異文化異聞記

異文化に絡んだつれづれをつづる記録。

学校の怪談

2009-04-08 20:36:47 | Weblog
寮生の多くは、市内の国立大学に通っている。この大学、キャンパスが市内数箇所に点在している。特に理学部は山沿いにあり、渓谷が見える橋を渡って山に挟まれた道を登らなければならない。町から車でたったの20分だが、緑に囲まれた山に至り、キャンパスに近づくと急に景色が開ける。

山に挟まれた道を出て橋を越した辺りは事故が多く、花や缶ジュースが飾られているのをたびたび目にする。昔寮に住んでいたバングラの薬学系D3女子と話す機会がありその話題を持ち出した。薬学部は理学部の先にあるので、彼女は同じ道を毎日車で通っている。

「あそこの橋のたもと、いつも花が飾ってあるけど事故が多いらしいよね。もしかして霊とか。」
この手の話には科学を志す者はぜーッたい乗ってこない。
で、私は彼らの怜悧な姿勢が好きで反応を見たいがゆえに霊を持ち出す。

「ふふ、ないですよ。急に橋のところでVisionが良くなるからスピードだしやすいです。おまけに橋の先は工学部の坂とも合流するし。互いにスピードを錯覚しやすいと思う。」
「でも怪談とかないのー?」しつこく引っ張ってみる。
「かいだん?Stairs?」
「Ghost Story]
「あはは、Ghostいません。でも、同じ研究室で3年前とてもOddなことがありました。」
「何それ?」
「修士論文の審査が終わり、卒業が決まったあとの話です。ある日本人の学生が先生と約束した時間にこなかった。真面目な学生だったから、近くに住んでいる別の学生が帰りに立ち寄ってみたんです。先生に頼まれて。」
「そしたら?」
「ドアは鍵がかかってなくて、テレビが点いたままで、流しには食事を終えたあとの食器が置いてあって。」
「で?」
「その子はコタツにパジャマを着て座っていて、そして息していなかった。」

卒業が決まりほっとして、いつものようにテレビを点けてコタツで食事をし、パジャマに着替えてコタツで暖をとっているうち、うたた寝してしまったのだろう。ただ目覚めることはなかった。

「そして、そのあとは?」
「それだけです。」

様子を見に行った学生が研究室に連絡をとり、研究室は教務課に教務課は両親に各々連絡をとり...しかし、それはもう別の話。彼の時間は終わっていて二度と元に戻らない。M2の大人にはなりきっていない若さを思い起こすと、その不条理さに背筋が寒くなった。




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