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【書評など】大野晋「日本語の年輪」(新潮文庫)/難波先生より

2013-10-18 12:15:45 | 難波紘二先生
【書評など】1) エフロブ「買いたい新書」書評に、大野晋「日本語の年輪」(新潮文庫)を採り上げました。
 初版は1966年だが,2000年に改版される際に,その後の研究の進展を踏まえて著者の追補が加えられており,内容はけっして古くなっていない。前半は,言葉をつくる人間と人間をつくる言葉についての言語学総論と日本語の言葉「美」「愛するもの」「不愉快な感情」など7分野58の基礎語彙について,言葉の誕生から現在に至る歴史的変容を述べた各論からなる。
 「おいしい」は元女性言葉の「いしい」で、男言葉が「うまい」だった。室町時代になり丁寧語の「お」がついて「おいしい」に変わり,やがて男も「うまい」を下品な言葉と思うようになった、という指摘などを読むと、目から鱗の感があります。
 後半は「日本語の歴史」で,『日本語の起源』(岩波新書, 1957)以来探求を重ねてきた日本語の南方起源説(タミール語由来説)を元に,弥生時代に水田稲作,金属器,機織りなどと共に日本に渡来したとする。ただ縄文語を4母音しかないオーストロネシア語としているが,それとアイヌ・隼人語との関係はあいまいです。
 日本列島には約3万5,000年前に人類が到達しているわけで、以後5,000年前に西日本に稲作文化が伝来するまで、基本的には同一民族により旧石器ー新石器(縄文文化)の時代が続いたと考えるのが妥当だろう。

 大野説ではドラヴィダ語の一種であるタミール語を話す人たちが、稲作文化とともに日本に流入したのが日本語の起源だとしており、形質人類学や文化人類学的な証拠の検討が不十分です。
 それはともかく、日本語を愛し大切に思う人なら,誰でも一度は目を通しておくべき本だと思いました。
 2) 高橋幸春さんから麻野涼 「死の刻(とき)」(文芸社文庫)のご恵送を受けました。22年前にある高校の修学旅行生が、中国で列車事故に遭い多数の生徒が死亡した事件がヒントになっているようで、有名進学校であるその高校を相手に、「犯人」が校門の爆破や人質事件などを次々と起こして行く。
 どうやらあの事故の時、引率の教師たちは列車の解体と撤去を急ぐ中国当局に妥協して、まだ生存者のいる車両まで破壊撤去したらしい。この事件はそれと関係している。


 序章に出てくるプリンスホテルのバーでの見知らぬ若い男女の出会いと、犯人とがどうつながるのか。これは読み始めたら、止められなくなりそうだ。
 昨夜、床の中で井上靖のデビュー作「猟銃」を読み始めたのですが、見知らぬ読者がそれぞれ書き手が異なる3通の手紙を送ってくるという設定で、リアリティがなく失望しました。もう「純文学」の時代は終わっていますね。
 もともと文学には「新しい知識を獲得できる」という機能もあったはずで、それはもう現代ではノンフィクションかミステリーにしか残っていないようです。
 高校の内申書の実態とか、携帯電話で海外プロバイダーを経由して、学校を爆破する方法とか、よく取材研究がしてあります。ありがとうございました。
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