徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:池井戸潤著、『かばん屋の相続』(文春文庫)

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

『かばん屋の相続』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに?表題作他五編収録。

感想

「かばん屋の相続」は関連性のない表題作他5編の短編が収録されています。そこそこ面白かったけど、短編なので物足りない。腹五分くらいなのにお皿を下げられ、デザートも取り上げられちゃった感じです。
ミステリーとしての純度が低く、かといって人間ドラマの展開、掘り下げは短編なので今一つになってしまっています。


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書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)




書評:池井戸潤著、『シャイロックの子供たち』(文春文庫)

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

『シャイロックの子供たち』も4年ほど前に読んだ作品ですが、当時のレビューを再発見したので、こちらに転載しておきます。

商品説明

ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績…事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。

感想

「シャイロックの子供たち」は東京第一銀行長原支店の行員たち各自を主人公にした短編集の体裁なのですが、実は一つの現金紛失事件を皮切りに不正、犯罪がそれぞれの視点から断片的に描き出されてて、その小さなパズルを集めていくと意外なところに辿り着く感じのミステリー。一編ごとに展開される人生ドラマ、家族との絆、あるいは崩壊した家庭と組織の論理に翻弄される普通の人たちの義憤、やるせなさ等がとても細やかに描写され、サラリーマンのための応援歌のようです。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

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書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品



書評:池井戸潤著、『架空通貨』(講談社文庫)~江戸川乱歩賞受賞作品

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

江戸川乱歩賞受賞作品『架空通貨』を読んだのはもう4年近く前になりますが、当時書いたレビューを見つけたのでこちらに転載します。

読後感はあまり良くないですね。破滅の群像みたいで。ストーリーはある女子校生の父の会社が破綻し、娘が何か打開策はないか試行錯誤する過程でクラスの副担任をしている社会の先生に相談することで始まります。この先生は実は元商社マンで、信用調査をしていたので、その当時のコネを生かして真相を確かめ、できれば彼女の父の会社を救おうと努力する、というのが主線。所有している社債を期限前に償還してもらおうと発行元の会社に交渉に行ったら、その会社は企業城下町の頂点をなす企業で、自社の資金調達のために社債以外にも振興券なるものを発行しており、それが地元で闇金として流通して地元経済を狂わせ始めていた、というのがサブ舞台。かなり読み応えあるけど、ハッピーにはなれない (・へ・)
しかし、文学としての完成度は非常に高いと思います。


書評:池井戸潤著、『七つの会議』(集英社文庫)

書評:池井戸潤著、『アキラとあきら』(徳間文庫)




書評:恩田陸著、『訪問者』(祥伝社文庫)

2018年02月17日 | 書評ー小説:作者ア行

『訪問者』はいかにもミステリー小説らしいストーリー展開です。

舞台は山中の洋館で、急死した映画監督・峠昌彦の親友で顧問弁護士である井上はカメラマンの長田と共に昌彦の遺言を果たすために訪れます。敷地内には湖があり、そこで三年前、昌彦を育てた実業家・朝霞千沙子が不審死を遂げたという。現在その洋館には旧家・朝霞家の人々が住んでいて、館には「訪問者に気をつけろ」という不気味な警告状が届いていました。死んだはずの「大おばちゃま」の姿を見たと主張する少女・愛華。夜に「娘が病気だ」と聞いて突然訪れた愛華の母親。そして嵐の中死体が発見されます。翌日にはもう一人新たな訪問者が来て、嵐で土砂崩れがあり、麓へ降りられないことを伝えます。復旧には2・3日かかるため、彼らは疑心暗鬼のままその洋館に閉じ込められることになります。千沙子が船から湖に落ちたのは事故だったのか、他殺だったのか。昌彦は自分の死を予感して遺言書を井上に預けていたが、本当に殺されたのか、見かけ通り単なる事故だったのか。そして嵐の夜に洋館の屋根から落ちた男は本当に足を滑らせただけだったのか。。。

あとがきによると、著者はきっちりとしたプロットを予め考えていたわけではなく、いわゆる「嵐の山荘」、「クローズド・サークル」、「記憶の中の殺人」、「各章の出だしは同じ文章だが、毎回先の読めない展開」などの目標を立てて、展開に悩み、自分でも先が読めなかったそうです(笑)
ならば読者が先を読めなくても当然ですね。読み進むほど疑問が増えていき、一体どこに辿り着くのか気になって、一気読みしていまいました。

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