ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【ガリバーの国】難波先生より

2015-09-29 11:13:46 | 修復腎移植
【ガリバーの国】
 ジョナサン・スウィフト(1667〜1745)は、梢から枯れて行く、松か杉かの樹を見て、「この樹は俺と同じだ、頭から枯れて行く…」とつぶやいたという。23歳頃から「目まい(Vertigo)」の発作が起こり、64歳頃からつんぼ(Deaf)と目まいが同時に起こるようになっているから、メニエル病だったのかも知れないが、彼の「病跡学(Pathographia)」には詳しくない。ともかく「頭から枯れた」のは事実であろう。
 『ガリバー旅行記』は1726年(59歳)の作品で、初版が1週間で売り切れたというから、今どきの出版社からみたら「夢のような話」であろう。まさに、これには「夢のような国」の話が書いてある。旅行者レミュエル・ガリバー氏が訪れた国は、

1) リリパット(小人国)=スマトラ島南西洋上にある島国
2) ブロブディンナグ(大人国)=北米大陸西海岸から突き出した半島国
3) ラピュタ(Laputa: 空飛ぶ島国)=インドのマドラス出航後、マラッカ海峡の辺りで日本の海賊船に襲われ、小舟で流された島で遭遇し、飛行島に乗り移った。
4) バルニバービ(ラピュタの支配する大陸)=飛島ラピュタはジグザグ航法を行い、領土を巡回する。首都はラピュタのラガドー、国王がいて立派な学士院がある。
5) グラブダブドリップ=詳細記述なし
6) ラグナグ王国=東経140°、北緯29°地点(日本の東南、小笠原諸島辺り)にあり、「不死人間ストラドブラグ」が住む。これは10年に1人生まれる、左眉毛のすぐ上に特別なアザがある赤ん坊で、この国で天寿とされている80歳を越しても絶対に死なない。全国に約1,100人が存在し、首都には約50人いる。著者が実際に会った「不死人間」の一番若いのが200歳だった。
7) ジャパン(日本帝国)=ガリバーは下関から上陸する。オランダ船に乗り、江戸へ旅行し「皇帝」に拝謁するも、具体的描写なし。
8) フウイヌム(馬人間の国)=マダガスカル島東方のインド洋にある国。賢明な馬人間が住んでいて、彼らに仕えるサルみたいな家畜人が「ヤフー」。孫さんは、この本を読んだことがないのだろうな…

 私は「ガリバー旅行記」は立派なSF小説だと思う。ちょうど「グリム童話」と同じで、子供向けに童話化された部分では、人間の残酷さや悲惨さ、強烈な風刺部分がカットされている。
 『ガリバー旅行記』は完全訳が、
 中野好夫「ガリヴァー旅行記(「世界の文学4」)」中央公論社(今は中公文庫)
 平井正穂「ガリヴァー旅行記」岩波文庫
 平井正穂「ガリヴァー旅行記」ワイド版岩波文庫
 などで入手できるのでお薦めだ。

 9/21「敬老の日」に、「毎日」が<80歳以上1000万人超、推計人口65歳以上26.7%」という記事を載せていて驚いた。確実に「下流老人」や「老後破産」が増えている。
 「福富ぶどう」(宮島とピオーネ)を箱で買い、隣の市に住む85歳の従兄弟を訪ねた。妻は認知症でデイ・サービスに通い、本人が1人で畑仕事をしていた。なまじ被爆者手帳があるばかりに、「やれ前立腺がん」、「やれ大腸ポリープ」とあれだけ医者を転々として、よくここまで死なずに済んだものだ。「生活保護」と「被爆者」は医療費無料だから、みな医者通いが好きだ。
 お盆の墓参りを欠礼したので、納屋の東隣の畑地に創られた「合墓」にお参りし、ローソクと線香を供えた。墓誌をみると、一族で一番長生きは例の「リビングウィル」を書いて90歳で「自然死」した義理の伯母で、その次がその舅(しゅうと)にあたる、私の母方の祖父の88歳、祖父の長女にあたる実の伯母は77歳で死んでいるから、どちらかというと、この家系には「長命遺伝子」があるようだ。
 私の父は82歳で、母はやはり90歳で死亡している。父は不整脈に由来する心筋硬塞、母は糖尿病由来の認知症が基礎疾患だった。どちらも病理解剖ができず、残念に思う。

