風がヴギウギ

自由気ままな風の様に毎日を切り取っていく

親父の自作本・・・青春の詩<耳鳴り>1

2020年11月04日 | 自作本

<即興 「林檎」>

星屑の煌めく 静かなる夜に

わがもとに届きし小包一つ

故郷の父母の

愛情の溢るる品ぞ

開きゆけば

信濃の香の匂ひ来て

わが喜びの手に

青玉の輝きを秘め

林檎の実 転がり出でぬ

その艶やかな肌(はだえ)は

清らけき思ひを秘めつ

我が掌にありぬ

一口かじりつけば

甘酸っぱき味 口にひろがりて

うまし

この香ぞ この思ひぞ

若き日の美しき涙ぞ

香しく ひそひそと

匂ひて来たる

1944年8月16日

 

耳鳴りは 1943.1944年大学時代の日記にある即興詩である

「灯」「鈍色の空」だけで1987年に纏め たった一冊だけの私家本を作ったが

それから12年経って詩集から除いてあった

数編の即興詩的なものを別に纏めてある

フロッピ-に気付いた

それだけでは20項程のもので一冊に纏めるには不足の感じがあり

是も作品の仲間に入れて製本することにした

只 全てをやり直すのは手間なので

付録の様な扱いとして付け加えることにした

全て大学時代の手帳に日記のようなつもりで書いてあるものだ

1999年5月5月 ひでジイ

親父が亡くなる3年前に完成した

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親父の自作本・・・青春の詩<鈍色の虹>5

2020年11月03日 | 自作本

<かなしい夜>

時雨れる夜は

部屋の中にも

鈍色の虹が揺れている

汚れたガラス窓にふれては

消えてゆく低い囁きにこがれて

くるほしく

定まらぬ心に沈む

翳り(かげり)の色彩(いろ)を織り出そうとするのだが・・・

切れやすい縦糸に

織りまぜる横糸の

かぼそい糸目が見出せないので

ペンを捨ててしまう

時雨れる夜の

音のないリズムが湿った畳の上を匍(は)いまわる

1949年10月23日

 

鈍色⇒染め色の名。濃いねずみ色。昔、喪服に用いた。鈍(にび)。にぶいろ

鈍色の虹とは 灰色をベースにした7色の虹なのか?

10月 時雨となれば 場面的には 薄暗い空と部屋の中・・・

昔の裸電球をの白い傘は 

時として屈折の関係で虹が出ていたような・・・

やっぱり 昔の家は 情緒があった

 

今日は鈍色の空・・・

 

 

 

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親父の自作本・・・青春の詩<鈍色の虹>4

2020年11月02日 | 自作本

<秋の蝶>

枯葉の匂いのする

この午後の庭先に来て

おまえは まだ

天女の様に舞わうとするのだが

色の疲れた舞衣が

がらんどうの舞台(ステ-ジ)に描き出すのは

糸の切れた凧の様に

せつないリズム

そして

唄を忘れた花たちは

庭隅に肩を寄せてふるえながら

黄色い歯をむき出しては

ひからびた声でわめくので

おまえは戸惑って

明るい垣を越してしまう

1949年10月23日

 

※蝶と花をこんな感じで見ることもできる

丁度 今頃に書いた詩

蝶の夏のように 太陽に下を悠々とヒラヒラと舞っているのではなく

どこか 弱弱しく

先日の蝶の様に 地面で休んでじっと動かなかったり

花の乾いた実や葉がかすれて

カサカサ 音がする

蝶は  ヒラヒラと 空気の流れを掴みながら

飛んでいます

 

 

 

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親父の自作本・・・青春の詩<鈍色の虹>3

2020年11月01日 | 自作本

<朝>

遠のいて捕らえられない

はかないものに呼ばれて

ひそやかな重さの中に眼を開く

よどんだ山肌から

白いヴェ-ルが剥ぎとられないままに

光たちは

低い軒先に来て

匂いの雨を降らせる

そして

ころがり落ちる

しづくの一つは

ほろにがく

思い出の様に

乾いた私の唇を濡らす

今日も亦(また) 何が始まろうとしている

1949年10月10日

 

青春の詩<灯>6にある 「孤独について」と基本は同じ素材なのかもしれない

雪であれば 粉雪か?

亦⇒1.また。…もまた。 2.わき。わきのした。

何故?わき等と読むのかと調べると

大(人が直立した形)の両わきに点をつけて腋(わき)の下の意を表すそうです

漢字は難しい 成り立ちを知るのも楽しいものです 

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親父の自作本・・・青春の詩<鈍色の虹>2

2020年10月31日 | 自作本

<白菊>

大きな石の陰でも

白菊は

はにかんでゐる少女のようだ

光が千切っては落す

赤茶気たわくら葉の音誘われて

そっとほほゑんではみたが

ちいさな足音にもおびえて

たちすくんでいる

孤独の甘さをかきみだす者を

とがめるかのように

かすかに首を振っている

1949年10月22日

 

作成期日からすれば 秋の詩(うた)なのかと思いますが

1.菊自体は 10月下旬~11月頃が見ごろとなりますが

6~7月に咲くものを「夏菊」12~1月に咲くものを「寒菊」言うそうです

2.文中<赤茶気たわくら葉の音誘われて>

あかちゃけた わくら葉の音に誘われ

わくら葉⇒ 病葉

病気や虫のために変色した葉で

夏の青葉の中にまじって、赤や黄色に色づいている葉

「病葉」は江戸時代に夏の季語

作成時期は記載から 10月・・・秋

親父が俳句をやっていたことから考えると

夏の青葉の中にある赤茶色の葉の説明が多く

菊は「夏菊」の事

「病葉」が夏の季語という事から考えると

夏の情景を思い作った詩なのでしょう

 

※蛇足ですが NSPの歌に「温度計の憂鬱」という歌があって

歌詞の中に 「病葉」が出てきますが

この歌自体は 確か冬の歌でした

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