【除菌の保険適用】この2月から胃ピロリ菌の除菌が保険適用になった。これまでは胃炎、胃潰瘍などのない患者の除菌は自費になっていたのだそうだ。「日経メディカル」がこう報じている。
<尿素呼気試験などピロリの感染診断自体は、内視鏡がなくても行える。だが、国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県市川市)院長の上村直実氏は、「日本人は胃癌の罹患率が高いため、除菌前に内視鏡で胃癌がないことを確認しておくことが重要だ」と話す。内視鏡検査という“ハードル”を設けることで、胃癌の有無を確実にチェックし、安易に除菌治療が行われることを防ぐ狙いもある。
ただし通知には、「健康診断として内視鏡検査を行った場合には、(除菌治療時の)診療報酬明細書の摘要欄にその旨を記載すること」とも明記されている。つまり、内視鏡検査を行っていない医療機関でも、患者が健診時の内視鏡写真を持参すれば、それを踏まえて除菌治療が行えるわけだ。>
(この上村氏は1979年広島大医卒で、呉共済病院内科でピロリ菌と早期胃がんに関するよい研究をした後、国立癌センターに移籍した。しかし、以後は見るべき業績がない。)
pH2.0という強度酸性の胃酸の海に泳いでいるピロリ菌は、アンモニアを分泌して胃酸を中和し、自分の周りにアクアラングを作っている。(これが生物学でいう「延長された表現型」である。)このアンモニアが血中に吸収されて肺から出て来るから、ピロリ菌感染者の息には尿素が多くなる。これを測定すればピロリ菌感染が証明できる。これが「尿素呼気試験」である。
オーストラリア・パースの病院で、病理医のJ.ロビン・ウォーレン(J. Robin Warren)が、無菌とされていた胃の粘膜に妙な桿菌を顕微鏡下に見つけたのは、1972年である。彼の研究を内科研修医のバリー J. マーシャル(Barry J. Marshall)が手伝い、菌の培養に成功し、自分で菌を呑みこんで急性胃炎が起こることを証明したのが1984年。すぐに英医学誌「ランセット」に論文が掲載された。以後、広く追試により慢性胃炎、胃潰瘍、胃MALTOMA、胃がんの基礎要因であることが確認され、ピロリ菌と命名された。二人は2005年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
ピロリ菌を除菌すれば、慢性胃炎が治るし、胃潰瘍も治る。胃のMATOMAという悪性リンパ腫も治癒または縮小する。早期胃がんはそれ以上発展しない。胃がんにならない。これらはとっくに証明された事実なのに、日本の癌学会は国立癌センターが牛耳り、なかでも「お焦げ発現因子」説で文化勲章をもらったSや、喫煙で胃がんになるとまで主張した疫学者のHの影響がつよく、マーシャルとウォーレンの研究をノーベル賞受賞後も本気で認めようとしない。「胃がん研究は日本が世界一」とさんざん吹聴してきた手前、嫉妬があるのである。
もともとがんセンターは東大系と慶應大系の派閥が内部で喧嘩していて、他の大学は要職から排除されていた。彼らはピロリ学説に反対する点では共闘した。既得権益を守るためだ。
ピロリ菌についての一般解説書は、すべて非東大、非慶応大系の学者によるものだ。
1)緒方卓郎:「ヘリコバクター・ピロリ菌:胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎の元凶!」, 講談社ブルーバックス, 1997 (岡山大医, 1959卒)
2)伊藤慎芳:「ピロリ菌:日本人6千万人の体に棲む胃癌の元凶」, 祥伝社新書, 2006(1954生まれ、東北大医卒)
3)朝香正博:「胃の病気とピロリ菌」, 中公新書, 2010 (北大医, 1972卒)
高久史麿先生(東大内科)が「日本医学会総会」会頭の時(1999)に「医の現在」(岩波新書)が彼の編で出ている。当時の日本の医学・医療の状況を国民に知らせようとしたものだ。「がん」については「人はなぜがんになるのか」という章を東大医卒の黒木登志夫が書いているが、がん遺伝子の話が中心で、ピロリ菌のことは一切無視している。6年後にノーベル賞を受ける研究を知らないのか。視野狭窄もひどいものだ。
