愛するココロ 作者:大隈 充
12
廿日市を過ぎた辺りから夕陽は、ほとんど斜めに
フロントグラスを横切っていた。
太田川沿いに車を止めて、由香とトオルが広島の中心地から
外れた商店街をエノケン一号と歩き出すころには、もうどの
店の看板にも灯りが点っていた。
キャタピラで動くエノケン一号は、障害物や歩行者を実に見事に
退けながら、裏路地へ裏路地へとふたりを誘導した。
「もうすぐ商店街も終りみたいよ。」
「本当にこんなところに劇場があんの?」
エノケン一号は、由香とトオルの質問には答えずスイスイ
角を曲がっていく。
そしてぴたりとキャタピラが止まって
頭のカメラ眼が看板を見上げた。
「ここ!」
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廿日市を過ぎた辺りから夕陽は、ほとんど斜めに
フロントグラスを横切っていた。
太田川沿いに車を止めて、由香とトオルが広島の中心地から
外れた商店街をエノケン一号と歩き出すころには、もうどの
店の看板にも灯りが点っていた。
キャタピラで動くエノケン一号は、障害物や歩行者を実に見事に
退けながら、裏路地へ裏路地へとふたりを誘導した。
「もうすぐ商店街も終りみたいよ。」
「本当にこんなところに劇場があんの?」
エノケン一号は、由香とトオルの質問には答えずスイスイ
角を曲がっていく。
そしてぴたりとキャタピラが止まって
頭のカメラ眼が看板を見上げた。
「ここ!」