ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【アブバエ】難波先生より

2015-01-20 18:54:48 | 難波紘二先生
【アブバエ】
 1/16(金)の15:00すぎ、用足しに生ゴミ捨て場に行ったら、薄日の中にアブとも大きなハエともつかない、昆虫が一匹腐った果物を吸っていた。
 常用のオリンパスなら離れた位置からアップ撮影できるが、あいにく充電中だ。しかたなく予備のペンタックスで撮影した。(写真)こういうことがあるから、予備カメラが必要になる。

 まさか真冬にこんな昆虫を見かけるとは思わなかった。歩き方はハエそっくりで、飛ぶのはアブのように飛び立つ。戻って室外温度をチェックしたら、12℃で湿度は40%だった。
 「原色日本昆虫図鑑(下)」(保育社)を開いて見ると「アブバエ」というのが、何と20種も載っている。それにしても「アブバエ」とはよく名づけたものだ。体長10mmくらいで、腹節背部に黒十字が2段にあり、胸部背側正中に灰褐色の一対の縦縞がある。

 これに合致するのは「エゾ・コ・ヒラタ・アブバエ」(Meta-syrphus corollalae, Fabricius)だけだ。舌を噛みそうになるくらい名前が長い。和名はエゾがついているが、樺太から日本全国を経て台湾、アジア、エジプト、北米に分布とあるから事実上世界中どこでもいるのだろう。
 このmetasyrphusは英語検索すると、「ホヴァー・フライ」(アメリカ・ヒラタアブ)というのがいて、これは日本のハナアブのことだ。確かにハナアブはホヴァリングができる。
 台湾にいるやつは「オオヒラタアブバエ(Metasyrphus confrater)」だそうだ。

 アブバエの属名は「meta+syrphus」で造語されているのだが、この「シルフス」の意味がラテン語辞書を引いてもわからない。和名の「エゾ・コヒラタ」に対応する種名のCorollalaeは、トヨタの乗用車「カローラ」と語源がいっしょで、「小さな花環」という意味だ。
 この写真を見ると、アメリカヒラタアブは尻尾の先が花冠状になっている。

 http://www.cirrusimage.com/flies_Metasyrphus_americanus.htm

 しかし「syrphus」は和名と学名に何の関係もない動物である。
 クモ類だけでなく、これら他の昆虫にも和名に問題がある種が多い。英語WIKIを見ると命名者はドイツ・キール大学の自然科学と経済学の教授で昆虫学者のJ.C.ファブリチウス(1745〜1808)とある。
 このファブリチウスは名前がヨハン・クリスチャンであり、
 http://en.wikipedia.org/wiki/Johan_Christian_Fabricius

 イタリア・パドワ大学の教授で「ファブリチウス嚢」(鳥類におけるB細胞リンパ球産生の場で、総排泄腔から袋状に外側に陥入している。)や静脈に弁があることを発見したG.ファブリチウス(1536〜1619)とは別人である。こパドワのファブリチウスの弟子が「血液循環」を発見した英国人ウィリアム・ハーヴェィである。
 キール大のJ.C. ファブリチウスは生物学者リンネの弟子で、デンマーク人だ。

 Syr-に相当するスペルはラテン語にはあるが、ギリシア語だとYがないので、「Snr-」になる。ギリシア語辞典にSnr-で始まる語はない。しかし「American College Dictionary」をみると、syrphidという語があり、ハエやアブの「科」の一部で、ハエを意味するギリシア語syrphosに由来するとある。これは大型の「オックスォード・ギリシア語辞典」を引かないといけないが、大仕事になるからやめておく。語源はどうもよく分からん。

 日本語図鑑の説明は形態が中心で、行動生理学的な説明がなく、成虫越冬が普通なのかどうかがわからない。これ以上の情報は、ネットでも見あたらなかった。とりあえず「冬でも活動するアブバエという昆虫がいる」というところで、ひとまず詮索を打ち切ろう。
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3 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-01-21 01:56:08
ギリシア語で「ブヨ」gnatのことをsýrphosというそうです。文字化けするかな?しないかな?
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Unknown (Unknown)
2015-01-21 01:56:45
文字化けしちゃいました。
syrphosのyの上にダッシュがついています。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-01-21 04:42:13
http://en.wiktionary.org/wiki/σύρφος#Ancient_Greek

上記ページにgnat、winged antとありますが、antは膜翅目、ブヨは双翅目、全く違う分類群だけど、ギリシア人は区別しなかったのかな。
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