【学会】修復腎移植がらみで二つの重要な学会がひらかれ、あるいはこれから開かれる。
第一は、8月27~30日、マレーシア・クアラルンプールで開催された「第13回アジア生命倫理会議」で、日大の高木美也子教授による「配偶者間生体腎移植におけるドナーの感情」という重要な論文が発表された。
従来の生命倫理学は哲学の延長線上にあり、実証的データに基づかない、思弁的な論考が多かったが、この論文は透析医療費が町の医療費を圧迫している鹿児島県奄美大島(町外渡航移植に対して補助金を交付している)における8組の配偶者間腎移植のドナーに対してインタビュー調査したものだ。フィールドワークに基づく生命倫理学論文は珍しい。
高木教授は移植患者の5年間生存率90%、透析患者は60%という数値と、小径腎癌をもちいる修復腎移植の5年間癌再発率6%という数値(Nalesnik論文では1%以下)を提示して、8人のドナーの意見を求めている。6人が妻で、2人が夫である。個別例として報告されている妻ドナー3例では、いずれも修復腎移植に賛成している。特に拒絶反応のため移植が失敗に終わったドナーのケースでそれがつよい。
せっかくの腎提供が拒絶反応のため失敗に終わった場合の、ドナー及びレシピエントの精神的衝撃は大きく、精神医学的支援が必要だが、この面での研究はほとんどなされていないと指摘する。また5年間の透析中の死亡率40%は明らかに高く、修復腎移植移植の6%という予想がん再発率は許容されるリスクであるとして、日本のように「移植待機年数14年」という極端な腎臓不足にある国ではもっと積極的に考慮されるべきだとしている。
腎臓提供の決断は、「腎移植が必要」と医師から聞かされた時点で「情緒的に」即座になされており、その後のインフォームド・コンセント(IC)は「上の空」でなされており、失敗例ではドナーの危険性や不利益について「そんなことは聞かされていない」という例が多いことを指摘し、ICは「ひとつの神話」だと述べている。
第二は、9月30~10月4日まで福岡市国際会議場で開催される「第32回国際泌尿器科学会(SIU2012)」で、徳洲会東京西病院顧問の小川由英名誉教授が「修復腎移植」臨床研究のその後の経過を発表される。8月のタイ・パタヤ市での「アジア泌尿器科学会」での発表と異なり、日本で開かれる学会であり、多くの日本の泌尿器科医が発表を聞くことになり、その反響が注目される。
これまで日本泌尿器科学会は、「修復腎移植」の演題を却下してきたが、今回はプログラム委員会が国際的に組織されており、日本側の意向だけで演題を却下できなかったために、発表となったものである。後ほど、学会での反応を小川先生からお聞きしたいものである。
移植とは直接関係がないが、「第74会日本血液学会学術集会」が10月19~21日、京都国際会議場で開催される。会長は自治医大(栃木県下野市)の小澤敬也教授で、最近の学会は「学会会社」が運営するので、主管大学と会場が地理的に無関係になったのが特徴である。
プログラムが送られて来たが開いてみてビックリした。厚さが700ページもあり、演題が1000題以上ある。参加者は5,000人を超える予想だという。演題抄録の90%が英語である。「発表も英語でやるのかしら?」と思う。グローバル化は世界の流れだから、「共通語(リンガ・フランカ)」としての英語化はやむをえないが、下手な英語で質疑応答をしていると、学会の進行は大幅に遅れるな…と思う。
これまで「EBM(Evidence-Based Medicine)」ということが強調されてきたが、この学会では「SBM(Science-Based-Medicine)」という統一テーマが採用されている。これまでも移植(骨髄移植)、がん治療(白血病・悪性リンパ腫)、がんの病因(成人T細胞白血病ウイルス)など、血液学・血液病理学は医学全体の最先端をリードしてきたが、これからもその役割を果たすだろうと思う。
第一は、8月27~30日、マレーシア・クアラルンプールで開催された「第13回アジア生命倫理会議」で、日大の高木美也子教授による「配偶者間生体腎移植におけるドナーの感情」という重要な論文が発表された。
従来の生命倫理学は哲学の延長線上にあり、実証的データに基づかない、思弁的な論考が多かったが、この論文は透析医療費が町の医療費を圧迫している鹿児島県奄美大島(町外渡航移植に対して補助金を交付している)における8組の配偶者間腎移植のドナーに対してインタビュー調査したものだ。フィールドワークに基づく生命倫理学論文は珍しい。
高木教授は移植患者の5年間生存率90%、透析患者は60%という数値と、小径腎癌をもちいる修復腎移植の5年間癌再発率6%という数値(Nalesnik論文では1%以下)を提示して、8人のドナーの意見を求めている。6人が妻で、2人が夫である。個別例として報告されている妻ドナー3例では、いずれも修復腎移植に賛成している。特に拒絶反応のため移植が失敗に終わったドナーのケースでそれがつよい。
せっかくの腎提供が拒絶反応のため失敗に終わった場合の、ドナー及びレシピエントの精神的衝撃は大きく、精神医学的支援が必要だが、この面での研究はほとんどなされていないと指摘する。また5年間の透析中の死亡率40%は明らかに高く、修復腎移植移植の6%という予想がん再発率は許容されるリスクであるとして、日本のように「移植待機年数14年」という極端な腎臓不足にある国ではもっと積極的に考慮されるべきだとしている。
腎臓提供の決断は、「腎移植が必要」と医師から聞かされた時点で「情緒的に」即座になされており、その後のインフォームド・コンセント(IC)は「上の空」でなされており、失敗例ではドナーの危険性や不利益について「そんなことは聞かされていない」という例が多いことを指摘し、ICは「ひとつの神話」だと述べている。
第二は、9月30~10月4日まで福岡市国際会議場で開催される「第32回国際泌尿器科学会(SIU2012)」で、徳洲会東京西病院顧問の小川由英名誉教授が「修復腎移植」臨床研究のその後の経過を発表される。8月のタイ・パタヤ市での「アジア泌尿器科学会」での発表と異なり、日本で開かれる学会であり、多くの日本の泌尿器科医が発表を聞くことになり、その反響が注目される。
これまで日本泌尿器科学会は、「修復腎移植」の演題を却下してきたが、今回はプログラム委員会が国際的に組織されており、日本側の意向だけで演題を却下できなかったために、発表となったものである。後ほど、学会での反応を小川先生からお聞きしたいものである。
移植とは直接関係がないが、「第74会日本血液学会学術集会」が10月19~21日、京都国際会議場で開催される。会長は自治医大(栃木県下野市)の小澤敬也教授で、最近の学会は「学会会社」が運営するので、主管大学と会場が地理的に無関係になったのが特徴である。
プログラムが送られて来たが開いてみてビックリした。厚さが700ページもあり、演題が1000題以上ある。参加者は5,000人を超える予想だという。演題抄録の90%が英語である。「発表も英語でやるのかしら?」と思う。グローバル化は世界の流れだから、「共通語(リンガ・フランカ)」としての英語化はやむをえないが、下手な英語で質疑応答をしていると、学会の進行は大幅に遅れるな…と思う。
これまで「EBM(Evidence-Based Medicine)」ということが強調されてきたが、この学会では「SBM(Science-Based-Medicine)」という統一テーマが採用されている。これまでも移植(骨髄移植)、がん治療(白血病・悪性リンパ腫)、がんの病因(成人T細胞白血病ウイルス)など、血液学・血液病理学は医学全体の最先端をリードしてきたが、これからもその役割を果たすだろうと思う。
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