京都逍遥

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京の冬の旅――東本願寺諸殿,東本願寺宮御殿・桜下亭

2025-01-29 17:05:24 | まち歩き

1/10~3/18の期間、第59回京の冬の旅として寺院が所蔵する非公開文化財の特別公開が行われている。今回は、「世界遺産登録30周年」「洛陽三十三所観音霊場再興20周年」というサブタイトルもついている。京都総合観光案内所に置いてあったパンフレットの冒頭には、

「『古都京都の文化財』が世界遺産に登録されてから30周年を迎えるのを記念して、世界遺産寺院の通常非公開の文化財を特別公開。また再興20周年を迎える『洛陽三十三所観音霊場』の寺院にもスポットを当て、普段は見学できない庭園、仏像、襖絵、建築など様々な文化財が期間限定で特別公開されます」

とある。

世界遺産関連では9箇所、洛陽観音霊場関連では3箇所、そのほか3箇所で、全15箇所であるが、うち東本願寺のみ宮御殿・桜下亭と、予約の必要な諸殿(宮御殿・桜下亭含む)とで2箇所と数えている。予約はWEBのみで当日15分前締切とあるが、期間中の金・土のみ、各日2回であることから、早めに予約しておかないと入場は難しい。

ほかに予約が必要なのは、西本願寺書院・経蔵である。同じく予約はWEBのみだが、こちらは1/20~3/4(1/27~31、2/2・15・16を除く)の期間で、各日1回(2/1・8、3/1のみ2回)とある。

完全予約制の2箇所については「僧侶がご案内する特別拝観」であり、大方が拝観料800円であるのに対し、2200円、3000円となっている。ほかにWEB予約優先制の寺院が2箇所あり、慈照寺本堂・弄清亭、天龍寺祥雲閣・甘雨亭が1300円(拝観料含む)である。また、寺院によっては料金や公開時期、休止日などもあり、パンフレットの注意書きを読み落とさないよう気をつけなければならない。

さて、ここからがようやく東本願寺である。

最初に阿弥陀堂から解説が始まる。前述のパンフレットには「靴下等をご着用ください」と注意書きがあるが、実際のところ、靴下2枚履きにするのが適当だろう。寒すぎた。阿弥陀堂ではタイミングの悪いことに、障子が閉まっていて中が見えない時間帯。なお、特別拝観後の時間帯には、開扉されていた。

続いて、御影堂(ごえいどう)の解説。

次に宮御殿へ。障壁画を見せていただく。

部屋の外から障壁画を眺めていたところ、立入禁止の札を避けて、中に入れてくださった。

 

襖絵には、修復のあともみえる。このようなやわらかい絵柄の障壁画は珍しく、興味深かった。

 

 

桜下亭(撮影不可)は、松・竹・梅の襖絵のある三部屋と茶室から成る。襖絵はいい絵だなと思ったら、円山応挙の画なのだという。宮御殿の襖ほど近くに寄ることはできないが、部屋に入って見ることはできた。釘隠しは楓柄。東京から移築されたという茶室は、天井が低く薄暗い。「桜下亭」の額の隷書体の文字は、とても良い字だった。

続いて、大寝殿へ。

大寝殿の南側には菊門。

大寝殿と菊門の間の地面に、謎の形状のものが。このあと、これが何なのか判明する。

新しい建物、パネル展示のあるギャラリーを通って能舞台を庭越しに眺め、大寝殿で特別拝観は終了。予約制である割には、ツアーの人数が多すぎると感じた。イヤホンもあって解説は聞けるのだが。

解散後にギャラリーから地下に続く階段へ。

☆早川鉄兵氏による作品

見応えのある大作で、帰宅後に検索。金沢出身で滋賀にお住まいの切絵作家さんらしい。ほかの作品もいくつかネットで見ることができ、繊細さと迫力が同居する面白い作品だった。

☆地下の視聴覚ホール

左に見える視聴覚ホール(扉は閉まっていたので、内側は見ることができなかった)が、さきの謎の答えだった。この地下の空間は、あの高松伸氏による設計らしい。地下に巨大な空間があることに大きな驚きを覚えた。大窓のドライエリアで、地下ではあっても圧迫感は感じない。

ギャラリー入口には「彫刻ガイドマップ」が置かれていた。これを最初に見たかった。次に行くときには、持って行こう。

 

最後に、御影堂の額について。

解説にはなかったが、明治天皇による勅額である「見真」額について検索すると、さまざま問題があることがわかった。「見真(けんしん)」は、漢訳『無量寿経』から採られたようだ。

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肉眼清徹、靡不分了。天眼通達、無量無限。法眼観察、究竟諸道。慧眼見真、能度彼岸。仏眼具足、覚了法性。以無礙智、為人演説。          ⦅上段:漢文》

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

肉眼(にくげん)、清徹(しょうてつ)して、分了(ふんりょう)ならざるなし、天眼(てんげん)、通達(つうだつ)して、無量無限なり。法眼(ほうげん)、観察して、諸道を究竟(くきょう)す。慧眼(えげん)、真を見て、よく彼岸に度(いた)る。仏眼(ぶつげん)、具足(ぐそく)して、法性(ほうしょう)を覚了(かくりょう)す。無礙(むげ)の智をもって、人のために[法を]演説す。      ⦅下段:書き下し文⦆

 

 以上、『浄土三部経(上)』ワイド版岩波文庫 無量寿経(漢文書き下し)

   仏の説きたまいし無量寿経、巻の下 [四、浄土に往生せし者の得益]

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

かれらは肉眼でよく見分け、超人的な透視力(天眼)を引き起こし、智慧の眼で道理を理解し、法の眼によって彼岸に達し、目覚めた人(=仏)の眼を達成し、[理法を]示し、明し、詳しく開示して、とらわれのない智慧を引き起こすのだ。

   『浄土三部経(上)』ワイド版岩波文庫 無量寿経(梵文和訳)

     38

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見真は明治天皇が親鸞聖人に与えた諡号だが、1981年には当該宗教法人において「見真大師」の名称を使用しないことが決まっている(*大谷派「見真額」下ろさず – 宗教情報リサーチセンター)。これ以上、深入りしないでおく。

 

1/30追記:講談社学術文庫『本願寺』井上鋭夫著の第5章も参考になる。

 

 

 


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