いつでも、誰でも、どの医療機関でも、同じ値段で必要な医療サービスを受けられることを建前とする日本の医療制度。普段は(当たり前すぎて)あまり有難いとも感じませんが、こうした制度を有する国は世界の中でもそんなに多くはありません。
おさらいをすれば、日本の医療制度は、①国民全員に公的医療保険への加入を義務付ける「国民皆保険」、②誰もが保険証1枚さえあれば医療機関を自由に選ぶことができる「フリーアクセス」、そして③窓口負担だけで診療や薬の給付などの必要な医療サービスを平等に受けることができる「現物支給」…の3点に特徴づけられるとされています。
中でも、患者が望めば、病院でも診療所でも自由に受診医療機関を選べるフリーアクセスを採用している国は案外少なく、多くの先進国では、医療機関受診に関してかなり厳重なアクセス制限をかけている例が多いようです。
患者が自由に自分の信ずる医療機関を選べるフリーアクセスは、患者にとってはありがたい制度のように感じますが、総合的に見れば良いことばかりではないのも事実です。
例えば、多くの人が「軽症」であるにもかかわらず大病院を受診したり、軽い病気で救急車を利用したりすれば、結果として医療従事者の疲弊を招くリスクが高まります。また、(需給の偏りによって)限られた医療資源の利用に無駄やロスが増え、それが医療費の高騰につながっているという指摘もしばしばなされているところです。
しかし、そうはいっても現在の日本の制度が「そういうもの」になっている以上、これを上手く使わない手はありません。人は誰でも(同じお金を払うなら)より良いサービスを受けたいもの。少しでもいいお医者さんを選びたいと考えるのは、(市場原理から見ても)当然のことと言えるでしょう。
それでは、件の「いいお医者さん」はどのように選んだらよいのか。なかなか素人には判断し難いこの問いに関し、作家で精神科医の和田秀樹氏が4月19日の「PRESIDENT ONLINE」に、『これの有無で「いい医者か」がわかる…医院の待合室で真っ先に確認すべき"備品の種類"』と題する一文を寄せているので、参考までにそのポイントを残しておきたいと思います。
「かかりつけ医」を選ぶときに、注意したい点の第一。当たり前のことだが、まずは「通いやすい医院」を選ぶことだと氏はこの論考に記しています。
通院にかかる時間もそうだが、待ち時間や駐車場の様子も重要な要素となる。「評判がいいから」「知人にすすめられたから」といっても、診療を受けるまでに時間がかかる医院は、避けたほうが賢明だというのが氏の最初のアドバイスです。
そして、さほど苦労をせずに通えそうな医院に目星をつけたら、足を運ぶ前に、まずは電話を一本かけてみること。質問内容は「駐車場の様子」や「何時頃、すいているか」などの無難なものでいいと氏は言います。
もしも、そんな(簡単な)質問に対して医院側の対応がぞんざいであれば、それはやる気がないか、人手不足で電話をとるのも大変という状態だということ。いずれにしても、避けたほうが賢明だというのが氏の意見です。
次に、医院に着いたらまず確認してもらいたいことがある。それは、待合室に空気清浄機や加湿器があるかどうかだと氏は話しています。
それらは、院内感染を防ぐための必需品。見当たらないようなら、感覚が古く、配慮の足らない医院とみてかまわない。清潔で整理整頓が行き届いているか、働いている人がハツラツとしているかなどと併せて観察してみてもらいたいということです。
次に、肝心の医師について。診察室に入ったら、患者側からも医者をよく「診察」しようと和田氏は提案しています。
そこでの一番のポイントは、患者の話をよく聞くかどうか、治療方針や薬についてきちんと説明するかどうかという部分。とりわけ、高齢者に対しては、(多少心得のある臨床医なら)「過去の病歴」を詳しく聞くはずだということです。
そして、それ以上に大切なのが、待合室の患者さんたちの様子だと氏は言います。
診療を待つ患者さんたちが元気であれば、患者に合わせ適量の薬を出す医者で、そうでなければ薬を出しすぎる医者だと考えられる。これらのことは「歯科医」を選ぶ場合も同様で、歯科医の場合は、「保険治療と自費治療」について詳しく説明をしてくれるかどうかもについても評価のポイントになるというのが氏の見解です。
患者と話しをする際もパソコンのディスプレイから目を離さず、症状に対処するための薬を出せば自分の仕事はそれで終わり。きちんと服用しているかどうかなどには興味のない医師も多いと聞きます。
患者の症状だけでなく、既往や日常の食事や暮らしぶりにも関心を示し、個人の状態を意識したうえで生活のアドバイスに乗ってくれること。素人にはなかなか難しい部分はありますが、それでも(良い医者を見極める)ポイントはいくつかあるのだなと、氏の論考を読んで私も改めて感じたところです。
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