『私と踊って』は『図書館の海』、『朝日のようにさわやかに』に続く3番目の短編集です。短編というかショートショートばかりで、少なくとも私が知っているシリーズ作品に関連するものはありませんでした。
荒唐無稽な世界が展開したり、ブラックユーモアや風刺が効いていたり、SFっぽかったり、ファンタジー・怪奇めいていたり、方向性は色々です。中には訳の分からないものもありますが、おおむね読みやすく面白いと思いました。
表題作は女の友情というか絆の物語と見ることができ、なかなか味わい深いです。
あとがきの後に収録されている『東京の日記』は2010年の作品で、「あの震災」の後に行政戒厳下に置かれた東京での日々をリチャード・プローティガンの孫が日記に綴るというもので、ブローディガンの『東京日記』と内田百閒の『東京日記』が下敷きになっているそうです。ところどころ311以降の日本の状況を予知したような描写があり、作家の想像力に感心せざるを得ません。