盗人宿

いまは、わかる方だけ、おいでいただければ。

連覇

2023-11-20 06:48:43 | にゃんころ
将棋の藤井八冠が、JT杯(日本シリーズ)決勝で糸谷哲郎八段を破り、昨年に続いて連覇を果たしました。
これでタイトル戦八冠に加えて一般棋戦四冠も堅持して今年の対局を終えました。

藤井八冠の今年の成績は30勝5敗。勝率0.857となって、中原誠永世名人の持つ最高記録0.855を超えました。
これは瞬間最大風速で、最終的には来年3月の年度末にならないとわかりませんが、中原永世名人がこの記録を作ったのはまだ五段の時で、順位戦でもさほど強くない相手に勝ち続けたわけですから、大部分がタイトル戦の奪取か防衛だった藤井八冠の強さは同列には語れません。
年明け早々には王将の防衛戦が控えているので、3月まで6勝1敗ペースを守れるか微妙なところではあるものの、たとえ記録更新ができなかったとしても大いに賞賛されてしかるべきでしょう。

JT杯は持ち時間15分、使い切ると一手30秒、考慮時間1分が5回という早指しです。
印象的だったのは、大盤解説の佐藤康光前会長が何度も「お互いにこの手を30秒で指せるのはすごい」と感心していたこと、そして感想戦で「この場面でこの手はどうでしたか」と問われて両者が「それはこういう展開になるからあまりよくない」と読み切っていたことです。
藤井八冠はもちろん、糸谷八段も30秒の中でAIと同じかそれ以上を読んでいたわけで、改めてトップ棋士の凄さを見せつけられた対局でした。

「藤井ロス」ということばが生まれたようで、藤井八冠がタイトルを独占したので予選リーグやトーナメントを戦う必要がなくなり、対局の中継が激減してしまったという意味です。
藤井一強でつまらない、という声もちらほら聞こえてきます。
しかし棋士の強さのピークは20代中盤から後半といわれるように、21歳の藤井八冠はこれからさらに強くなっていくかもしれません。

タイトル戦19戦19勝、しかもフルセットまで行ったのは1回だけ、という異次元の強さを見せる若き絶対王者の快進撃は、いつまで続くのでしょうか。
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表彰状

2023-11-14 15:32:37 | にゃんころ
いつも世話になっている動物病院から電話がかかってきて「郵便物が届いているので取りにきてください」。
のらくろのの健康診断は4月に終わっているし、何か新たにワクチンでも打てという話だろうかと訪ねてみると、大きな茶封筒を渡されました。

           表 彰 状
              〇〇殿
              のらくろちゃん(15歳)

  あなたは長年にわたり適正飼養され、家族の一員として
  多くの愛情を注がれてきました
  あなたの動物愛護の精神を称えるとともに、のらくろ
  ちゃんの長寿を祝い表彰いたします

              令和5年9月30日

              公益社団法人東京都獣医師会
              会長 〇〇

あんたに「殿」と呼ばれる筋合いはないと思いましたがそれはさておき、「長寿」って何でしょうね。

たとえば人間は65歳から老人といわれています。
しかしこれは国連が世界全体に対して提示した数字であって、長寿国の日本では実情と大きく異なります。
猫の世界でも昨今は完全室内飼いが基本のため、野外での怪我や病気の可能性がなくなって20歳前後まで生きることが多くなっています。

私はのらくろに対して、たいしたことはしていません。
気をつけているといえば、「人間の食べる物は決して食べさせない」「13歳の時から高齢猫用のドライフードを与えている」くらいのものです。
狭い家で毎日毎日同じものばかり食わされて、さぞ不自由な生き方をしているだろう、と逆に気の毒に思うほどです。

のらくろが膝に乗りたがるようになったら秋の訪れ、ベッドの掛け布団に潜り込んで寝るようになったら秋本番、というのが我が家の「季節感」です。
今年もそんな季節になったんですね。
こんな当たり前の日々が少しでも長く続くことを願っています。


若い頃の写真しか載せていなかったので、つい先日の近影を紹介しておきます。


両目の上部の毛と髭に、白いものが目立つようになりました。
やっぱり長寿なのかなあ。

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盤石

2023-11-11 21:49:51 | にゃんころ
将棋の藤井聡太八冠が、竜王戦で挑戦者の伊藤匠七段を4-0のストレートで破って防衛を果たしました。

伊藤匠といえば、小学生将棋大会の準決勝で藤井少年を破り、「藤井を泣かせた男」として知られています。
今回の竜王戦でも、予選リーグ5組から強豪を次々に破って挑戦者まで登り詰めた、まさに「藤井世代」を代表する(藤井とは同学年)強豪棋士です。

それが蓋を開けてみれば、藤井の圧勝。特に第3局は藤井自身が後手番ながら「うまく指せた」というほどの完勝。

そして迎えた第4局、互いの研究がうまく噛み合って、きのうの一日目で81手まで進む驚異的な速さでした。
ところがその81手目、藤井八冠の指した手は、誰もが驚く「2四飛」。相手の歩の前なのでいわゆるタダ捨てです。
ここで封じ手になったのですが、巷では「新手の実験か、あるいは自爆か」と騒がれました。
当然AIの評価値も、伊藤七段に60%まで触れました。

今朝の伊藤七段の封じ手も当然、その飛を取る2四同歩でしたが、そこから3二角成とした藤井竜王は次第に評価値を盛り返し、「一手でも間違えたら詰まされる」猛攻を的確に最善手で対応して、最後には37手詰めという恐ろしい攻めをひとつも間違えずに進めて相手を投了にまで追い込みました。
いちど藤井八冠に傾いたAIの評価値が再び伊藤七段に傾くことは、いちどもありませんでした。
タイトル戦19連勝は、大山康晴十五世名人の記録に並ぶ歴代最長です。

これで今年のタイトル戦はすべて終わり、後はJT杯の決勝と一般棋戦を残すだけになりました。
もしも変なところで星を落とすことがなければ、かつて中原誠十六世名人が記録した年間最高勝率0.855を上回ることになり、まるでメジャーリーグでイチローが試合に出るたびに数十年前の記録を次々に掘り起こして塗り替えたような、驚異の快進撃を続けています。

さて、この21歳にして将棋界の頂点に立つ若者から、誰がタイトルを奪取できるでしょうか。
もちろん伊藤七段は今回こそ跳ね返されたものの、数年後に捲土重来を果たす可能性は充分あります。
かつて藤井キラーといわれた豊島九段も、タイトル戦でことごとく敗れてしまいましたが、依然大きな壁であることは間違いない。

そして最先鋒は、永瀬九段でしょう。

年明け早々に行われる王将戦の挑戦者決定リーグで、永瀬九段はトップを狙える位置にいます。
このままいけば、先日行われた王座戦と同カードになるかもしれません。
普段は練習相手として互いの手の内を知り尽くし、互いを高め合ってきたこのふたりの対戦は、今後数年のゴールデンカードになるかもしれません。

もちろん物心ついた頃からAIがある環境で育った若手が、名乗りを上げる可能性も充分あります。
とにかく誰かが藤井八冠を止めないと、早ければ4年後に彼は「永世八冠」というとんでもない記録を立ててしまうかもしれない。

私が生きているうちにそれを拝んでみたい気持ちと、誰が八冠の一角を崩すかを見てみたい気持ちが交錯して、複雑な気持ちです。
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