【電子タバコ】
5/20(水)の夜、広島市中心部のホテルで開かれる会合に、少し早めに出かけた。受付をすませた後、3Fの立体駐車場に繋がる玄関脇の、宮島のロープウェー・ワゴンの半分ほどもない小さな喫煙室に向かった。
世界的な禁煙ブームのせいか、外国人観光客が多い、このホテル喫煙室は、玄関のガラスも喫煙室の窓ガラスも目張りがしてあり、中が見通せない。
スライド式ドアを開けてびっくりした。中は、ダークスーツを着た若者で一杯。満員電車さながらで、立錐の余地もない。おまけに吐き出される煙の量が換気扇容量をはるかに超えていて、濃い煙のため斜め向こうの反対側のガラスが、ぼんやりとしか見えない。こんな光景は初めて見た。
開けたドアの方に流れるてくる煙で、眼がチカチカしたと思ったら。涙が流れてきた。こんな経験も初めてだ。昔聴いたマイルス・デービスのジャズ曲「煙が眼にしみる」を思い出した。
https://www.youtube.com/watch?v=NBQkHTPV_C8
あわてて外に出ると、外の車寄せの柱の陰になるあたりにも、同じ会社の若者が溜まっていて、ひっそりとタバコを吸っている。背に腹は代えられぬ。「赤信号、みんなで渡れば恐くない」。好奇心もあって静かに近寄って、同じようにタバコを吸いながら、若者の一人に挨拶し、いくつか聞いてみた。
宴会場の通路に何百人とあふれているダークスーツは、ソフトバンクの社員で「中四国年次大会」のために集まっている。今は「喫煙休憩」の時間だそうだ。IT関係の業界では、どこも喫煙率が高いという。
「ああ、よくわかるよ。もともと脳細胞にはニコチン類似物(アセチルコリン)に対する受容体が備わっていて、ニコチンはこれに結合することで、脳を活性化させる。
喫煙とは、ニコチン・アルカロイドを含む煙草を火で燃やして、気化したニコチンを口腔や気道の粘膜から吸収するという風習のことだ。
喫煙の害は、植物が燃える時に発生する、タール成分に由来するものがほとんどだ。ニコチンそのものには発がん性も気道傷害作用もない。
君たちは頭がよいのだから、ひとつニコチンを直接気化させ、煙を出さない電子タバコを開発してくれないかね。煙を出さないニコチン気化装置はノンアルコール・ビールと同様に、税法上のタバコにはならないだろう。国税庁は困るだろうが、煙害を問題視している厚労省や一部の医師たちは歓迎するのではないかな」
(私の仕事場には来客の喫煙者用に、1970年代の終わり頃、米国立がん研究所のスーベニア・ショップで売っていたピュータ製の灰皿が用意してある。)
まあ、煙草を1本吸う間に、そんな話をした。その時、少し離れたところにいた別の若者が、吸う度にパイプの端が赤くなる道具を口にくわえていた。「あ、これが電子タバコか?」と思った。実はまだ現物を見たことがない。
喫煙者は、脳細胞のニコチン受容体が依存症になっているから、口に棒状のものを咥えて、ニコチン摂取ができればよいので、煙などまったく必要としていない。
会が始まって隣席のEXスモーカーから、「壁紙が黄色くなったので張り替えたが、やはり黄色に見えるので、おかしいと思い眼科に行ったら、白内障を発見された」という話を聞いた。眼内レンズを入れたそうだが、あの手術をやると、「世の中はこれほど明るくてカラフルだったのか!」と感動するものだ。(しばらくすると、順化が生じて感動がなくなるが…)
その後、5/22「東京」が電子タバコの記事を報じている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015052202000125.html
<厚生労働省の研究班は二十一日、国内で流通する九銘柄中の四銘柄で、蒸気から高濃度の発がん性物質ホルムアルデヒドが検出されたとの調査結果を発表した。また一部の溶液からは、国内販売では認められていないニコチンが検出されたという。
報告を受けた厚労省の専門委員会は「健康への影響が否定できない」として、引き続き影響を調べる方針を確認。厚労省などは今後、規制の必要性や対策を検討する。
