獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

今年も高病原性トリインフルエンザを警戒する時期になった。

2023-10-17 20:09:12 | 連絡事項
 読売新聞によると、今月4日に北海道美唄市のアシブトガラスの死骸から高病原性トリインフルエンザ(HPAI)ウイルスが分離されたとのこと。警戒、警戒。また、高病原性トリインフルエンザを警戒する季節がやってきた。昨シーズンは国内の養鶏場でHPAIが多発したが、その予兆としてカラスのHAPIがあった。今シーズンもほぼ同時期にカラスで発生。これは今シーズンのHAPIウイルスがすでに国内に入った証拠。この件はすでに管轄の家畜保健衛生所から通知を受けているが、大手新聞も掲載するようになった。
 昨シーズンも日本中の養鶏場でHPAIの対策をしていたにも関わらず26道県の82事例の発生があり、鶏の殺処分数は総計約1,771万羽にもなった。そのために鶏肉、鶏卵の市場価格が上昇し、消費者に苦痛を強いることになった。人間が生きていくには動物性たんぱく質は必要不可欠、その適当な供給源である鶏肉、鶏卵は安価でなくてはならない。そのために私も畜産業界の伝染病相手の獣医師をやっているのに、今のところHAPIには根本的な対策がない。これから来年の春、カモがシベリアに帰るまで緊張を強いられる。そして、一番怖いのHAPIウイルスが日本国内に常在するようになること。これだけは防がねば。

これってもの凄いピントはずれだね

2023-10-03 23:21:36 | 連絡事項
 今年のノーベル医学生理学賞は、メッセンジャーRNAワクチンの基礎研究で大きな成果を上げた、ビオンテック社のカタリン・カリコ博士とペンシルベニア大学教授のドリュー・ワイスマン博士に授与されると発表された。このニュースに対して、武漢肺炎(COVID19)に対する新型コロナワクチンは多くの人で副反応が見られ、接種後の死亡例や副反応に苦しんでいるケースが国内外で多数報告されており、こんな危ないワクチンの研究にノーベル賞授与はおかしいという意見もある。これはもの凄い誤解というか、大変なピントはずれの意見である。なぜなら、カリコ博士とワイスマン教授へのノーベル医学生理学賞の授与は、メッセンジャーRNAワクチンの基礎研究に対してであり、新型コロナワクチン開発に対してではない。
 ワクチン開発は基礎研究を基にして行わるが、このステージは応用研究である。そして、開発に成功したら臨床の現場で医師がその安全性と有効性ついて試験する。このステージが臨床研究。そして、臨床の場で問題が明らかになったらその問題を製薬メーカーは改善する。これが改良研究である。ワクチンのみならず、全ての医薬品はこのようにして医療現場で使われるようになる。
 今回、カリコ博士とワイスマン教授に送られるノーベル医学生理学賞は、“全てはここから始まった”、と言うべき基礎研究に対してのものであり、新型コロナワクチン開発に対するのものではない。この点について誤解をしている人たちがおり、その人々が間違った認識をSNSで拡散させている。もっと冷静になってニュースを見てほしい。