京都逍遥

◇◆◇京都に暮らす大阪人、京都を歩く

フェルメール光の王国展

2015-08-29 20:16:17 | アート・文化
7/15~8/31の期間、祇園甲部歌舞練場内八坂倶楽部で、『フェルメール光の王国展』が開催されている。今週初めに朝日新聞に掲載された広告で知り、行ってみた。

フェルメールに興味が、と言うよりも、惹かれたのは、その広告にあった福岡伸一氏の寄稿内容。氏のフェルメール愛については、去年、日経新聞の連載で知った。そもそも、論理的で美しさも併せ持つ氏の文章が好きな私のこと、「これは行ってみなければ」という気にさせられた。

誤解のないように書いておく。これらは本物ではない。がレプリカでもなく「リ・クリエイト」されたものである。リ・クリエイトとは「最新のデジタル技術とプリンティング技術によって、描かれた当時の色彩と筆致をとりもどし、それを一堂に展示して彼の全生涯を再現する(朝日新聞8月24日朝刊 広告特集)」ことを指す。経年劣化や諸事情による退色は、絵画というものの宿命だ。絵画だけではなく、つくられたものはすべて古び、もとのままではない。金閣寺など建築物に対して我々は、金箔を張り替えたり、柱や壁を塗り替えたりして、かつての姿を取り戻そうとする。絵画には、絵画修復師という技術者が存在する。しかしこれは、修復するよりも安全かつ安価に元の姿に近づけようとする試みではないだろうか。 

八坂倶楽部は畳敷きで、天井に展覧会用のライトが多数。いくつかの作品は、天井高が低いためにライトが作品の一部に反射して、見づらい。一方、全作品に音声ガイドつきというのは親切。音声ガイドなしに、デルフト・タイルには気づかなかった。撮影しつつ(全作品撮影可能)、音声ガイドを聞きつつ鑑賞していたら、いつの間にか1時間半も経っていた。最後の展示室奥では、福岡伸一氏が出演する作品解説ビデオ映像が流れる。分かりやすく興味深かったが、個人的に時間切れで、全部は視聴することができなかった。

フェルメールは寡作なのに、知らない作品がなんと多いことか。その中で気になったのは、『取り持ち女』『兵士と笑う女』『デルフト眺望』『真珠の首飾りの少女』『ギターを弾く女』『ヴァージナルの前に座る若い女』。
最初期の『取り持ち女』、どの人物も表情豊かなことに驚かされる。スカーレット・ヨハンソンで映画にもなった『真珠の耳飾りの少女』のように、彼の作品の人物といえば、謎の表情をしているものだと思っていた。あるいは全く違うところを見ているか。
『兵士と笑う女』、光の量が多く、軽みがある。
『デルフト眺望』は近くで見るととてもいいのに、少し離れただけで、空の光と陰影が全く把握できない。眼が悪すぎるせい?
『真珠の首飾りの少女』、鏡に向かってネックレスをつけようとする、その一瞬が愛らしい。
『ギターを弾く女』、フェルメールの作品において、光はたいてい左の窓から入るが、これは右手前からだろうか。窓が描かれない作品はいくつかあるが、この作品の光は私にはわかりにくい。
『ヴァージナルの前に座る若い女』は最晩年の作で、『手紙を書く女』と似た構図、モデルも多分同じ。こちらに目をやる女性は、「手紙」のときよりいくらか年齢を重ねているように見える。

レンブラントの通称『夜警』が、実は昼の情景だったというほどには、フェルメールの作品の変色はひどくないかもしれない。が、確かにリ・クリエイトによって作品の光が再生されるのを目の当たりにした。福岡氏の仮説(同時代人、レーウェンフックとの関係)にも納得。
ただ残念なことに、音声ガイドで触れられた寓意や象徴について、私には知識が全くない。

プロテスタントの国オランダにおいては、教義上、宗教画ではなく寓意を含んだ静物画が発展したという。
りんごの虫食い穴が退廃を表し、仮面は不誠実、犬は忠実といった図像学さらには図像解釈学の知識を得て初めて、画家の意図することを理解したと言えるのかもしれない。なぜこの組み合わせ?と思うような不自然なものが描きこまれた絵なら、それを狙って描いたのだろう。しかし、画家の意図しない独りよがりな解釈に陥るおそれもある。
個人的には、その絵が好きかどうか、それだけでいいと思う。細かい解釈は、芸術にとって瑣末なことにすぎないと思う。……と考えが落ち着いたところで、前述の広告特集にある一文を思い出した。「フェルメールは、ただ世界をあるがままに記述しようとしている」。「世界を公平に写像」するフェルメールに、図像解釈の必要などないのではないだろうか。タイトルそのまま『信仰の寓意』と、画中画「最後の審判」の前で空の天秤を持つ妊婦を描いた『天秤を持つ女』を別として。

スマホアプリ「ジュナイオ」で、「絵画に潜むフェルメールのトリックを3D画像で(会場解説より)」見られる、という面白そうな企画もあった。アプリが見つからず、結局、それは楽しめなかったのだが。新聞広告に、そこまで載せてくれていれば。
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ログインできなかった

2015-08-15 23:19:08 | 日記
パソコンが突然壊れ、買い替えたらgooブログにログインできなくなってしまった。
ネットで検索した通りに対処しても、全然ダメ。
旧PCから新PCへのデータ引っ越しは、新機種を購入した店舗にお願いしたし、原因は私にはわからない。どうしようもないので、毎日何度かログインを試みていた。

昨日、思い立ってgooパスワードを新たに取得し直したら、この通り、ログイン可能に。ただ、gooブログ移行以前の「ブログ人」時代からニックネームでログインしていたのに、gooIDでしか入れない。
何がどうなっているのかわからないが、とにかくまた投稿できそうだ。そのうちに。時間ができたら。今の問題が片付いたら。
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細見美術館琳派のきらめき展