学者の嫉妬は思わぬ被害を生む。
それは患者の被害だ。修復腎移植では何十万人ものCKD(慢性腎不全)患者が、腎移植を受ける機会を奪われている。ピロリ菌では除菌の保険適用が遅れたため、何千万の慢性胃炎、逆流性食道炎の患者が胃痛に悩まされてきた。手遅れの胃がんや胃リンパ腫にかかった人もいる。
保険適用が認められたのは進歩だが、いざそうなると業界団体(断じて学会ではない)である「内視鏡学会」が、「内視鏡検査」を条件に持ちだしてきた。ピロリ菌がいるから慢性胃炎(最後に腸上皮化成にいたる)が起きる。ピロリ菌のいない慢性胃炎などない。要は呼気尿素検査でピロリ菌感染を判定されると、内視鏡検査の必要がなくなり、実入りが減るからである。それは学問ではない。ソロバンだ。
日本は成人のピロリ菌感染率が80%と世界一高い。私は西アフリカでレントゲン代わりに胃内視鏡検査がおこなわれている現場に立ち会って、その理由がわかった。器具を滅菌消毒しないで、次々と患者を検査していた。「胃内は無菌」と考えているから、消毒する必要がない。ガーゼで唾液などをぬぐうだけだ。日本では早期に胃カメラ、内視鏡が発展し、「胃がんの早期発見」と称して、消化器内科医が片端から患者の胃に1960年代から胃カメラや内視鏡を突っ込んだ。その頃、ピロリ菌の知識はない。アフリカと同じようにやった。だからC型肝炎と同じように、器具から感染した可能性がある。
私は40歳(1981)の時、胃の検診を受け、その時は何ともなかったが、54歳時にはピロリ菌感染と慢性胃炎が見つかり、62歳時に多発性出血性胃潰瘍が起こり、除菌療法を行った。いまは、何ともない。初感染は40歳時の内視鏡検査だと疑っている。
そのことに対する懐疑、反省、自己批判を内視鏡学会は一度も表明したことがない。だから学会ではなく、同業者組合なのである。
こうしてみると、『医者に殺されない47の心得』(近藤誠、アスコム)という本がベストセラー1位になっているのも、わかるような気がする。医師はそれを恥じなければいけない。
<尿素呼気試験などピロリの感染診断自体は、内視鏡がなくても行える。だが、国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県市川市)院長の上村直実氏は、「日本人は胃癌の罹患率が高いため、除菌前に内視鏡で胃癌がないことを確認しておくことが重要だ」と話す。内視鏡検査という“ハードル”を設けることで、胃癌の有無を確実にチェックし、安易に除菌治療が行われることを防ぐ狙いもある。
ただし通知には、「健康診断として内視鏡検査を行った場合には、(除菌治療時の)診療報酬明細書の摘要欄にその旨を記載すること」とも明記されている。つまり、内視鏡検査を行っていない医療機関でも、患者が健診時の内視鏡写真を持参すれば、それを踏まえて除菌治療が行えるわけだ。>
(この上村氏は1979年広島大医卒で、呉共済病院内科でピロリ菌と早期胃がんに関するよい研究をした後、国立癌センターに移籍した。しかし、以後は見るべき業績がない。)
pH2.0という強度酸性の胃酸の海に泳いでいるピロリ菌は、アンモニアを分泌して胃酸を中和し、自分の周りにアクアラングを作っている。(これが生物学でいう「延長された表現型」である。)このアンモニアが血中に吸収されて肺から出て来るから、ピロリ菌感染者の息には尿素が多くなる。これを測定すればピロリ菌感染が証明できる。これが「尿素呼気試験」である。
オーストラリア・パースの病院で、病理医のJ.ロビン・ウォーレン(J. Robin Warren)が、無菌とされていた胃の粘膜に妙な桿菌を顕微鏡下に見つけたのは、1972年である。彼の研究を内科研修医のバリー J. マーシャル(Barry J. Marshall)が手伝い、菌の培養に成功し、自分で菌を呑みこんで急性胃炎が起こることを証明したのが1984年。すぐに英医学誌「ランセット」に論文が掲載された。以後、広く追試により慢性胃炎、胃潰瘍、胃MALTOMA、胃がんの基礎要因であることが確認され、ピロリ菌と命名された。二人は2005年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