電子たばこは、VAPE(ベープ)などとも呼ばれ、スティック型やパイプ型などが流通。国内ではニコチンを含むものは医薬品医療機器法(旧薬事法)の規制対象となり、販売が認められていない。>
これも厚労省が記者クラブで発表したもののたれ流しだろう。
5/23「産経」では、用いている電子タバコの図は同じだが、検出されたホルムアルデヒド濃度は「紙巻きタバコと同程度か、それ以上の値」、「ニコチンを含まないとして市販されていたが、微量のニコチンが検出された」とポイントを押さえた報道がなされていた。
タバコにはニコチンが含まれているが、国内販売が認められている。タバコのタール分とニコチン含量はほぼ比例しており、「タール6ミリ」という表示のあるタバコ1本には、0.6mgのニコチンが含まれている。一箱20本のニコチン含量は12mgとなるが、この量はニコチンのLD50の約1/10である。(今は「タール1ミリ」というタバコが売れ筋のようだ。)
「産経」解説記事によると、「ニコチン入り電子タバコは国内販売が禁止されているが、海外では売られており、個人輸入する人が増えている」という。私は国産の家が高すぎるから、丸ごとカナダから個人輸入した。会社の提案では組み立て職人も派遣するという話だったが、滞在のホテル代を考えると、知り合いの工務店に頼む方が安くつくので、組み立てを依頼した。
個人輸入など易いものだ。
これで「ニコチン入り電子タバコ」を個人輸入して試してみるという、新たな実験のタネが見つかった。
ホルムアルデヒドが水に溶けたものが「ホルマリン」だ。昔、ある医学雑誌に依頼されて「ホルマリンの歴史」について書いたことがある。ホルムアルデヒドは自然界には存在しない物質で、蟻酸またはメタノールを加熱気化・酸化することで得られる。19世紀後半に初めて合成された。初期のプラスチックであるベークライトは、ホルマリンから合成された樹脂だ。
厚労省の検査結果が事実なら、原料に蟻酸かメタノールが入っていることになるだろう。
ホルムアルデヒドの問題とニコチンの問題は切り離して考えるべきだ。
半数致死量LD50(mg/Kg)は毒性の目安として用いられる。ニコチン100, シアン化カリ(青酸カリ)150, ホルムアルデヒド 800の順に猛毒であり、法で「毒物」に指定されている。「後妻業殺人事件」で用いられた青酸カリよりも、ニコチンの方がLD50は小さい。
だが青酸カリは工業用などで必要不可欠であり、容易に純品が入手できるために、殺人に使われるが、ニコチンの純薬を必要とする研究室など、限られている。
(と書いたが、ネットで調べると5グラムを5000円でネット販売しているところがあった。
http://www.siyaku.com/uh/Shs.do?dspCode=W01W0114-0121 )
5グラムのニコチンは、理論上は体重50Kgのヒトを2人に1人の割合で殺せる量になる。1本1mgのタバコに換算すると、5000本、250箱分になる。タバコ1箱は230円だから、商品価格としては5万7500円に相当する。
昔、朝鮮人などが密造酒の基地になっていて、よく警察の手入れが行われたが、原価5000円のニコチンが10倍以上の「スモークレス・タバコ」になるなら、禁酒法時代のアル・カポネのような人物が日本にも登場するかもしれない。
脳には「血液脳関門(BBB)」という関所があり、脳細胞に有害な物質は、ここを通過できず脳内に入らないようになっている。ところが、ニコチンは他の植物アルカロイド:カフェイン、モルヒネ、コカインと同様に、ここをすんなり通過してしまう。ニコチンの誘導体はナイアシンといい、B群のビタミンでもある。
そういうわけで、ドローンと同じく、煙の出ない電子タバコは便利なものだから、必要なら「薬事審議会」を通して安全なものを販売する方向に、世論が向いてほしいと思う。理学部の出身者も「再生医療」ばかりに殺到しないで、そういう方面にも取り組んでほしいものだ。
