徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『ブラック・ベルベット』(双葉社)

2018年02月19日 | 書評ー小説:作者ア行

『ブラック・ベルベット』は神原恵弥シリーズ第3弾の作品。シリーズ続巻ということで気になって、単行本で買ってしまいました。電子書籍の割引クーポン使ったのでそれほど高くはありませんでしたけど。

今回の舞台は「T共和国」となっていますが、イスタンブールやアンカラやパムッカレが登場するのでトルコであることはバレバレです。そこをあえて「T共和国」とすることでフィクション性を高めているのかもしれませんが、奇妙な感じしかしません。

それはともかく、神原恵弥は幻の鎮痛剤D・Fの噂を聞いてT共和国に行くことになります。それを聞きつけた多田直樹(シリーズ第2弾で登場)が彼にT共和国にいるらしいとある生物博士の探索を「ついで」に依頼します。現地では道案内役として時枝満が雇われます。満はシリーズ第1弾で恵弥にイラク国境近くの荒野で雇われたことがあり、それ以来トルコに居ついてしまったという設定です。また恵弥の高校時代の同級生であり、元恋人でもある橘も仕事の関係でイスタンブールに滞在中とのことで、恵弥は彼もついでに探すつもりでしたが、向こうから恵弥に会いに来ます。

D・Fに関して『アンタレス』という人物が恵弥に接触することになっており、その人物の指定通りに薬品業界の「見本市」に行き、その後トルコ国内の観光地をぐるっと巡ることになっていたのですが、まずついでだった探索対象の博士はすぐに見つかり、接触しようとした矢先に公衆の面前で通り魔?に刺し殺されてしまいます。恵弥は多田に電話を掛けますが、彼は交通事故に会い意識不明の重体。また満からはパンデミックの話題が出たついでに、全身を黒い苔で覆われて死んだ人間がいるらしいことを聞きます。

こうしたたくさんのバラバラのピースが、どんどん不穏になっていく状況の中で少しずつ繋がっていき、例によって「先が気になって止められない」状態に陥りました。しかし「凄腕ウイルスハンター」としての活躍はこのエピソードでもあまり見られませんでしたね。どちらかというと振り回されて終わってしまった感じです。さんざんどんな陰謀があるのかとハラハラさせられたのに、結論を聞いてみれば、「なーんだ」と拍子抜けするような。当事者にとっては大変危険な状況だったのですが、恵弥は単に利用されて巻き込まれただけで、なんだか気の毒でしたね。

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