【90億円】1/30の朝刊でiPS細胞の研究費が倍増されることを知った。それでたった90億円! あーきーれーた。
1978年、アメリカNIH,NCIが「悪性リンパ腫の国際分類」を制定するプロジェクトを始めた。
世界中から「未治療の非ホジキン・リンパ腫症例にプロトコル研究を行い、5年以上の経過が追える患者1200例」を集め、12人の国際的病理学者に病理診断させ、その結果を治療・予後データと対比して、科学的に妥当性のある新しい病理分類をつくる」というのがプロジェクトの目的だった。
施設エントリーの条件は、「年間40例以上の未治療非ホジキン・リンパ腫患者を受け入れた実績がある」というものだった。日本には基準を満足する施設がなかった。米国3施設にイタリア1施設が選ばれ、病理学者がその施設を訪問して、病理標本を診断しなおした。
病理学者、臨床家、生物統計学者が一堂に会して、解析データをもとに何度も討議した。成果は「WF分類」として1982年に公表されたが、このプロジェクトに支出された金額が100万ドル。81年の為替レート(226円)でいうと約2.3億円である。
結果論になるが、この分類は10年あまりしかもたなかった。WHO分類が登場したからだ。
あれから30年も経って、イノヴェーションの規模でいうと悪性リンパ腫の新分類とは比較にならない、iPS細胞の年間研究費がたった90億円とは。
理論的にはiPS細胞よりもES細胞のほうがすぐれていることは前に述べた。体細胞をリセットするより、もともと初期状態にある胎児細胞に由来するES細胞のほうが、利用に際して内在する問題が少ない。
私が大学院生の時に書いたノートに、「死刑女囚の卵巣を摘出して、卵子を液体窒素に保管し、臓器が必要になるとその患者の精子で受精させて、臓器をつくり、患者に移植する」というのがある。ES細胞はほぼこれと同じ原理で作動する。
キリスト教原理主義者の倫理的反対で、ES細胞研究が禁止された時期があった。しかしその株は冷凍保存されていて、アメリカだけで100株以上ある。いま、世界中で研究が再開され、ES細胞の臨床応用研究が始まった。
まるで原爆開発において、ドイツとアメリカと日本が競争したような関係だ。
「マンハッタン計画」に米国は20億ドルを投入した。1941年の為替レート(4.27円)なら85億4000万円だ。同年の日本の国家予算(81.3億円)よりも多い。
原爆開発は簡単で、ウラン鉱石を粉砕して、1)化学反応によりウラン元素だけを抽出する、2)ウランの15種の同位体のうち中性子により核分裂を起こすU235だけを遠心分離法により取り出す、というのがミソである。
1台の遠心分離による抽出量はたかが知れている。遠心分離器を同時に何千台も動かし、1台では微量にしか得られないものを短時間に大量にえる。「大量生産の原理」で工場が動かせたのはアメリカだけだった。
だから実戦用原爆が製造できたのである。
IPS細胞でイノベーションを起こし、日本社会に活力を産み出そうとするのなら、米原爆開発の手法に学ぶべきだろう。それがたった90億円。聞いてあきれる。
1978年、アメリカNIH,NCIが「悪性リンパ腫の国際分類」を制定するプロジェクトを始めた。
世界中から「未治療の非ホジキン・リンパ腫症例にプロトコル研究を行い、5年以上の経過が追える患者1200例」を集め、12人の国際的病理学者に病理診断させ、その結果を治療・予後データと対比して、科学的に妥当性のある新しい病理分類をつくる」というのがプロジェクトの目的だった。
施設エントリーの条件は、「年間40例以上の未治療非ホジキン・リンパ腫患者を受け入れた実績がある」というものだった。日本には基準を満足する施設がなかった。米国3施設にイタリア1施設が選ばれ、病理学者がその施設を訪問して、病理標本を診断しなおした。
病理学者、臨床家、生物統計学者が一堂に会して、解析データをもとに何度も討議した。成果は「WF分類」として1982年に公表されたが、このプロジェクトに支出された金額が100万ドル。81年の為替レート(226円)でいうと約2.3億円である。
結果論になるが、この分類は10年あまりしかもたなかった。WHO分類が登場したからだ。
あれから30年も経って、イノヴェーションの規模でいうと悪性リンパ腫の新分類とは比較にならない、iPS細胞の年間研究費がたった90億円とは。
理論的にはiPS細胞よりもES細胞のほうがすぐれていることは前に述べた。体細胞をリセットするより、もともと初期状態にある胎児細胞に由来するES細胞のほうが、利用に際して内在する問題が少ない。
私が大学院生の時に書いたノートに、「死刑女囚の卵巣を摘出して、卵子を液体窒素に保管し、臓器が必要になるとその患者の精子で受精させて、臓器をつくり、患者に移植する」というのがある。ES細胞はほぼこれと同じ原理で作動する。
キリスト教原理主義者の倫理的反対で、ES細胞研究が禁止された時期があった。しかしその株は冷凍保存されていて、アメリカだけで100株以上ある。いま、世界中で研究が再開され、ES細胞の臨床応用研究が始まった。
まるで原爆開発において、ドイツとアメリカと日本が競争したような関係だ。
「マンハッタン計画」に米国は20億ドルを投入した。1941年の為替レート(4.27円)なら85億4000万円だ。同年の日本の国家予算(81.3億円)よりも多い。
原爆開発は簡単で、ウラン鉱石を粉砕して、1)化学反応によりウラン元素だけを抽出する、2)ウランの15種の同位体のうち中性子により核分裂を起こすU235だけを遠心分離法により取り出す、というのがミソである。
1台の遠心分離による抽出量はたかが知れている。遠心分離器を同時に何千台も動かし、1台では微量にしか得られないものを短時間に大量にえる。「大量生産の原理」で工場が動かせたのはアメリカだけだった。
だから実戦用原爆が製造できたのである。
IPS細胞でイノベーションを起こし、日本社会に活力を産み出そうとするのなら、米原爆開発の手法に学ぶべきだろう。それがたった90億円。聞いてあきれる。
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