YouTubeに上げる怪談話、次は江戸川乱歩の作品なのですが、その中に昔の「覗きからくり」の見せ物が登場します。
覗きからくりの説明は省きます。始めると長くなる。
問題はその中身です。
作品の中での覗きからくりは、八百屋お七の物語で、「ちょうど吉祥寺の書院で、お七が吉三にしなだれかかっている」というくだりの描写があります。
八百屋お七くらいはどなたもご存知でしょう。だからこれも省略。
何が問題かというと、お七の恋の相手は読み物の中では吉三郎、演じ物の中では吉三と相場が決まっています。
ところがこの「吉三」の読み方が、物語によって異なるのです。
「きっさ」と読ませる作品もあるし、「きちざ」と読ませる場合もある。
いずれの作品にも吉祥寺の場面は出てきますから、それだけでは判断できません。
で、乱歩センセイは、普通の人ならひらがなで表記するところをわざと漢字にしたり、あるいは明らかな誤用でありながらふりがなで強引に読ませることでも有名ですが、肝心の「吉三」にふりがながふられていない。
なんてこったい。
まあ「落語」にすると銘打っている以上は落語の土俵で「きちざ」と読ませていただきますが、脇が甘いですよ、センセイ。
それでもって吉祥寺。
私は若い頃、下北沢の近くに住んでおりましたので、吉祥寺という地名は子供の頃から知っておりました(行ったことはほとんどない)。
なんせ通っていた高校が東急東横線沿線にあったので、帰りには毎日井の頭線の「渋谷発吉祥寺行き」に乗っていたのです。
高校を卒業してから40年以上過ぎたいまになって、初めて知ったことがあります。
吉祥寺という「街」に、吉祥寺という「寺」はない
本物の吉祥寺は、文京区の本駒込にあります。
現在の吉祥寺という「街」は、明暦の大火で焼け出された吉祥寺の門前町の人々が移転した場所だそうです。
いやー知らなかった。はっはっ。