みりんの徒然声

日々、感じたことを日記や詩でお届けします

みりんの徒然声 夢と理解してしまった

2016-12-05 21:42:52 | 日記
出掛けるために野良猫のようにソロソロと足音を忍ばせて玄関のドアに手をかける。その瞬間首根っこを捕まれて天井を仰ぐ。首根っこ捕まれるなんて本当に猫かいな、と思いつつ猫は愛情で子猫の首根っこを噛むのだと気が付く。どうやら大きく開いたパーカーの襟足から母親の忌み嫌う羽のタトゥーが見えていたようだ。悲しくはない。正直殴られようが蹴られようが平気なのだ。むしろ暴力は分かりやすくていい。言葉よりもっと的確に感情を伝える。肉体の痛みなどじっとしていればいつか癒える。爪を全部剥がそうが髪の毛をむしり落とそうが対して痛くはない。そういえばタトゥーを彫るときは麻酔なしなのだ。ガリガリと骨まで響くような機械の針が皮膚を裂き、その傷跡に色を流し入れる。定着してかさぶたが剥がれるまでワセリンを塗り込む。我慢できなくはないが痛くないと言えば嘘になる。友人はベッドにしがみついて苦痛の表情を浮かべていたっけ。今はその友人も疎遠だけど。やっぱり厄介なのは心の傷だ。目には見えないが見える傷より何倍も痛く、癒えることを知らない。分かりやすい暴力はあたしをもう傷つけることは出来ない。見えない傷があたしに致命傷を追わせる。昨日あの人が夢に出た。どんな姿でもいいから会いたいと願い続けていたが、彼は幽霊だった。白い着物を着ていたからお気に入りの洋服を探していた。嬉しいと思うかな?と思ったのに、ああこれは夢なんだな、と冷静に理解した。第一死人が白い着物を着るなどこのご時世あり得ない。本の読みすぎだ。理解した瞬間目は覚めた。心臓だけバクバクいっていて、うるさくて薬に逃げた。以前なら夢とは認識せず幻覚みたいな感じで見えただろう。彼の存在をもっと触感として感じられただろう。少し心の傷が癒えた証拠か?あたしはもう忘れてよいのか?と思ったら急にズキズキ胸が傷んで息が苦しくなった。心の傷はやっぱり奥深いし得体が知れない。かさぶたになったと思った傷が突然血を流したりする。捕まれた首根っこの感触を忘れる為に腫れた指先をまたガシガシ噛んだ。ほら、やっぱり見える傷は痛まない。1人になれたらちゃんと心を強くしよう。塗れる薬はないし、巻ける包帯もないけれどせめて優しい痛みに変わるまで。