5/20(水)の夜、広島市中心部のホテルで開かれる会合に、少し早めに出かけた。受付をすませた後、3Fの立体駐車場に繋がる玄関脇の、宮島のロープウェー・ワゴンの半分ほどもない小さな喫煙室に向かった。
世界的な禁煙ブームのせいか、外国人観光客が多い、このホテル喫煙室は、玄関のガラスも喫煙室の窓ガラスも目張りがしてあり、中が見通せない。
スライド式ドアを開けてびっくりした。中は、ダークスーツを着た若者で一杯。満員電車さながらで、立錐の余地もない。おまけに吐き出される煙の量が換気扇容量をはるかに超えていて、濃い煙のため斜め向こうの反対側のガラスが、ぼんやりとしか見えない。こんな光景は初めて見た。
開けたドアの方に流れるてくる煙で、眼がチカチカしたと思ったら。涙が流れてきた。こんな経験も初めてだ。昔聴いたマイルス・デービスのジャズ曲「煙が眼にしみる」を思い出した。
https://www.youtube.com/watch?v=NBQkHTPV_C8
あわてて外に出ると、外の車寄せの柱の陰になるあたりにも、同じ会社の若者が溜まっていて、ひっそりとタバコを吸っている。背に腹は代えられぬ。「赤信号、みんなで渡れば恐くない」。好奇心もあって静かに近寄って、同じようにタバコを吸いながら、若者の一人に挨拶し、いくつか聞いてみた。
宴会場の通路に何百人とあふれているダークスーツは、ソフトバンクの社員で「中四国年次大会」のために集まっている。今は「喫煙休憩」の時間だそうだ。IT関係の業界では、どこも喫煙率が高いという。
「ああ、よくわかるよ。もともと脳細胞にはニコチン類似物(アセチルコリン)に対する受容体が備わっていて、ニコチンはこれに結合することで、脳を活性化させる。
喫煙とは、ニコチン・アルカロイドを含む煙草を火で燃やして、気化したニコチンを口腔や気道の粘膜から吸収するという風習のことだ。
喫煙の害は、植物が燃える時に発生する、タール成分に由来するものがほとんどだ。ニコチンそのものには発がん性も気道傷害作用もない。
君たちは頭がよいのだから、ひとつニコチンを直接気化させ、煙を出さない電子タバコを開発してくれないかね。煙を出さないニコチン気化装置はノンアルコール・ビールと同様に、税法上のタバコにはならないだろう。国税庁は困るだろうが、煙害を問題視している厚労省や一部の医師たちは歓迎するのではないかな」
(私の仕事場には来客の喫煙者用に、1970年代の終わり頃、米国立がん研究所のスーベニア・ショップで売っていたピュータ製の灰皿が用意してある。)
まあ、煙草を1本吸う間に、そんな話をした。その時、少し離れたところにいた別の若者が、吸う度にパイプの端が赤くなる道具を口にくわえていた。「あ、これが電子タバコか?」と思った。実はまだ現物を見たことがない。
喫煙者は、脳細胞のニコチン受容体が依存症になっているから、口に棒状のものを咥えて、ニコチン摂取ができればよいので、煙などまったく必要としていない。
会が始まって隣席のEXスモーカーから、「壁紙が黄色くなったので張り替えたが、やはり黄色に見えるので、おかしいと思い眼科に行ったら、白内障を発見された」という話を聞いた。眼内レンズを入れたそうだが、あの手術をやると、「世の中はこれほど明るくてカラフルだったのか!」と感動するものだ。(しばらくすると、順化が生じて感動がなくなるが…)
その後、5/22「東京」が電子タバコの記事を報じている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015052202000125.html
<厚生労働省の研究班は二十一日、国内で流通する九銘柄中の四銘柄で、蒸気から高濃度の発がん性物質ホルムアルデヒドが検出されたとの調査結果を発表した。また一部の溶液からは、国内販売では認められていないニコチンが検出されたという。
報告を受けた厚労省の専門委員会は「健康への影響が否定できない」として、引き続き影響を調べる方針を確認。厚労省などは今後、規制の必要性や対策を検討する。
