将棋の藤井八冠が、JT杯(日本シリーズ)決勝で糸谷哲郎八段を破り、昨年に続いて連覇を果たしました。
これでタイトル戦八冠に加えて一般棋戦四冠も堅持して今年の対局を終えました。
藤井八冠の今年の成績は30勝5敗。勝率0.857となって、中原誠永世名人の持つ最高記録0.855を超えました。
これは瞬間最大風速で、最終的には来年3月の年度末にならないとわかりませんが、中原永世名人がこの記録を作ったのはまだ五段の時で、順位戦でもさほど強くない相手に勝ち続けたわけですから、大部分がタイトル戦の奪取か防衛だった藤井八冠の強さは同列には語れません。
年明け早々には王将の防衛戦が控えているので、3月まで6勝1敗ペースを守れるか微妙なところではあるものの、たとえ記録更新ができなかったとしても大いに賞賛されてしかるべきでしょう。
JT杯は持ち時間15分、使い切ると一手30秒、考慮時間1分が5回という早指しです。
印象的だったのは、大盤解説の佐藤康光前会長が何度も「お互いにこの手を30秒で指せるのはすごい」と感心していたこと、そして感想戦で「この場面でこの手はどうでしたか」と問われて両者が「それはこういう展開になるからあまりよくない」と読み切っていたことです。
藤井八冠はもちろん、糸谷八段も30秒の中でAIと同じかそれ以上を読んでいたわけで、改めてトップ棋士の凄さを見せつけられた対局でした。
「藤井ロス」ということばが生まれたようで、藤井八冠がタイトルを独占したので予選リーグやトーナメントを戦う必要がなくなり、対局の中継が激減してしまったという意味です。
藤井一強でつまらない、という声もちらほら聞こえてきます。
しかし棋士の強さのピークは20代中盤から後半といわれるように、21歳の藤井八冠はこれからさらに強くなっていくかもしれません。
タイトル戦19戦19勝、しかもフルセットまで行ったのは1回だけ、という異次元の強さを見せる若き絶対王者の快進撃は、いつまで続くのでしょうか。