『ブラザー・サン シスター・ムーン』は著者の自伝的小説だそうで、3部プラス予告編プラス特別対談「恩田陸、大学の先輩と語る」が収録されています。
第1部の「あいつと私」の主人公は作家になった楡崎彩音で、作家になるきっかけとなった出来事をいろいろと遠回りしながら振り返ります。ここで語られるきっかけは実話だそうです。
第2部「青い花」の主人公は楡崎彩音の高校時代の同期で、同じ大学に進学し、なんとなく付き合ってたっぽい戸崎衛。高校のころからベースをやっていて、大学のサークルでジャズバンドに入って活躍する話。ここに登場するサークルの先輩のモデルが特別対談のお相手の先輩だそうです。このストーリーにも作者の実体験が色濃く反映されているとか。
第3部「陽のあたる場所」の主人公は楡崎彩音と戸崎衛と同じ高校の同期で、やはり同じ大学に進学し、シネマ研究会でもっぱら「鑑賞班」に属していた箱崎一。彼は卒業後大手証券会社に就職したにもかかわらず、自分で映画を撮り始め、V映画祭のコンペティション部門での出品に招待されたために映画雑誌からインタビューを受けることになります。そのインタビューシーンと彼の回想が交互に語られます。
予告編「糾える縄のごとく」はこの3人が初めて出会い、一緒に行動した学校の課外授業での出来事が描かれています。
三人三様の人生で、繋がっているようで繋がっていない三人の回想録は、実話っぽいドラマの無さで面白いのか面白くないのかよく分からない小説です。読んでいて退屈ということはないですが、小説を読んでいる感じがしませんでした。
特別対談を読んで、この小説の位置づけが分かり、「へえ、そうだったんだ」と納得した次第です。