【村田と孫崎】一日中、
エズラ・ヴォーゲル:「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(TBSブリタニカ, 1976) と
ビル・エモット:「日はまた沈む」(草思社, 1990)
を読んでいた。いまから、36年前と22年前に出た本である。前者は日本経済の最盛期、後者はバブル破裂の直前に出た本で、どちらも途中で放り出した私は、前者が日本賛美論で後者が日本否定論だと思いこんでいた。
今回、読み較べて、どちらも日本を率直に評価し、「日本異質論」を解消しようと意識して書かれた本だということがわかった。ヴォーゲルはハーヴァード大学の教授、エモットはオックスフォード大を卒業し、「エコノミスト」の東京支局長を長くつとめた人物だ。
感心したのはエモット本には各章の冒頭に、「エピグラフ」(章初めの引用)があり、その多くが芭蕉、一茶、子規、漱石、鬼貫あるいは私が知らない越人、星布などの俳句なのだが、訳者の鈴木主税がちゃんと原句を探り当てて、日本語に訳している点だ。この人の訳には定評があるが、ここまでやれるとは思わなかった。
いずれにしてもエモットは単なるジャーナリストではなく、「英国貴族」の伝統を受けつぐ「ジェントルマン」だということだろう。
1990年の「バブル破裂」以来、日本の経済は20年以上、停滞しているわけだが、その理由はすでにエモットが説明しているように思った。
頭がくたびれので、早めに帰って一杯やろうと、夜9時頃に帰ったら「NHKニュース」をやっていた。日本外交の今後について、同志社大の村田晃嗣と元外務省の孫崎享が出てきた。
昔、私のところに誤配達された米国からのエアメールは、「生物生産学部」のKenji Nanba宛のものと、総合科学部のKoji Murata宛のものが多かった。事務が最初のところだけ読んで、私宛のものと思いこんでしまうのである。
ある時、知らずに封筒を開けたら、米議会上院議員の丁寧な手紙が出て来たビックリしたことがある。それが村田宛の手紙だった。
それはすぐに本人に詫びをいって渡したが、つよい「米国コネクション」をもっていることがわかった。
で、別の機会に彼の講義を大教室で聴いたことがある。予想に違わず、「国際関係論」に関して、豊富な知識をわかりやすく、学生を飽かせない熱っぽさで講義してくれた。
他方の孫崎は例の「戦後史の正体」の著者だが、私は「外交で中国と折り合う」という彼の主張を聞いて、「孫崎の正体」がわかった。
もともと外務省は「インテリジェンス」が仕事だから、二重スパイや敵国のスパイがもぐり込みやすいところである。
戦前も、外務省ではないが近衛文麿首相のブレーン集団には「ゾルゲ事件」につらなる尾崎秀実がいた。
で、戦後史を「対米軸だけ(親米か反米化か)」という単純な二項対立の図式で説明する孫崎は、まず中国のスパイである。そう仮定すると、著書における叙述のスタンスと、この期において「外交で中国と折り合う」という主張の整合性が、矛盾なく説明できる。
エズラ・ヴォーゲル:「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(TBSブリタニカ, 1976) と
ビル・エモット:「日はまた沈む」(草思社, 1990)
を読んでいた。いまから、36年前と22年前に出た本である。前者は日本経済の最盛期、後者はバブル破裂の直前に出た本で、どちらも途中で放り出した私は、前者が日本賛美論で後者が日本否定論だと思いこんでいた。
今回、読み較べて、どちらも日本を率直に評価し、「日本異質論」を解消しようと意識して書かれた本だということがわかった。ヴォーゲルはハーヴァード大学の教授、エモットはオックスフォード大を卒業し、「エコノミスト」の東京支局長を長くつとめた人物だ。
感心したのはエモット本には各章の冒頭に、「エピグラフ」(章初めの引用)があり、その多くが芭蕉、一茶、子規、漱石、鬼貫あるいは私が知らない越人、星布などの俳句なのだが、訳者の鈴木主税がちゃんと原句を探り当てて、日本語に訳している点だ。この人の訳には定評があるが、ここまでやれるとは思わなかった。
いずれにしてもエモットは単なるジャーナリストではなく、「英国貴族」の伝統を受けつぐ「ジェントルマン」だということだろう。
1990年の「バブル破裂」以来、日本の経済は20年以上、停滞しているわけだが、その理由はすでにエモットが説明しているように思った。
頭がくたびれので、早めに帰って一杯やろうと、夜9時頃に帰ったら「NHKニュース」をやっていた。日本外交の今後について、同志社大の村田晃嗣と元外務省の孫崎享が出てきた。
昔、私のところに誤配達された米国からのエアメールは、「生物生産学部」のKenji Nanba宛のものと、総合科学部のKoji Murata宛のものが多かった。事務が最初のところだけ読んで、私宛のものと思いこんでしまうのである。
ある時、知らずに封筒を開けたら、米議会上院議員の丁寧な手紙が出て来たビックリしたことがある。それが村田宛の手紙だった。
それはすぐに本人に詫びをいって渡したが、つよい「米国コネクション」をもっていることがわかった。
で、別の機会に彼の講義を大教室で聴いたことがある。予想に違わず、「国際関係論」に関して、豊富な知識をわかりやすく、学生を飽かせない熱っぽさで講義してくれた。
他方の孫崎は例の「戦後史の正体」の著者だが、私は「外交で中国と折り合う」という彼の主張を聞いて、「孫崎の正体」がわかった。
もともと外務省は「インテリジェンス」が仕事だから、二重スパイや敵国のスパイがもぐり込みやすいところである。
戦前も、外務省ではないが近衛文麿首相のブレーン集団には「ゾルゲ事件」につらなる尾崎秀実がいた。
で、戦後史を「対米軸だけ(親米か反米化か)」という単純な二項対立の図式で説明する孫崎は、まず中国のスパイである。そう仮定すると、著書における叙述のスタンスと、この期において「外交で中国と折り合う」という主張の整合性が、矛盾なく説明できる。
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