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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局ー5-

2008年04月11日 | 投稿連載
     こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
            5
熊とウサギが肩組んだ姿をモチーフにした看板にKids Robe とロゴが書かれて、
一番下に「しあわせを運ぶ子ども服店」の文字。
自由が丘の熊野神社がすぐ裏手にあって、ビザンチン風の白い建物のドーム屋根
の周りが鎮守の森に囲まれているため一見軽井沢のペンションに来たような錯覚
を覚える立地にその上田祐二の子供服店は建っている。
 その大きなガラスの自動ドアが開いて、スタイリストの富島倖(サチ)が困った
顔で表をキョロキョロ見回して、 
「由美ちゃん!店長、知らない?ユウさん。」
ショーウィンドを拭いていた小太りの今年福島の高校を卒業したばかりの
鈴木由美が振り返って、子犬のように首を傾げて返事した。
「店長さん、どこか行ったヨオ。テニスラケット持ってヨ。」
「赤いアディダスのバッグ持ってた?」
「はい。」
「この忙しいときに又多摩川のテニスクラブなんか行って・・のん気な店長っ。」
「今日は、朝お祝いの花届けたら何もないからって・・・」
「何が何もないよ。仕入れの伝票整理だってあるし、信金の更新手続きと監査
の会計士さんも来るのに・・・」
「ケイタイに連絡したら・・・」
「見事に持って行ってないのぉ!置いてちゃって。」
「だってさっきケイタイでうれしそうに話しながら車に乗って行きましたヨ。」
「ふん!それは裏ケイタイ。」
「番号わからないですか。」
「そんなの、抜かりないわよ。ちょっと由美ちゃんのケイタイ貸して。」
「ええ。わたしの。」
とケイタイを渡すとサチは素早い指裁きで番号を打つ。
「私や店の電話番号は、着信拒否になってるから・・・・」
「はい。上田です。」
サチは、手で通話口を押さえて、
「出た。出た。」
「上田ですが・・・」
電話の向こうでは、テニスコートのネット外のベンチで真っ黒に日焼けした
上田祐二が汗を拭きながらケイタイに出ていた。
「店長、もうすぐ会計士さんが来るんですけど・・」
「サチちゃん。どうしてわかったの・・・」
とベンチに座りこんだ。
「そんなことより早く帰ってください。」
「そうか今日監査か。忘れてた。」
とベンチのバスケットに入ったハンバーガーを取ろうとすると一瞬で消えた。
茶褐色の野良犬がものすごい速さで獲物のハンバーガーの入った袋を咥えて、
多摩川の土手へ走って行った。
「あああああー」
「ああ、じゃなくお願いします。帰ってください。」
サチは、そういうと電話を切った。
「帰ってくるわ。」
「ふーん。でも行く前のケイタイだとプライベートでなんか約束していた
みたいだったけど。自由が丘のカントリーで夕食なんて言って・・・」
「スカンジナビア・レストラン「カントリー」!新しいカメラ屋の女の子ね。
きっと!・・よくまあ、懲りずに若い子と・・」
そこへ子供連れのヤンママがやって来る。
「ああ、いらっしゃいませ。」
「あのー、そこにポートレート半額券って書いてますけど、どの服買っ
てもいいんですか。あのウィンドウのセール品も。」
恐る恐るヤンママが聞くと、一瞬ギクっとサチはなったがぐっと抑えて
店内に案内した。
「ええ、三日間の限定ですから。どうぞお入りください。」
と入口に張られた「いま子供服購入者にプロによるポートレート写真撮影
半額券進呈!」の張り紙をサチが無言で睨み付けて入っていく。
雑巾をもった由美、めがねを外してマジマジとその張り紙を見た。
「三日間限定ってどこに書いてあるの?」
と呟いていると、「早くお客さんでしょ」と
サチに怒鳴られた。
「はーいヨ。」
夕暮れの子牛が囲い小屋にトボトボと入るように由美ちゃんは入っていった。

 ポートレート半額券の半券を差し出す春に純少年の肩を抱いていた佐藤
沙織は写真館の入口で受け取り、?って顔になった。
「この半券を次回持ってこられたら焼きまわし現像代が一割引きになります」
「ああ。そうですか、有難うございます。」
「ぼく、元気出してね。」
と春は、純の頭を撫でる。
「ちょっとさっき聞いていたら、買ったばかりのチワワが死んだんだって・」
春のすぐ後ろから首を出して犬飼健太が悲劇の母子に声をかけた。
「はあ・・・」
と驚いている沙織に春がすばやく紹介した。
「ああ。こちら、ペットの探偵さんなんです。犬飼さん。」
「へーえ。そうですか・・」
「どうも。こういう者です。」
と名刺を差し出して
「どこで買ったんですか。」
「ネットで知り合った人の紹介で。ワンニャン天国堂ってブリーダーさんです」
「はぁーん。やっぱり。悪質ブリーダーだ。」
「ええ。そうなんですか。」
「今年に入ってもうこれで3回目だな。その名前聞くの。みんな病気だったり、
欠陥があったり・・・」
「うえーぇぇぇ。どうりで安と思ったぁ。」
「そいつの居場所がわからないんだ。ネットの住所には別の人が住んでいて」
「そうだったんですか・・・」
「モグリの業者の可能性がある。」
「血統書はどうもホンモノでしたけど。」
「法律に引っかからないようにうまくやるんだ。そういう連中って。」
「でもどうしてそんな弱い子ばかりなの?そのブリーダー。」
春は、素朴な疑問を投げかけた。
健太は、目を曇られて吐き捨てるように明快に回答した。
「次から次から無理に交配させるんだよ。」
「ニワトリみたいに・・」
「顎の骨が溶けるまでメスを酷使する。」
沙織と春は、同時に生唾をのんだ。
「もう、行こう!」
と純が母親の手を引っ張った。
「はい。行きます。行きます。」
沙織は、沈んだ声で純に応えると春と健太にペコリと頭を下げて店の
外に出た。
「まあ、元気出して・・」
その健太の声に母子は、頷くとまっすぐ廊下を階段へむかった。
「有難うございました。」
ハリのある声で春が廊下で見送った。
母子は、階段で一礼して降りていった。
「そうだ。メガマックか何かどう?お腹すいてない。」
健太のその誘いに「私、今ほしくない」と春はきっぱり断って受付
カウンターへ移動した。
「そうう?奢りなんだけどなぁ・・」
と健太も受付へ。
「あのー、」
春と健太が振り返ると、ハルお婆ちゃんがスタジオの中から微笑んでいた。
「お婆ちゃんも何かペットのことだったら、何でも相談に乗るよ。」
「いえ。あのー。私、写真撮ってほしいんです。」
「ポートレートですね。」
春はすぐにスタジオの中へ入って行った。
また、静かになってしまうカメラ店。
スタジオのドア窓を覗き込んで健太は、ふんと大きな息を吐いて、
長椅子にどっと腰を下ろした。
「婆さん、遺影撮るのかぁ。」
ひとり言を云った。
ぴょょょろろん。
健太のケイタイが鳴った。
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雪苺娘~シーちゃんのおやつ手帖41

2008年04月11日 | 味わい探訪
リニューアルする東京駅。
丸の内も高層化の波に飲み込まれて、石造りのビルヂングが
消えていきます。日本郵政公社のビルの存続も難しいそうです。
そんなホットな東京駅で売られている「雪苺娘」。
けっこうたっぷりお腹にきます。
駅弁の旅のデザートに、残業前のおやつに、お茶と一緒に。
ただぱっくり食べた後に口の周りが白くなります。
お気をつけて。
コメント (2)
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