<即興 「林檎」>
星屑の煌めく 静かなる夜に
わがもとに届きし小包一つ
故郷の父母の
愛情の溢るる品ぞ
開きゆけば
信濃の香の匂ひ来て
わが喜びの手に
青玉の輝きを秘め
林檎の実 転がり出でぬ
その艶やかな肌(はだえ)は
清らけき思ひを秘めつ
我が掌にありぬ
一口かじりつけば
甘酸っぱき味 口にひろがりて
うまし
この香ぞ この思ひぞ
若き日の美しき涙ぞ
香しく ひそひそと
匂ひて来たる
1944年8月16日
耳鳴りは 1943.1944年大学時代の日記にある即興詩である
「灯」「鈍色の空」だけで1987年に纏め たった一冊だけの私家本を作ったが
それから12年経って詩集から除いてあった
数編の即興詩的なものを別に纏めてある
フロッピ-に気付いた
それだけでは20項程のもので一冊に纏めるには不足の感じがあり
是も作品の仲間に入れて製本することにした
只 全てをやり直すのは手間なので
付録の様な扱いとして付け加えることにした
全て大学時代の手帳に日記のようなつもりで書いてあるものだ
1999年5月5月 ひでジイ
親父が亡くなる3年前に完成した