電子たばこは、VAPE(ベープ)などとも呼ばれ、スティック型やパイプ型などが流通。国内ではニコチンを含むものは医薬品医療機器法(旧薬事法)の規制対象となり、販売が認められていない。>
これも厚労省が記者クラブで発表したもののたれ流しだろう。
5/23「産経」では、用いている電子タバコの図は同じだが、検出されたホルムアルデヒド濃度は「紙巻きタバコと同程度か、それ以上の値」、「ニコチンを含まないとして市販されていたが、微量のニコチンが検出された」とポイントを押さえた報道がなされていた。
タバコにはニコチンが含まれているが、国内販売が認められている。タバコのタール分とニコチン含量はほぼ比例しており、「タール6ミリ」という表示のあるタバコ1本には、0.6mgのニコチンが含まれている。一箱20本のニコチン含量は12mgとなるが、この量はニコチンのLD50の約1/10である。(今は「タール1ミリ」というタバコが売れ筋のようだ。)
「産経」解説記事によると、「ニコチン入り電子タバコは国内販売が禁止されているが、海外では売られており、個人輸入する人が増えている」という。私は国産の家が高すぎるから、丸ごとカナダから個人輸入した。会社の提案では組み立て職人も派遣するという話だったが、滞在のホテル代を考えると、知り合いの工務店に頼む方が安くつくので、組み立てを依頼した。
個人輸入など易いものだ。
これで「ニコチン入り電子タバコ」を個人輸入して試してみるという、新たな実験のタネが見つかった。
ホルムアルデヒドが水に溶けたものが「ホルマリン」だ。昔、ある医学雑誌に依頼されて「ホルマリンの歴史」について書いたことがある。ホルムアルデヒドは自然界には存在しない物質で、蟻酸またはメタノールを加熱気化・酸化することで得られる。19世紀後半に初めて合成された。初期のプラスチックであるベークライトは、ホルマリンから合成された樹脂だ。
厚労省の検査結果が事実なら、原料に蟻酸かメタノールが入っていることになるだろう。
ホルムアルデヒドの問題とニコチンの問題は切り離して考えるべきだ。
半数致死量LD50(mg/Kg)は毒性の目安として用いられる。ニコチン100, シアン化カリ(青酸カリ)150, ホルムアルデヒド 800の順に猛毒であり、法で「毒物」に指定されている。「後妻業殺人事件」で用いられた青酸カリよりも、ニコチンの方がLD50は小さい。
だが青酸カリは工業用などで必要不可欠であり、容易に純品が入手できるために、殺人に使われるが、ニコチンの純薬を必要とする研究室など、限られている。
(と書いたが、ネットで調べると5グラムを5000円でネット販売しているところがあった。
http://www.siyaku.com/uh/Shs.do?dspCode=W01W0114-0121 )
5グラムのニコチンは、理論上は体重50Kgのヒトを2人に1人の割合で殺せる量になる。1本1mgのタバコに換算すると、5000本、250箱分になる。タバコ1箱は230円だから、商品価格としては5万7500円に相当する。
昔、朝鮮人などが密造酒の基地になっていて、よく警察の手入れが行われたが、原価5000円のニコチンが10倍以上の「スモークレス・タバコ」になるなら、禁酒法時代のアル・カポネのような人物が日本にも登場するかもしれない。
脳には「血液脳関門(BBB)」という関所があり、脳細胞に有害な物質は、ここを通過できず脳内に入らないようになっている。ところが、ニコチンは他の植物アルカロイド:カフェイン、モルヒネ、コカインと同様に、ここをすんなり通過してしまう。ニコチンの誘導体はナイアシンといい、B群のビタミンでもある。
そういうわけで、ドローンと同じく、煙の出ない電子タバコは便利なものだから、必要なら「薬事審議会」を通して安全なものを販売する方向に、世論が向いてほしいと思う。理学部の出身者も「再生医療」ばかりに殺到しないで、そういう方面にも取り組んでほしいものだ。
干し椎茸等には含まれているそうですよ。また、大気中でもメタンが酸化して生成されるようです。