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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-45-

2009年01月16日 | 投稿連載
こちら、自由が丘ペット探偵局 作者古海めぐみ
        45
 花は桜からツツジとハナミズキに主役の座を譲って、
薫風が肌にやさしい季節になった。自由が丘の街並み
も雨季の前のキラキラと輝いた青空色のモラトリアム
な空気に満ちて、ノースリーブやミニスカートの女の
子たちが闊歩して歩いていた。
その賑やかなマリークレール通り裏の緑道で猫田春が
イタリアングレーハウンドとその飼い主の青年とを
カメラで撮影していた。春がシャッターを押す度に
後ろで犬飼健太がいいね、いいね、ナイスショット
と合いの手を入れた。どうやら被写体のペットと
青年は、健太のペットホテルのお客らしく撮影が
終ると、お金を健太が受け取り、次回ホテル代の
割引券をその青年に渡していた。
 犬飼健太の顔や手足の傷はもうすっかりきれいに
なって新しい商売に顔が生き生きとしていた。
その犬飼ペット探偵事務所では、ふたつの変化が
あった。それもある意味この梅雨前の季節のよう
にモラトリアムなお試し期間の出来事といっても
よかった。
ひとつは、今緑道で繰り広げられているペットの
ポートレート写真会で、上田祐二の子供服を買った
人にポートレート写真サービスというのがあったが、
これにあやかって健太が考えついたペット写真会
サービス。健太の営業でペット写真を格安でやり
ますと言って、何組か集まると公園か春のスタジオ
で写真会をやって、ペット探偵局の宣伝やペット
ホテルの割引券配布をしようというものだった。
正にお試しのサービスだったが、結構評判がよく
祐二の子供服の客より多かったりして祐二が嫉妬
しているのを店員の由美ちゃんたちは横目で見て
笑っていた。
 そしてもうひとつのモラトリアムなお試し期間は
田村良弘だった。結婚も職場も辞めてしばらくは
派遣で仕事を得ようとしていたが、何を思い立っ
たか、獣医になると大学の獣医学部に入るための
勉強をするという決心をして、健太のところで何
でもいいから一年間受験勉強する間アルバイトを
やらせてくれないかと申し出て、そんな余裕はな
いと健太が断ると、タダでもとにかくペットに触
れたいというあまりの強烈な決意で、健太は、と
りあえず仕事があるときだけ時給900円で働い
て貰うということにした。
それでこの日は、迷子猫のビラ貼りを一日五時間
やっていた。
 春と健太がペット撮影会が終ってスタジオHAL
に帰って来たのは、午後三時を回っていた。
春の淹れたエスプレッソを待合室で健太と二人で
飲んでいると、迷子ビラの残りを抱えた田村が背
広の男と自動ドアから入って来た。
「どうした?田村君。まだビラ貼りは、終って
ないよね。」
健太は、エスプレッソの苦味を舌の奥に残して顔
をしかめた。
「はい。途中でスイマセン。ただこの人が健太さん
にお会いしたいと訪ねて来られたので連れて来ました」
健太と春がソファから立ち上がって見ると入口で
白髪混じりの男がペコリと挨拶をした。
「八木と言います。」
と健太に近づくと名刺を渡した。
「国立博物館主事ー。」
と健太はその名刺の肩書きを声に出して読んだ。
「あの、こちらの田村さんが飼っていた犬がですね。
先日保護センターから逃げた犬ですけどね。その写真
を私どもの研究員が迷子ビラで偶々見ましてですね。
私が探していた犬によく似てるんで、探偵局に電話
したら、ちょうど田村さんが出られて、ここへ来た
というワケでして。はい。」
「おたくの犬?」
健太のみならず春も話が全く読めないでゴクリと
エスプレッソを飲み下した。
「はい。」
「ああ。健太さん、こういうことらしいんです。」
と田村がことのあらましを話しはじめた。
「実はあのワンニャン天国堂で買ったナナちゃんは、
元々迷い犬だったらしいんです。捕まった安田の息子
が拾ってネットで売りに出したんです。警察の方から
聞きました。国道16号線の八王子バイパスでこちら
の八木さんが交通事故に遭われて秩父の農家から貰い
受けた子犬を逃がしたんだそうです。」
「いや、運転していた学生が居眠りしましてですね。
二週間ほど入院したんですが自損だけで大したこと
にならなかったんです。ただ貰った子犬のキバが見
当たらずずっと探していたんですね。ちょっとカワ
カミ犬に似てるんですが筋肉質で丈夫な奴でしたから
死んではいないと思っていたんですがね。そこで
研究員が見せてくれたあのビラの写真がそっくりな
ものだったんで・・・」
「はあ、では、ナナはキバだと。」
健太はそういうとケイタイを取り出してデータファ
イルのナナの写真を繰り出した。
「はい。キバです。前脚にある斑点の形が同じで
保護センターを逃げ出す敏捷性も考えるとキバに
間違いないと思います。キバは、ニホンオオカミ
の可能性があります。」
「ニホンオオカミ!」
春と健太が同じテンションで発声した。
「たぶん。頭骨のレントゲンとDNA鑑定とを
やればある程度実証できるんですがね。」
「でももうどこに行ったか多摩川で群れを作って
上流へ消えちゃったよ。」
「秩父の山へ帰って行ったかもしれません。」
「健太さん。ほら、アメリカのマリア・ワタナベ
のメールで言っていたことが当たっていたんだわ。」
健太は、白目をくるくると回転させてじっとナナの
今までの姿を考察した。
そう言えばあんなケモノぽっい犬は見たことがない。
健太は、ソファにドカっと座ってから答えた。
「おそらく見つからないな。ニホンオオカミだったら。
山に帰ったら特に。飼い犬とはまったく違うから。」
「探偵さんでも無理ですか。」
「ああ。ナナ、いやキバがニホンオオカミなら
無理です。」
きっぱりと健太は宣言した。
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はらドーナッツ~シーちゃんのおやつ手帖79

2009年01月16日 | 味わい探訪
オカラ豆乳の風味が絶妙に美味しいドーナッツ☆
上記の他にサトウキビ、紅茶、コーヒー、かぼちゃ、
にんじん、きなこ、レモンジンジャーなど種類豊富です。
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