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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-6-

2008年04月18日 | 投稿連載
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者 古海めぐみ
         6
「はい。こちら、自由が丘ペット探偵局!」
と健太はケイタイを開いてショウバイ声色で答えた。
「あの、子犬を探して欲しいんです。」
電話の主は、若い男みたいだがほとんど涙声で糸電話みたいに
細くて遠い曇った響きを伴って健太の耳に届いてきた。
「逃げたんですか。」
「多摩川の河原でついリードを落した隙に。
ぼくが・・・悪いんです・・・」
「はい。はい。落ち着いて。泣かないで。今どこですか。」
「多摩川水門の近くです。」
「判りました。あのー、お名前は?」
「田村といいます。」
「田村さん。お話を伺います。捜索資料を作りますので
自由が丘駅についたら又連絡ください。」
「二十分ぐらいで行きます。」
随分長い間多摩川の河原を探し回ったのか、田村という
若い男のその「行きます」という言葉の語尾が喘ぐ息に
呑まれて聞き取れなかった。
   *
 陽はすっかり傾いて、多摩川の水面が草地に這う大蛇の
ようにSの字を描いてキラキラとやさしく輝いていた。
丸子橋から上流に水門を越えるには、多摩川台公園の下を
走る歩道が片側しかない崖っぷちのバス通りに一旦出ない
と野球グランドの広がる多摩川緑地の河川敷には、行けな
いのだけどこの日は、水門の水量が渇水気味で水門の管理
事務棟の脇から川際へ下りるとバス通り下の崖の水際が
その川底の岩肌を露呈して、緑地のある上流へ川沿いに
歩いて行けた。
 その赤土のゴツゴツした崖下のわずかな河川敷をぴょん
ぴょんと跳ねて行くものがいた。
それは、シバ犬ぐらいの大きさの野犬だった。
まだ幼い毛に覆われ子犬に見えるがその肢の筋肉は、隆々
としていてまるでカモシカのようで、又身のこなしは
イタチのように敏捷だった。
ところがその野犬の後を転びそうになりながら追いかけ
ている人間がいた。
泥だらけのテニスウェアを着た上田祐二だった。
ピピピピピピ・・・
祐二は、口笛を吹きながら、必死で犬を呼びとめようと
注意を喚起して岩肌を四つん這いで前進していた。
こっち、こっち、ほらほら、ピピピピピ・・
野犬は、ピタっと突き出した岩の上で止まってビニール袋
を咥えたまま祐二の方を見た。
そう。そうだよ。いい子だね。じっとして!
その袋返してね・・・ハンバーガーはあげるから・・・
野犬は、きれいな鼻筋を祐二の斜め45度に向けて祐二の
視線を外して川に吹く風に身をまかしていた。
祐二は、ゆっくりと傾斜のある崖の水際を大股に近づいて
行った。
お利巧だから、その袋の中に僕の財布があるんだよ・・・
それだけ返してくれれば・・・
もうほとんど野犬の目の前まで来た。
野犬のいる岩は、川に張り出しているがその先が一度細く
括れて崖際に五メートルは這いつくばって行かないと
先へ進めない。
祐二は、やった!追い詰めた、と心の中で呟いた。
財布だけ返してね。アメックスのゴールドカードが入って
るんだよ・・・きみには、必要ないでしょ・・・
ときれいなオスワリの姿勢でじっとしている野犬の鼻先に
右手を伸ばした。
野犬の袋を咥えた鼻がかすかに膨らんでうっううと唸った。
祐二がその財布の入ったコンビニ袋を掴んだと思った瞬間、
ものすごい跳躍力で野犬は、飛んだ。そして一度崖の斜面
を蹴って、五メートル先の岩場に着地した。
祐二は、するりと袋を取り損なった。
風が空を駆けていったのを目にした。次の瞬間音が無くな
っていた。それから自分は魚になったと勘違いした。
ドボン!
祐二は、川に落ちていた。
野犬は、ビニール袋を脚もとに置くと水に消えた祐二を見た。
その口の開いた姿がいかにも笑っているように見えた。
くそ!バカ犬!
祐二が水面に浮き上がって、岩場に泳ぎついて掴まったとき、
もうどこにも野犬の姿がなかった。
野犬のいた岩場の先に広がる青々とした河川敷の草むらが
そよそよと風になびいていた。
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鎌倉ニュージャーマンとオランダ家~シーちゃんのおやつ手帖42

2008年04月18日 | 味わい探訪
今日は春らしい、花の形のお菓子を2つご紹介。
鎌倉ニュージャーマンのバラのマドレーヌは、一つずつ透明な
ケースに入っていて、まるでコサージュのような愛らしさ。
オランダ家のチューリップ・サブレは、チューリップの写真が
プリントされた箱に入っていて、これまた可愛いです。
どちらもちょっとしたプレゼントに最適なお菓子です☆
 
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