ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【エコノミー症候群】難波先生より

2016-04-26 12:04:55 | 難波紘二先生
【エコノミー症候群】
 「日経」「毎日」「中国」が「熊本震災」について、この言葉を使用していて驚いた。正しい用語は「産経」の「エコノミー・クラス症候群」である。
 この言葉は1980年代までなかった。なぜなら航空機に直通便がなく、アメリカに行くにはハワイ経由かアンカレッジ経由だったからだ。「パンナム2便」は成田から各駅停車でヨーロッパに向かった。
 途中で飛行機の乗り継ぎがあり、乗客は途中泊したものだ。こういう便がなければ、私はアラスカで氷河を見物することもなかっただろう。
 私は留学した時、行きはハワイ観光とロサンゼルスのディズニーランドを見物し、帰りはアラスカを旅行した。

 1980年代になって格安ツアーにヨーロッパ、アメリカへの無着陸飛行が普及した。ビジネス・クラスなら席にゆとりがあり、体を動かせるが、安い「エコノミー・クラス」だと10時間以上も身動きができない。
 下肢を固定したままでいると、血液には「滞留したら凝固する」という原則があるから、下肢の深部静脈に血栓ができる。これが剥がれると、大静脈=心臓を経由して、肺動脈の分岐部にひっかかる。これが「肺動脈栓塞」である。医学的には「深部静脈血栓症症候群(Deep Vein Thrombosis Syndrome=DVTS)と呼ぶのが中立的病名だ。
 要するに貧乏人の飛行機旅行客がかかる病気だ。「金をけちってエコノミー・クラスに乗る長距離旅行客に発生する病気」という差別的意味が込められている。同じ病気は、車の中で寝泊まりしている地震被災者でも発生する。要するに医学的無知の産物である。(「エコノミー症候群」などと報じるメディアも無知だ。)

 ちなみに大統領を辞任した後の、リチャード・ニクソンもこれにかかり、それが直接の死病につながった。その頃には「エコノミー・クラス症候群」という病名はなかった。(あっても米大統領の死因については、あまりに失礼で、使えなかっただろう。)

 日本での普及は80年代に格安の「農協ツアー」が普及するようになってからだ。
 「言葉は生きている」というものの、日本のメディアはちゃんと語源を踏まえて、誤解の無いような報道に心がけて欲しいものだ。
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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-04-26 14:34:03
ニクソンは持病のAFから血栓が脳に飛んだんだと思ったが, 違ったか? 下肢の静脈炎も患っていたけど手術したはずだ.
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