【カロリーと糖質】WSJが以下の記事を載せている。NIHの「加齢研究所」の実験で「カロリー制限をしても寿命は伸びないが、健康になる」という結果。ネイチャーON LINE版に発表されたそうだ。
http://jp.wsj.com/layout/set/print/Life-Style/node_503411
従来マウス・ラットで報告されたのは、「食物摂取量を不足気味にすると寿命が20~30%伸びる」というもので、この実験の欠陥については記事でも触れてある。ともかく記事を読んで思うのは、「解説報道」になっており、記者のレベルが高いこと。これが日本の記事とぜんぜん違う点だ。
が、この記事にも欠点がある。カロリーは「熱量」のことで、糖質からは4Kca/gm、タンパク質からは4Kcal/gm、脂質からは9Kcal/gm、エタノールからは7Kcal/gm 供給される。
食品栄養学は、基本的に、摂取するカロリーの量しか問題にしていない。
だからグルコースを含む糖質、アミノ酸(アンモニア)を含むタンパク質、カルボキシル基を含む(ケトン体を生む)脂質、アルデヒド基を生じるエタノールを、等価なものとして扱う。ここが大間違いなのである。
体内に入った食品は消化・吸収されて、さらに分解され、燃焼されるか、さまざまな生合成経路に入り、高分子の構成素材として利用される。ここが一番肝腎なのである。
例えば血糖値が上昇すると、過剰な遊離グルコースは、「糖化」という非特異反応によりタンパク質分子に結合する。その典型が「糖化ヘモグロビン(HbA1c)」である。1分子の砂糖(蔗糖)は、1分子のグルコースと1分子の果糖(フルクトース)とに分解されて、吸収される。半分がグルコースだから、砂糖の過剰摂取はすぐに血糖値を上昇させるのである。
他方、脂質はグリセロールと脂肪酸に分解され、吸収されて、さらにアセトアセチルCoAに分解されるが、ここでグルコース由来のピルヴィン酸が不足すると(糖質制限食の場合)、ケトン体が生じる。古い医学では「ケトン体は有害」としていたが、実は心筋、脳、副腎ではTCAサイクルに入り、重要な燃料となっていることが明らかになってきた。
実際に小児の脳の異常興奮を治療するのに「ケトン食」があるくらいだ。アミノ酸もアラニンを除き、最終的にはTCAサイクルに入り、26分子のATPを産生する。
白澤卓二順天堂大教授(加齢医学)は、「解糖系によるATP産生が、ニューロンの異常興奮の原因で、ケトン体分解はミトコンドリア内で行われるので、ニューロン膜の興奮をもたらさない」のがケトン体療法の根拠だ、という。(「<砂糖>をやめれば10歳若返る!」,ベスト新書)
運動をすると筋肉がグルコースを燃料として消費する。つまり解糖系が作動する。しかし、グルコースの分解により生じた乳酸は、血液に入り肝臓に運ばれ、ここでグルコースに生合成されるから、運動をしても思ったほど「カロリー消費」にはならない。
解糖系と糖新生系とは、本質的に同じ経路であり、ただグルコースの分解に向けて廻るか(解糖系)、グルコースの合成に向けて廻るか(糖新生系)の違いにすぎない。解糖系をTCAサイクルにつなぐものがピルヴィン酸なのである。
解糖系と糖新生の基本部分、つまりアミノ酸、乳酸、ピルヴィン酸がからむ部分は、用いられている4種の酵素の遺伝子が、古細菌を含め全生物共通だそうだ。これは代謝のこの部分が、20億年以上前に出現したことを示している。
体内に入った後で、修飾を受けて、食品の成分がどのように変わるか、そこを考えておかなければいけない。
今日の「中国」を見ると「栄養成分表示」が義務化されるとあった。結構なことだが、「100グラム当たり」に単位を統一しないと意味がない。消費者が混乱するだけだ。
http://jp.wsj.com/layout/set/print/Life-Style/node_503411
従来マウス・ラットで報告されたのは、「食物摂取量を不足気味にすると寿命が20~30%伸びる」というもので、この実験の欠陥については記事でも触れてある。ともかく記事を読んで思うのは、「解説報道」になっており、記者のレベルが高いこと。これが日本の記事とぜんぜん違う点だ。
が、この記事にも欠点がある。カロリーは「熱量」のことで、糖質からは4Kca/gm、タンパク質からは4Kcal/gm、脂質からは9Kcal/gm、エタノールからは7Kcal/gm 供給される。
食品栄養学は、基本的に、摂取するカロリーの量しか問題にしていない。
だからグルコースを含む糖質、アミノ酸(アンモニア)を含むタンパク質、カルボキシル基を含む(ケトン体を生む)脂質、アルデヒド基を生じるエタノールを、等価なものとして扱う。ここが大間違いなのである。
体内に入った食品は消化・吸収されて、さらに分解され、燃焼されるか、さまざまな生合成経路に入り、高分子の構成素材として利用される。ここが一番肝腎なのである。
例えば血糖値が上昇すると、過剰な遊離グルコースは、「糖化」という非特異反応によりタンパク質分子に結合する。その典型が「糖化ヘモグロビン(HbA1c)」である。1分子の砂糖(蔗糖)は、1分子のグルコースと1分子の果糖(フルクトース)とに分解されて、吸収される。半分がグルコースだから、砂糖の過剰摂取はすぐに血糖値を上昇させるのである。
他方、脂質はグリセロールと脂肪酸に分解され、吸収されて、さらにアセトアセチルCoAに分解されるが、ここでグルコース由来のピルヴィン酸が不足すると(糖質制限食の場合)、ケトン体が生じる。古い医学では「ケトン体は有害」としていたが、実は心筋、脳、副腎ではTCAサイクルに入り、重要な燃料となっていることが明らかになってきた。
実際に小児の脳の異常興奮を治療するのに「ケトン食」があるくらいだ。アミノ酸もアラニンを除き、最終的にはTCAサイクルに入り、26分子のATPを産生する。
白澤卓二順天堂大教授(加齢医学)は、「解糖系によるATP産生が、ニューロンの異常興奮の原因で、ケトン体分解はミトコンドリア内で行われるので、ニューロン膜の興奮をもたらさない」のがケトン体療法の根拠だ、という。(「<砂糖>をやめれば10歳若返る!」,ベスト新書)
運動をすると筋肉がグルコースを燃料として消費する。つまり解糖系が作動する。しかし、グルコースの分解により生じた乳酸は、血液に入り肝臓に運ばれ、ここでグルコースに生合成されるから、運動をしても思ったほど「カロリー消費」にはならない。
解糖系と糖新生系とは、本質的に同じ経路であり、ただグルコースの分解に向けて廻るか(解糖系)、グルコースの合成に向けて廻るか(糖新生系)の違いにすぎない。解糖系をTCAサイクルにつなぐものがピルヴィン酸なのである。
解糖系と糖新生の基本部分、つまりアミノ酸、乳酸、ピルヴィン酸がからむ部分は、用いられている4種の酵素の遺伝子が、古細菌を含め全生物共通だそうだ。これは代謝のこの部分が、20億年以上前に出現したことを示している。
体内に入った後で、修飾を受けて、食品の成分がどのように変わるか、そこを考えておかなければいけない。
今日の「中国」を見ると「栄養成分表示」が義務化されるとあった。結構なことだが、「100グラム当たり」に単位を統一しないと意味がない。消費者が混乱するだけだ。
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