今回のオリンピックでの日本人の最大の関心は、女子フィギアスケートであったろう。日本の浅田真央選手と韓国のキム・ヨナ選手、どちらが金メダルを取っても不思議ではないという前評判であったが、惜しくも浅田選手は銀メダル、金メダルの栄冠はキム・ヨナ選手に輝いた。誠に残念ではあるが、それでも銀メダルとは実に立派であり、称賛の拍手を浅田選手に送りたい。また、キム・ヨナ選手の金メダルの演技にも拍手を送りたい。
浅田真央選手とキム・ヨナ選手、この二人のことを考えながら、学生時代の二十歳の時に一人で韓国を旅行したことを思い出した。そのころ、自分の進路、性格、能力など言わば人生に悩んでいた頃で、今流に言えば自分探しのために出かけた。
小生の家系は江戸時代から続く地主で、父の時にその家から独立した。そのため、小生の家系は韓国や朝鮮半島とは全く関係ないが、何故か子供のころからいわゆる在日の子供とは仲が良かった。そのため、気持ちの上では韓国は近い国であった。
片言の英会話力と簡単なハンゴル語の会話集を頼りに関釜フェリーに乗って韓国に向かった。当時、韓国はクーデターで政権を取った朴大統領の時代で、首都ソウルでは夜間外出禁止令が出されていた。韓流ブームで日本人が大挙して韓国を訪れるようになったのは、これよりはるか後である。
韓国では、釜山、慶州、ソウルを旅した。慶州では、たまたま天理大学のハングル語学科の学生と出会った。彼は、ハングル語の会話力を上げるため、大学が長期の休みになると韓国を旅しているということであった。彼のなじみの食堂で彼と夕食を取ったが、そのテーブルにそこでアルバイトをしている女性も加わった。どうも、彼と彼女は知り合いらしかった。
彼女は、「韓国の経済や生活水準は日本より5年位遅れているが、10年後には日本を追い抜く、そう私たちは学校でそう教えられてきたし、自分たちもそれを目標に頑張っている」と言った。また、彼女は、「10年後には日本のように先進国首脳会議(サミット)のメンバーになってみせる」とも言った。小生は、この時初めて韓国では学校で子供たちに日本に対するもの凄く強いライバル意識を教え込んでいることを知った。あれから30年以上が過ぎたが、恐らく、それは現在も同じであろう。なぜなら、今になっても韓国の経済力は日本に追いついていないし、サミットの主要メンバーG8にもなっていない。ただ、オリンピックのメダル獲得数では、もうずっと以前に日本を追い越してはいるが。
今回のオリンピック、女子フィギアスケートの競技前に浅田真央選手とキム・ヨナ選手の記者会見があった。浅田選手は自分の気持ちを述べただけだったのに比べて、キム・ヨナ選手は明らかに浅田選手に対する闘争心を表していた。小生が想像するに、キム・ヨナ選手にとっては浅田選手との勝負ではなく、韓国人の日本人に対する勝負だったのではなかろうか。