 玄関土間の上がりかまちに腰掛けて、しばし雑談をしたが、この従兄弟は「新しいもの好き」でパソコン・インターネットはやるし、藁屋根をトタン屋根に代えた後には、今度訪れて見るとソーラーパネルが設置してあった。自家用には充分に足り、1kWh=47円で10年間の固定価格で買電するという。「何年で元が取れる?」と聞くと、「補助があったから10年」という。まあ、95歳までは生きるつもりのようだ。(ちなみに当方の買電コストは24円/kWh。来年度から自由化されるので、「原発なし」の電力を買うつもり)。
 玄関脇に立派なシカの角があった。これだけ立派なものは、野生鹿としては珍しい。(写真1)
  (写真1:鹿の角)
 私も持っているが第2分岐部で折れている。そういえば「鹿鳴荘」の由来である、鹿の鳴き声を今年は9/22に初めて聞いた。それも昼間のことだ。鹿鳴が聞こえると秋が深まる。
 途中に廃屋が目立ったことを話すと、「若い者が戻って来んから仕方がない」という。稲作を止めて付加価値の高い野菜類の畑作が中心だから、トラクターもコンバインもない。85歳にしてはぜんぜんボケがないな、と思う。これで「中流上層」に留まっておれるのだろう。
 行く途中に、JA職員の口車に載せられて、ローンを組んで最新式の農機具を買い、倉庫まで建てた廃屋があった。(写真2)
(写真2)
 これが「老後破産」と「下流老人」の一例である。この付近に、広い屋敷を白壁の塀で囲んだ豪農には、田んぼにソーラーパネルを設置し、ビニールハウスの列があった。私は「農協は農民のためにあるではない。職員を食わすために存在している」といつも言ってきたが、その通りになっているな、と思った。
 もう一つの話題は「稲作の機械化の結果、田んぼにヒエやひっつき虫などの雑草が生えている」という点だったが、もう永年稲作をしていないから、「それは知らんかった」という返答しかなかった。
 撮影中にカメラのソフトカバーに付着した「ひっつき虫」(草のタネ)を見ると、アメリカセンダングサ」(Bidens frondosa)という「大正時代に渡来した」外来植物である(北川尚史「ひっつきむしの図鑑」トンボ出版)。「ビデンス(bi-dens)」とは「歯が二つある」という意味のラテン語で、菊科の植物である。写真の白い糸状物は、クモの糸だ。(写真3)
 要するに、今はコンバインで稲刈りをしているから、その後にイノシシにくっついた種が、田んぼに撒布されるのであろう。モミに混じって自動撒布されるとは思えない。
(写真3)
 三次(みよし)市三和町上壱(かみいち)という地区で、県道脇にかかしをもちいて、昔の稲刈り風景を再現した家があった。昭和9(1934)年生まれの老人が趣味でやっているそうだ。婿入りした人で、娘夫婦は広島市に住んでいて、老夫婦の2人暮らしだという。その脇にも無住の家があった。(写真4)
(写真4)
 こうして一家が総出で、稲刈りと稲架に稲束を乾したものだが、この風景は完全に消滅した。
 たぶん雑草の生えた稲田は、酒米の「山田錦」を作っていて、種子の段階で選別が行われなければ、そのまま日本酒の原料になるのではあるまいか?食用の白米の袋から、ひっつき虫やヒエが出てきたら、「マクド騒ぎ」程度では収まるまい。

 2025年、段階の世代が後期高齢者(75歳以上)になる頃、この国では「不死人間ストラドブラグ」が多数派となる。「敬老の日」なんて消滅するだろう。「不死人間」の社会的扱いは、スウィフトがきわめて明解に描いている。だから「ガリバー旅行記」は大人のSFなのだ。
 SFはフランスのジュール・ベルヌ辺りから始まると思っている人が多いようだが、ヴォルテールの「ミクロメガス」はSF小説である(『浮世のすがた』, 岩波文庫,所収)。宇宙旅行も相対論的な視点も取り入れられている。
 「ガリバー旅行記」にある不死人間がいる国の話をしたら、「子供の頃に読んだ本にその話があった気がする」と従兄弟がいったが、不死人間ストラドブラグのことは、子供向けの本には書いてないだろう。
 たぶんジェームズ・ヒルトン『失われた地平線』(河出文庫)に出てくる、桃源郷「シャングリラ」のことではないかな。1937年に映画化されているから、それを見たのではないか?ケニアのナイロビで調査中に滞在したホテルが「シャングリラ」だったが、1990年頃のことで、意味がわからなかった。その後、映画を観て原作も読んだ。要するに歳をとるのが異常に遅い人たちが住んでいる理想郷だ。「書いたい新書」で書評もした。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1326677057
「記憶喪失と時間の相対性のテーマは(ヒルトン原作の映画)『心の旅路』(1941)に引き継がれる」と書評に書いたが、まさにこれこそ、「熱力学第2法則=エントロピー増大の法則」が突きつける永遠の大問題なのである。

 スィフトは、
 F. メンデス・ピントー(江上波夫訳)「アジア放浪記(世界探険全集3)」河出書房新社,1978/6
を種本として使用し、
 沼正三の「家畜人ヤプー」は、スウィフトの「フウイヌム(馬人間の国)」に出てくる「家畜人ヤフー」を種本にしている。孫正義が「ヤフー」を思いついた理由は、私にはわからない。

<付記=9/24「産経」1面に、105歳の現役ランナーが京都市で開かれた「マスターズ男子陸上100m競争に出場し、42.22秒で完走して、ギネス記録に認定されたとカラー写真入りで載っていた。大したものだ。私は中学時代でも100m走るのに20秒近くかかっていた。
 今は体重が45Kgに減ったから2階までは一気に走って上がれる。そのうち散歩の代わりに駆け足に代えようかと思っている。いわゆるジョギングだ。これを上り坂でやるつもり。
 この尾崎秀吉という人、92歳から陸上を始めたという。1932年生の宇和島の近藤俊文先生などは、まだはな垂れ小僧だな。
 今度、『日本の腎臓病患者に夜明けを:透析ガラパゴス島からの脱出』(透析か移植か、移植医療の史的基盤と提言)(創風社)を上梓された。間もなく「日経」に広告が載るはず。これなら長生きしても「ストラドブラグ」人にはならないですむ。>
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-09-30 00:04:34
Yahoo!の名前の由来について。孫さんはYahoo Japan Coの創立時の社長であって、名付けには直接関係ないよ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/Yahoo!

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