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【ABO式血液型とはなにか】難波先生より

2016-04-04 16:39:16 | 難波紘二先生
【ABO式血液型とはなにか】
 最後に、最も代表的なABO式血液型を構成している型物質の基本構造を説明していきましょう。
◆ 血液型を決めるのは糖鎖分子
 Rh式抗原はタンパク質抗原なので例外的ですが、ABO式を含め多くの血液型を決定するのは糖鎖分子です。
 生物体を構成する成分には糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質があります。糖質は砂糖(蔗糖)などの糖類(シュガー)です。炭水化物(カーボハイドレート)ともいいます。1個だけで分子を構成するものを「単糖類」といいます。これにはブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース、フコースなどがあります。
 単糖が2つ結合して「二糖類」を形成します。グルコースにガラクトースが結合したものが乳糖(ラクトース)です。グルコースにフルクトースが結合したものが蔗糖(砂糖=シュクロース)です。
 多数の糖分子からなるものを多糖類(ポリサッカライド)といいます。アミロペクチン、グリコーゲン、デンプンは多糖類からなるエネルギー貯蔵体です2-5)。単糖が鎖状につながったものを「糖鎖」と呼びます。糖鎖が脂質分子やタンパク質分子と結合したものは、それぞれ糖脂質(Glycolipid)、糖タンパク質(Glycoprotein)と呼ばれます。
 糖鎖の配列は遺伝子により直接決定されるのではなく、糖鎖の結合順序に関与する酵素により決まります。つまり「遺伝子は血液型物質を直接つくるのではなく、血液型物質としてはたらく糖鎖を合成する酵素をつくる」のです。しかも、その酵素が順番通りに、ちゃんと働いてくれないと遺伝的に指定されている血液型物質はできません。糖鎖合成酵素というワンクッションが入るので、血液型の遺伝子型と血球凝集反応で検出される表現型とは必ずしも一致しないのです。
 ◆ABO式の血液型物質のつくられ方
 ABO式の場合はO型の血液型物質(H物質)が土台となっており、関係する単糖はガラクトースとフコースの2種類だけです。ABO式血液型物質が合成される過程は図3-1のようになります。
 ABO式型物質の本体は、赤血球膜表面にある糖脂質にふくまれている糖鎖、厳密にいうと3つの単糖です。その型物質の骨格は、ガラクトース(Gal) =N-アセチル・グルコサミン(NacGlc)=ガラクトース(Gal)という、3つの糖が並んだ鎖で、以下のように書くと明瞭でしょう。(右端が自由末端)
  Gal=NacGlc=Gal です。
 型物質の合成に際しては、まず基本になるH物質(O型物質)が作られます。これは、赤血球膜表面に出ている糖鎖のガラクトース末端(の2の位置)に、フコース転移酵素によりフコースが結合することにより生じます。これを土台として他の型物質がつくられるのです。関係する単糖はガラクトースとフコースの2種類だけです。
 基本骨格の右端のGalにフコース(Fuc)が結合した、
 Gal=NacGlc=Gal=Fuc
がH物質(O型物質)です。この右のGalにもう1個ガラクトース(Gal)が付いたものがB型物質で、以下のようになります。
 Gal=NacGlc=Gal(-Gal)=Fuc
 Gaガラクトースの代わりに、その誘導体であるN-アセチル・ガラクトサミン(NAcGal)が付いたものがA型物質で、以下のようになります2-5)。
 Gal=NacGlc=Gal(-NAcGal)=Fuc

 A型物質はH物質を土台にして、N-アセチルガラクトサミンが「N-アセチル・ガラクトサミン転移酵素」の働きにより、ガラクトース(の3位置)に付加されると合成されます。ガラクトース転移酵素が働いて、ガラクトース(の3位置)に別のガラクトースが付加されるとB型物質になります。
 AB型では一つの赤血球にA型物質とB型物質の両方が発現されます。つまりこの場合は遺伝子aとbの両方が働きます。
 ABO式型物質の土台部分、O型物質(H物質)はA型、B型とも共通です。つまりABO式の血液型の違いとは、わずか分子量200D(ダルトン)程度の糖分子1個の違い(ガラクトースかN-アセチル・ガラクトサミンか)にすぎないのです。
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