であれ、作家であれ、芸術家と呼ばれる人は皆、なにがしかの痛みを経験しなければ、美を創出できないのだろうか?


追記・岡田将生は、初舞台ながら、長いセリフもよどみなく、通る声とともに軽快な動きと表情、美しい立ち姿など、新たな舞台俳優の出現として、
これから楽しみな俳優です。

展覧会 あれこれ、ともいえず。

2014年11月18日 | 美術
あっという間に11がつも後半になってしまい、憂鬱が日に日に増大していく。

それをなんとかやり過ごしていくしかない。


9月   「再興第99回院展」 東京都美術館
        
10月  「菱田春草展」    東京国立近代美術館

できるだけ行けてもこれだけ。とほほ・・・
でもどちらも素晴らしい空間を享受できたことをうれしく思う。

この数か月間私は何をしているのだろう。