いくつもの燭台にともる炎の中、一瞬の暗闇の中から現れた、ヴェルレーヌの落ちぶれた姿。
かつてのランボーを回想し暗転。
そうしてはじまった苦しくも美しいランボーと、ヴェルレーヌの物語。
抑えきれないランボーの才能を愛情とともに受け入れようとしながら、一方では妻とも離れられないヴェルレーヌ。
人間の欲望の醜さを体現するヴェルレーヌと、理想を追い求め、ヴェルレーヌに何度となく裏切られながらも
愛と憎しみのはざまを彷徨うランボーには悲しい結末が待っている。
岡田将生は、彼の透きとおるような美しさをもって、まさに、ランボーの情熱が乗り移ったかのようにランボーを演じ切っていた。
対する生瀬勝久のヴェルレーヌの卑屈で弱さと欲望丸出しの屈折した詩人は、醜い人間のありようを切り取り、名演だった。
蜷川さんが満を持して選んだだけあるキャストの妙が、一瞬の光のように駆け抜ける舞台を作り上げたと思う。
それにしても、あんな美しい繊細な言葉の数々をむすびながら、陰で、どれほどの欲望や苦しみが流れていたのだろう。
画家であれ、音楽家であれ、作家であれ、芸術家と呼ばれる人は皆、なにがしかの痛みを経験しなければ、美を創出できないのだろうか?
追記・岡田将生は、初舞台ながら、長いセリフもよどみなく、通る声とともに軽快な動きと表情、美しい立ち姿など、新たな舞台俳優の出現として、
これから楽しみな俳優です。