ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【山崩れ】難波先生より

2018-07-25 22:41:32 | 難波紘二先生
【山崩れ】
 目下ベストセラーになっている、河合雅司「未来の年表2:人口減少社会であなたに起こること」(講談社現代新書、2018)を読んでみた。
(これは「買いたい新書」書評で取り上げる予定。)

 すると昨年7月に起きた「北九州北部豪雨」(福岡県と大分県を襲った)での土砂崩れを論じた箇所があった。
 著者はそれを「山林に手が入らず、流木の犠牲となる」と要約している。

 論点は「集落の近くにある急峻な山は、薄い表層土の下に、砂を含んだ別の地層がある。戦後に行われたスギやヒノキの植林では、苗木は浅い地層にしか植えられておらず、これらの樹は浅く横に根を拡げる。
 間伐を怠ると、下草が育たず、表層土の土壌が貧弱となり、林地の表面侵食が続き、土砂崩れが起こりやすくなる、というものだ。

 これは1)薄い表層土ー2)真砂土という風化した花崗岩の層ー3)花崗岩という
三層構造をなしている、広島県の山にもそのまま当てはまると思った。

 ふと国道脇に点在する、古いわらぶき屋根の民家を思い出した。
あの屋根は極めて急峻で、屋根職人も素材の藁も入手難の今日、
多くのわらぶき屋根は上にトタン板を貼っている。

 ところがいつの間にかその上に土が溜まり、雑草が生えている。
 私の家の庭にもスギやヒノキの苗が生えるから、いずれこうした屋根にも
土の量が増えれば、樹の苗も育つであろう。

 しかし「熱いトタン屋根の上」にできた、たまさかの土地の保水力はたかが
知れているから、ミクロ的な豪雨があれば、この土地ごと地面に滑り落ちるに違いない。

 時間軸を50年ぐらいに引き延ばしてみれば、このカタストロフィーは
今回の「西日本豪雨」で広島県に多発した、山崩れと類似している。

 前に東広島市黒瀬町の「広島国際大学」前の山に発生した「山崩れ」の写真を紹介したが、地元紙「中国」がこの山の南側斜面を、呉市安浦町中畑という集落の上空から撮影した写真を掲載していた。
 峰越しの右奥に、広島国際大学が写っている部分を転載させてもらう。
(写真:出典「中国新聞」)

 これを見ると、尾根線から30〜50メートル下で、いきなり多発性(9箇所)の山崩れが発生している。
 単位面積あたりの降雨量、真砂土の摩擦係数などがわかれば、この土地の保水力が計算できるだろう。

 もうひとつ、今回の災害で痛感したのは、「避難警報」の類が行政単位で出されていることの問題点だった。
 「平成の大合併」は地政学・地理学と関係なく行われた。
 その結果、東広島市は北部の「県央山地」と南部の瀬戸内海に面した漁村・漁港までを抱えこんでしまった。

 市役所の職員には転勤があるから、いまや福富支所でも地元のことを知らない市職員が威張っている。
 これでは緊急時に適切な「避難警報」が出せないだろうと思う。

 まあ「サイクス・ピコ条約」で、英仏が中東を分割した時と同じような間違いが生じているわけだ。


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