ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【雨】難波先生より

2013-04-25 12:17:37 | 難波紘二先生
【雨】今日4/24は終日、曇で雨だった。
 1) 一昨日4/22は、隣町のシバザクラを見物に行った帰りだと、この春定年で病院を辞めたA君が訪ねてきてくれた。
 「サンデー毎日」をやっていると何か罪悪感を感じないか?と聞くと、2週間か3週間はあったが、もう消えたそうだ。
 私が現場にいた頃は、正規の技師の資格のある人がおらず、人集めと教育に苦労したが、彼の後任の若い人はすべて4年制の大学を出た臨床検査技師で、細胞検査士の資格も持っているそうだ。時代は大きく変わった…


 元が海軍の職工病院で、国家公務員共済組合連合会に所属してはいるが、「よそ者」扱いされ、独立採算制だった。で、戦後しばらくは給料の遅配が続いた。呉大空襲で建物は焼け、後に建ったのは木造2階建ての病棟と鉄筋コンクリート2階建ての外来棟。剖検室は戦後接収した米軍が設置したもので、コンクリート製剖検台があり、日本人には位置が高すぎ、すのこを下に敷いて使用した。年間100~150体の病理解剖を行った。


 医者は別として、職員はほとんど縁故採用だったから、組合もなく和気あいあいとしていたが、人材の質は低かった。内科出身のOK先生が院長になって、事務員の質が低いことをさかんにこぼすものだから、「縁故採用をやめ、新聞広告を出して4大出を試験で採用したらよい」とアドヴァイスしたら、あの強気な人が「うちみたいな病院に来てくれるかの?」と珍しく弱音をはいた。


 もう国民皆保険制が確立しており、医療に対する需要は増加しており、大学進学率は団塊の世代の進学以後、20%を超えつつあったから、大学卒業生にとって「公務員並み」の病院はよい就職先だった。それに経営は大黒字になっていて、年3回ボーナスがあった。独立採算なので、支給額は連合会本部が直轄する病院よりよかった。
 ともかく採用試験を始めてから、よい人材が集まるようになって、後には他の病院(佐世保とか横浜、舞鶴)へも事務長クラスを派遣するようになった。時代は変わる。


 2)昨日4/23は広島から出版社のKさんと元新聞社にいたYさんが、訪ねてきてくれた。「サンサーラ」で食事したあと、雑木林の中のテラスで満開のツツジを見ながら酒を飲んだ。(もっとも「梅昆布茶」入り25%甲類焼酎のお湯割り)


 で、前の晩ふと「林間に酒を暖める」という漢詩の一節を思い出し、誰の作だったか二人にメールで尋ねたら、すぐにネットで調べてくれて、返事があった。白居易(白楽天)の 「送王十八帰山、寄題仙遊寺」という詩の後段にあった。(「(友人である)王十八の帰山を送りて、仙遊寺に題を寄す」という意味か)

 「林間煖酒焼紅葉  林間に酒を煖めて 紅葉を焼き
  石上題詩掃緑苔  石上に詩を題して 緑苔を掃う」


 この読み下し文は、すこし納得がいかない。酒を暖めるのに紅葉を焚いたのなら、風流だ。水を入れた鉄鍋を鈎から吊し、下で落ち葉を焚いて徳利に入れた酒を暖める。もしそうなら読み下し文は、「林間に紅葉を焼きて酒を暖め、石上に緑苔を掃いて詩を題す」と読み下すのが、自然だろう。緑苔は墓石ではなく、腰掛けのようなものに使っていた石が苔むしていたのであろう。(中国語の文法に合っているかどうかわからないが、)


 テラスまで電源コードを引っぱって、テーブルに電気ポットを据えて、焼酎のお湯割りを作れるようにしようと考えたので、ふと「林間に酒を暖める」という句を思い出したのだが、これは「晩秋の詩」であった。花の季節には合わない。


 白楽天の詩は「枕草子」の「香炉峰の雪は簾(みす)を撥(かか)げて見る」のくだりでも有名で、平安貴族に大いに愛されたと思われるのに、李攀竜『唐詩選(三冊本)』(岩波文庫)には一作も入っていない。松枝茂夫『中国名詩選(3冊本)』(岩波文庫)と石川忠久編『漢詩鑑賞事典』には、何作が白楽天の詩が入っているが、「林間に酒を煖めて」は収録されていない。
 『和漢朗詠集』には入っているかもしれないが、ちょっと本が見つからない。


 テキストが電子化されていれば、「語句検索」に手間はとらない。幸い俳句や和歌では「語句索引」が多くは本についているので、「焚く」と「芝」で探すと。
 「焚くほどは 風がくれたる 落ち葉かな」(一茶)
 「焚くほどは 風がもて来る 落ち葉かな」(良寛)
 「思い出ずる 折りたく芝の夕煙 むせぶもうれし 忘れ形見に」(後鳥羽法皇)
 というのがあった。
 新井白石の随筆『折りたく柴の記』は、この歌に因むものらしい。幼児の想い出と父母のことがさかんに書いてあるのは、この歌から来ているのか、と納得。


 「広辞苑」CD-ROM版だと見出しの「逆引き検索」ができるが、あの機能は便利である。本文の字句も検索できるようになるともっと便利だろうと思う。


 良寛の句集を探していて、見つけたのがこの歌。
 「淡雪の 中に立てたる 三千世界(みちおおち) またその中に 泡雪ぞ降る 」


 春の淡雪の粒の中に、三千世界が存在しており、そこにも泡雪が降っている。(そして、またその泡雪の中に三千世界がある。)
 というフラクタル構造を詠った、とてつもなく雄大な歌である。
 山田風太郎がどこかで絶賛していたが、良寛という人はこういう発想が出来る人だったのか、と感心した。
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