2015-03-22 00:50:17 | アート・文化
2015年3月11日~23日の期間、京都島屋グランドホールにて、琳派400年記念の展覧会が開催されている。副題に「 ―宗達・光琳・抱一・雪佳― 」とある通り、琳派と括られるものを時代毎に見せる展示で、流れを概観できるようになっている。

詳しいわけではないが、琳派は好きで、細見美術館には何度か足を運んでいる。『琳派を愉しむ―細見コレクションの名品を通して(淡交社)』も手元にある。

さて、今回は。会場が暗すぎる。もちろん、借り物だから照明を控えめにする必要もあるのだろうが、小さい字で書かれた解説文(タイトル、作者とも)が、読みにくい。休日に出かけたのもミスだったが、人が多くて、ゆっくり見ることができない。

しかし、暗くてかえって良かったこともある。先述の『琳派を愉しむ』に掲載されていて全く好きではなかった芳中の鹿。書籍では、鹿の目が黒々として怖いのだが、暗めの照明の中で見る「月に萩鹿図(中村芳中筆)」は、たらし込み技法を用いたふんわりと優しい描線が何ともいえない。

京都で開花した絢爛豪華な琳派よりも、静かで味わいのある江戸琳派の方が好みだ。本展では、酒井抱一の「紅梅図」。同じ梅でも、芳中(「白梅小禽図屏風」)とは違う、枝ぶり。芳中のも、味わいはあるのだが。

「秋草図団扇(成乙印)」を中央に置いた、すすきを描いた一幅も、忘れがたい。成乙は、光琳の弟子とのこと。前述の書籍では、団扇紙部分しか載っておらず、私の気に入ったすすきはない。団扇に貼られたものである証拠に、骨のあとがついているのが、書籍だとよく分かる。

描表装は「鯉に燕子花図(酒井唯一)」だけ出品されていた。この絵は全く好みではなかったが、描表装部分は面白い。細見美術館で見た(前述の書籍にも掲載されている)、鈴木其一「歳首の図」を思い出した。描表装のものを、もっと見てみたいものだ。


京都では、今年が琳派が創始されて400年の節目であることから、昨年より連続講演会や、企画展、パネルディスカッションと、行事が目白押し。本展の会場、京都島屋1階入口そばのオープンスペースには、琳派風ドレスを纏ったマネキンたちがいた。ARTISANは、琳派柄をいつも通りのすっきりしたデザインに落とし込んでいたが、桂由美は、華やか過ぎるように思えた。


OCNブログからgooブログへ引っ越しして、初めての投稿。
改めてページを確認すると、Amazon経由の書籍紹介部分がなくなっている。記事に関する書籍紹介だっただけに、残念だ。多分、以前の記事のレイアウトも崩れている。訂正する時間もなく。見苦しい場合、ご容赦を。
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詩仙堂2014

2014-06-03 17:41:56 | まち歩き

ここのところ暑い日が続いたので、サツキの開花が早まったかもしれない、と思い、行ってみた。

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週末から来週あたまにかけて見頃、見頃を過ぎてもぎりぎり来週末まで、といったところか。

20140603_114113_4_2サツキが終わっても、アジサイが続く。今にも咲きそうな様子。

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座禅堂の竹垣に絡むテッセンは、今年は少し遅咲き。

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藤棚裏手の池には、例年通り、モリアオガエルの卵が。やっぱり苦手、と思いながら撮影。

藤棚前で前回見つけたタンポポは抜かれていたが、周囲にはまだ花の咲いていないタンポポがいっぱい。蜘蛛の巣のはったサツキもあった。苔が美しくないのは雨が少ないせいだとしても、なんだかおかしい。先月も感じたが、お庭がいつもと違う。普通、なのだ。帰りがけに受付で尋ねると、よく見かける、お庭の手入れをされる方は「今、休んでいます」とのこと。納得。

詩仙堂を出て遠くに目をやると、近隣の家々や電柱の向こうに、一乗寺の町があった。白川通りから詩仙堂までは 約400m。距離はないが上り坂が続き、今日のような暑い日に、歩いて上るのはけっこうしんどい。

20140603_121653_3_2今まで考えたこともなかったが、詩仙堂斜向かいにある駐車場(500円/1時間)を利用してもいいかもしれない。

見たところ、6~10台程度は収容できそう。今日は平日だからか、2~3台しか停まっていなかった。

 

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詩仙堂

2014-05-20 15:59:20 | まち歩き

今年もサツキの季節が近づいてきた。「京都観光Navi」の「花だより」では、詩仙堂のサツキは5月15日現在「咲き始め」とのこと。今夜は雨の予報なので、降る前に行ってみた。

http://kanko.city.kyoto.lg.jp/

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座敷から見えるサツキも、写真集でよく見る階段周りのサツキの群生も、殆ど開花していない。

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池の向こう、陽当たりのいいところに植えられたサツキが、まさに咲き始め。

受付の方は「1週間から10日ぐらいで」とおっしゃっていたが、思うに、見頃は2週間ほど先になりそう。人が多すぎるとゆっくりと鑑賞できないし、見頃を外すと悔しいし、悩ましいところ。

この先の、古木に囲まれた石碑の近くには、実生の万両(多分)が、いくつもかわいらしい姿を見せていた。

027 藤棚の周りには、タンポポが散見され、驚いた。前は、なかった。ここは、自然を目指して作りこんだ庭。苔の間から茎を伸ばした何種類もの茶花は、そこにあるのがいかにも自然。だが、タンポポは。この綿毛はこの庭を少しずつ侵食するに違いない。

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