ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【食材偽装とデータ操作】難波先生より

2013-11-07 12:40:20 | 難波紘二先生
【食材偽装とデータ操作】「神戸牛」や「松阪牛」というと、霜降り肉で赤身の肉に白身の脂肪が混じっていて、軟らかくて美味しいと好まれる。外国人は「マーブル・ビーフ(大理石肉)」と呼んでいる。


 あのような筋肉を持つ牛を育てるには、大変な手間と特殊な飼料が必要となるが、あるシェフに聞くと、生のロースに注射器であちこちに脂肪を注入すれば、そっくりのものができ、厚く切って焼いてステーキにしてしまえば、本物と区別がつかないそうだ。
 広島でも阪急・近鉄系のホテルがやっているのは、その業界の関係者には周知の事実だそうだ。


 で、そのグループの社長がはじめ「偽装ではなく、誤表示だ。だから社長を辞任するつもりはない」と、開き直った言い逃れをしていたが、結局、「世間を騒がせ、信用を失墜した」と辞任に追い込まれ、社長が変わったら「意図的な偽装でした」と認めたのは笑止千万だ。失った信用はすぐには戻って来ないだろう。


 「偽装食材を食わされた客に返金しない」と言っているが、客が求めているのは返金ではない。謝罪と誠意だ。返金に応じれば、きっとそれに便乗する不心得者が出てくるし、実際に料理を食べた人でも、領収書を保存していて、食べたことを証明できる人は限られて来る。いっそのこと、不当に得た利益を福島の復興計画にでもまとめて寄付したらどうだろう。それなら「美談」になるし、世間の腹の虫も少しは収まり、信用回復にも役立つだろうに。


 似たようなことを言っているのが、例のノバルティスの「降圧剤データ不正」問題での、滋賀医大副学長(病院長)で降圧剤の臨床研究責任者だった教授だ。滋賀医大は単科大学だから、総合大学の学部長と副学部長でしかない。世間はそういうことを知らないから、「学長」という名前に騙されてしまう。


 で、11/1の「産経」と「毎日」が報じたところによると、この柏木という副学長は、「次期学長の有力候補」だそうで、「不正はない。論文のデータ数値とカルテの数値が違うのは入力時の誤操作であり、意図的なものではない。意図的な操作だったというのなら、証拠を示してほしい。辞任も論文撤回もしない」と開き直ったそうだ。



 京都府立医大や慈恵医大ではすでに論文を撤回しているし、依願退職した臨床治験責任者の教授が退職金を返納している。また医大側がこの元教授を告訴している。(それにしても退職金がたった300万円足らずとは少ない…。これは退職金の計算式が「基本給X在職年数」となるため、国立→私立→公立というふうに異動した場合、経歴が途中で途切れるからだ。在職年数に掛かる係数が、10年刻みで大きくなるので、10年以下の勤続の場合、退職金は雀の涙ほどしかない。)


 事情は滋賀医大も同じで、学長、副学長になれば、「指定職」になり、給与号俸のアップ、指定職手当、退職金の計算式変更があるから、同じ辞めるのなら学長で辞めるのがはるかに得なのである。まあ、そのへんに名誉欲と絡んで、地位への執着があるのだろう。


 が、「意図的な操作だったという証拠」は簡単に提出できる。
 1.人間は数値を偽造する場合、一見ランダムな数字を使ったように見えても、1~10の数字の中で人により好んで使う数字がある。具体的な数値表が公開されていないが、2桁、または3桁の数字の種類別の頻度(ことに十の位のそれ)を計算してみるとよい。一定の数字の頻度が有意に高いはずである。
 一般には、捏造数値には5とか7とかがよく用いられる。


 2. もし副学長が主張するように、「意図的ではなく、単なる入力ミス」だったとすれば、ミスというものはランダムに生じるから、約150例のカルテ・データの平均値と論文に使われたパソコン・データの平均値は同じになるはずである。
 ところが、論文データの数値はいずれも、降圧剤使用例に有利なるように、一方方向にずれていた。このことはデータが入力時に「意図的に操作された」という動かぬ証拠である。


 元もと、製薬会社の臨床治験には第Ⅱ相と第Ⅲ相があり、今回の治験は投与群と被投与群を「くじ引き」で比較する、第Ⅲ相のものと思われるが、論文を投稿する時には、「COI(利益相反)」がないことを、「宣誓」しなければ国際誌は受け付けない。
 薬を売ることを目的としている製薬会社の社員が、臨床治験のデザインやデータの入力や統計的解析に参加していたということは、それ自体がすでに「COI」違反であり、ウソをついて、つまり雑誌編集部とレフェリーを騙したことになる。


 問題の論文というのは、どうもこの2本らしい。症例数とValsartan(新聞はB音とV音をちゃんと区別して報じてくれ。一字違っていても、NIHのPubMedでは引っかからない)。
 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17363751


 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18716365


 「高血圧研究(Hypertension Res.)」という英語雑誌だ。
 タイトルは、「Impact of renin-angiotensin system inhibition on microalbuminuria in type 2 diabetes: a post hoc analysis of the Shiga Microalbuminuria Reduction Trial (SMART).」とあり、
 「Ⅱ型糖尿病における微量アルブミン尿に対するレニン=アンギオテンシン系阻害剤の圧倒的効果:滋賀微量アルブミン減量試験(SMART)の終了後解析」となっている。


 抄録を読めばわかるように「レニン=アンギオテンシン系阻害剤(Varsartan)」を使用した例に、微量アルブミンの著明な減少が見られたことになっている。
 尿中の「微量アルブミン」はⅡ型糖尿病において、糖尿病性腎症の発症危険度の指標として用いられており、本当にヴァルサルタンにこれを減少させる効果があるのなら、それは有益な薬といえるだろう。だが、ここでデータ操作が行われているのである。


 しかし、この治験計画に、よりにもよって「スマート」と名前を付けるとは…
 (この「SMART」というグループの中に、ノヴァルティスの社員が加わっていたのであろうが、所属を正直に論文に書いていたとは思えない。)
 臨床試験の命名には主任研究者のこころの「おごり」が表れている。



 阪急ホテルの社長と同じで、早晩、論文撤回に追い込まれ、公的に責任を取る立場に追い込まれるだろう。そうでないと、世間の薬剤に対する信頼は回復しないだろ。
 ぜんぜんスマートでない対応ぶりを、いつまで続けるつもりか。
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