【裕次郎】ロンドンからの友人が東京からの客を連れてきて、お昼を一緒にした。
英国では従来型の大きさの新聞は「タイムズ」くらいで、多くは部数を減らしてタブロイドになったそうだ。その分厚いし、手に持ちやすい。友人は「ガーディアン」のファンだそうだ。英国の人口は日本の半分くらいだが、新聞の発行部数はけた違いに少ないそうだ。日本もやがてそうなるだろう。
東京からの客人が「石原都知事は任期途中で突然やめて無責任だ」という。
それはそうかもしれないが、健康診断を受けることを広言していたのだから、その意図を推測すれば、こうなるという予測はついたはずで、政治部の記者なら別に驚かなかっただろうと私見を述べた。
夜のニュースを見ると、後任知事選が12月下旬だそうで、これでは他候補は準備も出来ず、「桶狭間の急襲」みたいに、後任は猪瀬直樹で決まりだろう。美事な政治感覚で、老いを感じさせない。
私は「核武装論者」の石原慎太郎とは意見を異にするが、彼が「至純の人」で私心がないことは疑わない。
その昼食での話の時に、「石原の血」の話をして裕次郎のエピソードを持ち出した。
その時は、関川夏央「昭和が明るかった頃」(文春文庫)にあったのか、石原慎太郎「弟」(幻冬社文庫)にあったのか、定かでなかった。
今見ると、慎太郎の本にあった。この話は兄だから書けたので、関川のようなふにゃけた作家では取材も出来ないし、書けもしなかっただろう。
裕次郎が「アラブの嵐」という日活映画のロケでエジプトに行った。
カイロ駐在の日系企業の社員やその家族のつよい要望があり、日本大使が大使館に裕次郎を招待して在留邦人とのパーティを開催した。裕次郎たちが出かけると、在留邦人たちが玄関の車寄せ前の庭に、並んで出迎えていた。
裕次郎が車から降りると、一斉に拍手と歓声が上がった。
その時、一番前にいた大使夫人がつかつかと近づくとこういった。
「あら、きたわ、きたわ」
そういって裕次郎を指さし、亭主を振り返って、
「あなた、これが裕次郎よっ」
といった。
その場の雰囲気は凍りついた。
(ここから先は、慎太郎の文をそのまま引用する)
<とたんに弟がゆっくり大使夫人を指でさし返し、
「おい、お前さんこの家の女主人らしいが、ここじゃ大層な家に住んじゃいても、日本に帰りゃ長屋にでも住んでるんじゃねのか。
ここでいい思いが出来てるのも、ここにもいる国民の払ってる税金のお蔭だろうが。勘違いしちゃいけないよ。いったい手前が何様だと思ってやがるんだ。
こんなとこで水一杯もらっても何をいわれるかわかりゃしねえや。
そうじゃないの、皆さん。
今夜は僕が奢るから、みんなここを出て僕のいるホテルで気分よく一杯やろうよ。
さっ、帰ろうぜ」
いい捨てて踵を返し出ていってしまった。
当然スタッフも彼に従う。となったら館員以外の邦人があっという間に雪崩を打って弟に尾いて前庭から出ていってしまった。>
何とも小気味のよい、胸がすかっとするような話じゃありませんか。
このエピソードを書き残してくれただけで、慎太郎と裕次郎の反役人根性がわかろうというものです。
英国では従来型の大きさの新聞は「タイムズ」くらいで、多くは部数を減らしてタブロイドになったそうだ。その分厚いし、手に持ちやすい。友人は「ガーディアン」のファンだそうだ。英国の人口は日本の半分くらいだが、新聞の発行部数はけた違いに少ないそうだ。日本もやがてそうなるだろう。
東京からの客人が「石原都知事は任期途中で突然やめて無責任だ」という。
それはそうかもしれないが、健康診断を受けることを広言していたのだから、その意図を推測すれば、こうなるという予測はついたはずで、政治部の記者なら別に驚かなかっただろうと私見を述べた。
夜のニュースを見ると、後任知事選が12月下旬だそうで、これでは他候補は準備も出来ず、「桶狭間の急襲」みたいに、後任は猪瀬直樹で決まりだろう。美事な政治感覚で、老いを感じさせない。
私は「核武装論者」の石原慎太郎とは意見を異にするが、彼が「至純の人」で私心がないことは疑わない。
その昼食での話の時に、「石原の血」の話をして裕次郎のエピソードを持ち出した。
その時は、関川夏央「昭和が明るかった頃」(文春文庫)にあったのか、石原慎太郎「弟」(幻冬社文庫)にあったのか、定かでなかった。
今見ると、慎太郎の本にあった。この話は兄だから書けたので、関川のようなふにゃけた作家では取材も出来ないし、書けもしなかっただろう。
裕次郎が「アラブの嵐」という日活映画のロケでエジプトに行った。
カイロ駐在の日系企業の社員やその家族のつよい要望があり、日本大使が大使館に裕次郎を招待して在留邦人とのパーティを開催した。裕次郎たちが出かけると、在留邦人たちが玄関の車寄せ前の庭に、並んで出迎えていた。
裕次郎が車から降りると、一斉に拍手と歓声が上がった。
その時、一番前にいた大使夫人がつかつかと近づくとこういった。
「あら、きたわ、きたわ」
そういって裕次郎を指さし、亭主を振り返って、
「あなた、これが裕次郎よっ」
といった。
その場の雰囲気は凍りついた。
(ここから先は、慎太郎の文をそのまま引用する)
<とたんに弟がゆっくり大使夫人を指でさし返し、
「おい、お前さんこの家の女主人らしいが、ここじゃ大層な家に住んじゃいても、日本に帰りゃ長屋にでも住んでるんじゃねのか。
ここでいい思いが出来てるのも、ここにもいる国民の払ってる税金のお蔭だろうが。勘違いしちゃいけないよ。いったい手前が何様だと思ってやがるんだ。
こんなとこで水一杯もらっても何をいわれるかわかりゃしねえや。
そうじゃないの、皆さん。
今夜は僕が奢るから、みんなここを出て僕のいるホテルで気分よく一杯やろうよ。
さっ、帰ろうぜ」
いい捨てて踵を返し出ていってしまった。
当然スタッフも彼に従う。となったら館員以外の邦人があっという間に雪崩を打って弟に尾いて前庭から出ていってしまった。>
何とも小気味のよい、胸がすかっとするような話じゃありませんか。
このエピソードを書き残してくれただけで、慎太郎と裕次郎の反役人根性がわかろうというものです。
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