ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【婚外子】難波先生より

2013-09-11 12:25:41 | 難波紘二先生
【婚外子】この言葉は講談社「類語大辞典」にはない。あるのは、私生児、私生子、庶子、落とし子、隠し子だけである。(落胤、落とし胤は上流階級向けの言葉)
 「婚外子」という言葉はマスゴミの勝手な発明である。法的には「非嫡出子」という。


 「現代用語の基礎知識 2013」には2011/12/11「名古屋高裁」判決の説明の見出し用語として載っている。今回の、最高裁判決は民法第900条「嫡出子でない子の相続分は、嫡出子の二分の一とする」という、現行民法が違憲とするものだ。


 今の民法は明治時代に制定されたものだが「ナポレオン法典」の流れを汲んでいる。中でも傑作は、
 1)第772条=妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
米国での調査によるとDNA鑑定をやると、「実子」とされている子の17%は夫以外の子だそうだ。
つまり結婚制度を前提とするかぎり、こういう「推定」を置かざるをえないのである。


 2)第886条=胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
 これは刑法第212条「堕胎罪」に整合したものだが、「胎児の人権」を認めている。財産の取り分を増やそうと、妊娠した妾を騙して堕胎させると刑法第215条「不同意堕胎罪」が成立することになっている。


 この「民法」は、仏人法学者ボワソナードが「刑法」に続き、明治12年から10年かけて仏文で作成し、司法省が日本語に翻訳したものだ。明治23年4月公布、26年1月施行となっている。明治24年、これに反対する東大法学部の穂積八束は「民法出でて忠孝亡ぶ」という有名な論文を発表している。
 穂積の反対論は、「個人が主体になっており、家や国家が軽んじられている」というものだった。「産経」が主張しそうな議論だ。


 さあ、最高裁の判決で嫡出子も非嫡出子も法的に平等に扱え、ということだが、実の親子関係をどうやって証明するのだろう。
 日本人の好きな「血液型」は当てにならない。
 イブ・モンタンが死んだとき、庶子が遺産相続に名乗りを揚げた、幸いフランスは土葬だったから、国民的歌手の墓を暴くというスキャンダルで決着がついた。どっちが勝ったか忘れたが、遺体の骨髄から採取したDNA鑑定が決め手になった。


 同様な問題が、火葬が圧倒的多数である日本で起きたらどうするのか?
 発展家の父親や母親なら、子供のDNAが違うというケースがいくらでも出てくるだろう。ただでさえ紛糾する遺産相続が、「争族」になるのは間違いないだろう。


 ナポレオン法典は実によくできていると思う。婚姻中に妻が産むから嫡出子なのであって、それを疑ったら婚姻制度は成り立たない。
 やがて妊婦が出産するたびに、新生児のDNAを夫のそれと比較して「間違いなくあなたの子です」と医者がいう時代が来るのだろうか?
 最高裁判決で儲かるのは、弁護士とDNA検査会社だろう。


 私は行きすぎたフェミニズムに対する警告として、「生と死のおきて」(溪水社)で、SFとして「男性による処女生殖=出産」の可能性を書いておいた。Y染色体のある男は、クローン技術により男でも女でも生めるが、女は女しか生めないのである。
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