『Maze(メイズ)』は荒野の丘の上に立つ長方形の白い建物が舞台。そこは原住民の間では古くから【存在しない場所】または【あり得ない場所】などと言われている禁忌の場所で、一つしかない入口から入ると中で消えてしまう人が居るとのことで、第1章はほぼその遺跡にまつわるエピソードのみに費やされています。章の終わりごろにようやく主人公の神原恵弥(かんばらめぐみ)が登場します。男性にしては線の細い優男ですが、女系家族の中で育ったためにお姉言葉を話す強烈なキャラです。非常に頭脳明晰で、アメリカの製薬会社に就職し、どうやらウイルスハンターのようなサンプルを集める仕事をしているらしいのですが、詳細は今一つ不明。その彼に7日間雑用として雇われた元同級生の満は、過去のデータからその遺跡で人間が消えるルールを見つけ出すという依頼を受けます。
満以外のメンバーは恵弥を含めて3人で、現地に資材を運び込む兵士たちの指揮をとっていることになっていますが、どういう任務なのかは機密ということで、遺跡そのものだけでなく、任務も謎めいていて、また嵐の夜に幽霊?が登場し、メンバーの一人が行方不明になり。。。とホラーサスペンスめいてきます。
どこに辿り着くのか気になってどんどん読めてしまいます。
『クレオパトラの夢』は神原恵弥シリーズ第2弾の作品で、不倫中の双子の妹を説得して東京に連れ戻すという名目で北海道のH市(明らかに函館市)に向かいます。ところが着いてみたら、妹の相手であった男性は既に亡くなっており、その日は葬儀が行われていました。恵弥にはウイルスハンターとしてH市と関係があるらしい「クレオパトラ」と呼ばれるものの正体を掴むという重大な目的があったのですが、いきなり何も知らないはずの妹から「クレオパトラって何?」と聞かれて驚愕することに。その後妹は「一人になりたい」と姿を消します。恵弥を取り巻く状況がどんどん不穏になっていき、妹ですら敵なのか味方なのか分からなくなってきます。彼の探している「クレオパトラ」とは果たして何なのか?
恵弥のお姉言葉とおばさんキャラの可笑しさとストーリーの深刻さが絶妙にミックスしていて、読者をぐいぐいと引っ張っていく筆致はさすがです。オチはちょっと拍子抜けする感じですが、まあそういうのもありかなと思えます。緻密なミステリーとは言い難いですが、エンタメ性は高いと思います。