ピロリ菌を除菌すれば、慢性胃炎が治るし、胃潰瘍も治る。胃のMATOMAという悪性リンパ腫も治癒または縮小する。早期胃がんはそれ以上発展しない。胃がんにならない。これらはとっくに証明された事実なのに、日本の癌学会は国立癌センターが牛耳り、なかでも「お焦げ発現因子」説で文化勲章をもらったSや、喫煙で胃がんになるとまで主張した疫学者のHの影響がつよく、マーシャルとウォーレンの研究をノーベル賞受賞後も本気で認めようとしない。「胃がん研究は日本が世界一」とさんざん吹聴してきた手前、嫉妬があるのである。
もともとがんセンターは東大系と慶應大系の派閥が内部で喧嘩していて、他の大学は要職から排除されていた。彼らはピロリ学説に反対する点では共闘した。既得権益を守るためだ。
ピロリ菌についての一般解説書は、すべて非東大、非慶応大系の学者によるものだ。
1)緒方卓郎:「ヘリコバクター・ピロリ菌:胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎の元凶!」, 講談社ブルーバックス, 1997 (岡山大医, 1959卒)
2)伊藤慎芳:「ピロリ菌:日本人6千万人の体に棲む胃癌の元凶」, 祥伝社新書, 2006(1954生まれ、東北大医卒)
3)朝香正博:「胃の病気とピロリ菌」, 中公新書, 2010 (北大医, 1972卒)
高久史麿先生(東大内科)が「日本医学会総会」会頭の時(1999)に「医の現在」(岩波新書)が彼の編で出ている。当時の日本の医学・医療の状況を国民に知らせようとしたものだ。「がん」については「人はなぜがんになるのか」という章を東大医卒の黒木登志夫が書いているが、がん遺伝子の話が中心で、ピロリ菌のことは一切無視している。6年後にノーベル賞を受ける研究を知らないのか。視野狭窄もひどいものだ。
学者の嫉妬は思わぬ被害を生む。
それは患者の被害だ。修復腎移植では何十万人ものCKD(慢性腎不全)患者が、腎移植を受ける機会を奪われている。ピロリ菌では除菌の保険適用が遅れたため、何千万の慢性胃炎、逆流性食道炎の患者が胃痛に悩まされてきた。手遅れの胃がんや胃リンパ腫にかかった人もいる。
保険適用が認められたのは進歩だが、いざそうなると業界団体(断じて学会ではない)である「内視鏡学会」が、「内視鏡検査」を条件に持ちだしてきた。ピロリ菌がいるから慢性胃炎(最後に腸上皮化成にいたる)が起きる。ピロリ菌のいない慢性胃炎などない。要は呼気尿素検査でピロリ菌感染を判定されると、内視鏡検査の必要がなくなり、実入りが減るからである。それは学問ではない。ソロバンだ。
日本は成人のピロリ菌感染率が80%と世界一高い。私は西アフリカでレントゲン代わりに胃内視鏡検査がおこなわれている現場に立ち会って、その理由がわかった。器具を滅菌消毒しないで、次々と患者を検査していた。「胃内は無菌」と考えているから、消毒する必要がない。ガーゼで唾液などをぬぐうだけだ。日本では早期に胃カメラ、内視鏡が発展し、「胃がんの早期発見」と称して、消化器内科医が片端から患者の胃に1960年代から胃カメラや内視鏡を突っ込んだ。その頃、ピロリ菌の知識はない。アフリカと同じようにやった。だからC型肝炎と同じように、器具から感染した可能性がある。
私は40歳(1981)の時、胃の検診を受け、その時は何ともなかったが、54歳時にはピロリ菌感染と慢性胃炎が見つかり、62歳時に多発性出血性胃潰瘍が起こり、除菌療法を行った。いまは、何ともない。初感染は40歳時の内視鏡検査だと疑っている。
そのことに対する懐疑、反省、自己批判を内視鏡学会は一度も表明したことがない。だから学会ではなく、同業者組合なのである。
こうしてみると、『医者に殺されない47の心得』(近藤誠、アスコム)という本がベストセラー1位になっているのも、わかるような気がする。医師はそれを恥じなければいけない。
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