ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【歯科病理医】難波先生より

2012-10-29 12:06:57 | 難波紘二先生
【歯科病理医】「医師免許」というと、ほとんどの人は普通の内科外科などの「医師」免許を想定するだろうと思うが、実は歯科「医師免許」というのもある。SIKAをしかと発音してもらわないと「医師」と混同しかねない。


 医師専用サイトM3に以下のような投稿を見つけた。
<意外と臨床医に知らされていないのが、歯科口腔病理医の件です。一般の認定医と同じく、試験に合格すれば、一般病理の診断もすることができます。もちろん歯科医の先生でも努力して勉強していらっしゃる方も多いのですが、やはり誤診が多いのではないかという印象を受けます。これは病理医の中ではタブー視されている深刻な問題でもあります。>


 病理学会が病理専門医を養成・認定するための「病理認定制度運営員会」の委員をかなり長くつとめたから、「口腔病理専門医」発足のいきさつをかなりよく知っているつもりだ。


  日本病理学会が「認定病理医制」をつくったのは、病院の病理医の質を上げ日本の医療のレベルアップに貢献するのが目的だった。ところが病理学会の会員は医師ばかりではない。病理学に関心のある臨床医や他の基礎医学の研究者や、それに「歯科病理学者」がいる。
 歯学部のカリキュラムには「口腔解剖」、「口腔病理学」などがあり、主に口腔内の機能と構造それに病気について教えるが、口だけが独立して存在するわけがないので、全身の解剖生理と病理も教える。


 各地に歯学部が新設された際に、初代の病理学教授は、医学部から人材が派遣されていたから「医師免許」があった。しかし二代目以後になると、歯科医師免許だけの「歯科病理医」が増えてきた。日本には巷に「歯科総合病院」がないから、実質的には歯学部附属病院の病理部しか働く場所がない。
 それなのに歯学部の病理学教授たちが猛烈に運動して、「口腔病理医認定医制度」ができた。


 認定医制度を維持するためには、1)登録及び教育指定病院の認定、2)認定医試験の問題作成と試験の実施など、相当面倒な作業が必要であり、「運営委員会」の中にいくつか別の小委員会を設置する必要がある。委員会の会合費や時間などもずいぶんかかかる。これらは別会計になっていて、病院からの登録/認定料、受験料、認定病理医の登録料などの収入でまかなうことになっている。


 ところが「口腔病理認定医制度」の場合には、受験生が試験委員よりも少ないというありさまで、教育指定病院も歯科大学か大学の歯学部しかない。つまり財政的には大赤字、かりに試験に合格しても働き口がないという状態である。それは初めからわかっていたのだが、「医師病理医と歯科医師病理医を対等に」という歯科病理学教授たちの主張に抗しきれず、制度が発足したのである。


 5年前に「医師法」の施行規則が変わり、「病理科」が診療標榜科として認められてから、「病理診断料」や「病理学的管理料」が保険請求できるようになり、病理診断のニーズが増え、病理医不足も目立つようになった。患者の方も賢くなって専任病理医がいるかどうかで病院を選ぶようになった。いま病理医は完全な売り手市場で、広島市内の総合病院でも病理医がいないところがいくつもあるから、自分で選べる。


 M3の掲示は、「口腔病理認定医」の資格をとった歯科病理医が、検査会社で病理診断のアルバイトか専任職かをしている、と指摘したものだ。歯科領域の生検なり手術というと、口腔外科しかやらないので、診断すべき標本の数は知れている。それだけ見ていては、職業として成り立たない。
私はこれについて詳しい実情を知らないが、口腔病理学の教授が定年退職後、「病理医の指導の下に」関西の検査会社で病理診断をやっていた例を知っている。



 私はこの問題について、「死体解剖保存法は、歯科医師についても死体解剖資格の取得を認めている。これは<口腔内>という部位限定資格ではない。病理診断が<医行為>であるとしても、一定以上の能力が試験により確認された歯科病理医には、<指導病理認定医>の指揮下に病理診断業務に従事することを認めるべきだ」という意見である。しかし現状では「口腔病理専門医」による病理診断が単独でなされているケースがあるかもしれない。それは医師法違反だと考える。


 現場を離れて時間が経つので、事実認識や考え方に間違いがあるかもしれない。病理の先生方のご意見をお聞きしたいものだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10月28日(日)のつぶやき | トップ | 【書評のあり方】難波先生より »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事