七面鳥には白血病の一種である細網内皮症という感染症がある。原因は、トリレトロウイルス科のガンマレトロウイルス属の細網内皮症ウイルス(REV)である。このウイルスは鶏にも感染するが、鶏では殆ど病気を起こさない。僅かに感染実験で発病が確認されているが、野外症例での発病事例は我国ではこれまでなかったと言ってもよい。唯一の例外が、1970年に発生したマレック病(MD)生ワクチンへの迷入(ワクチン用語、混入と同義語)事故である。この時は、原材料のアヒル卵に入り込んでいたREVがワクチン製造の培養工程で増殖してしまい、その結果、養鶏場で鶏がMD生ワクチンを接種される時に大量のREVも同時に接種されたことから発病したものである。このような迷入ウイルスの事故のケースでないとREVによる問題は発生しないし、現在はSPF鶏卵を用いて原材料からREVを完全に排除しているので、上記のような事故は発生しえない、と考えられていた。ところが、とんでもないことが最近解ってきた。
国内だけなく世界中の養鶏場で広く発生している鶏の感染症の一つに鶏痘という病気があり、この原因ウイルスである鶏痘ウイルス(FPV)も養鶏場に広く浸潤している。この鶏痘に対しては生ワクチンが全ての養鶏場で使用されている。最近読んだ文献によると、野外においてREVの遺伝子を取り込んだFPVの存在が確認され、その自然発生の遺伝子組み換えFPVを鶏に接種すると、FPVだけでなくREVの感染も起こったというのである。さらに悪いことに、そのようなREVの遺伝子を含むFPVが日本の三重県の養鶏場で確認されたとある。
この養鶏場では、最近、MDワクチンを接種しているにも関わらずMDが多発し、三重県の家畜保健衛生所が行った詳しい検査の中で、発病鶏からREVとREVの遺伝子を含むFPVが分離されている。現時点では、この農場のMD多発とREVの遺伝子を含むFPVの感染の関係は不明であるが、REV遺伝子を含有するFPVが感染することで鶏にREVを同時に感染させ、そのために免疫抑制を起こした鶏がMDを発病した可能性は十分に考えらえる、と著者は述べている。
FPVが含まれるポックスウイルスは、最も長い遺伝子を持つウイルスの一種であり、遺伝子組み換え技術の上でベクターウイルスとして研究されてきた。実際、鶏用ワクチンの分野でもFPVの遺伝子にニューカッスル病(ND)ウイルスの遺伝子の一部を組み込んでFPVとNDの両方を予防するためのワクチンが海外では使用されている。しかし、これはあくまで人為的管理された実験施設内で作られたウイルスであり、まさか野外の養鶏場で自然発生的に他のウイルスの遺伝子を組み込んだFPVが生まれて来るとは考えてもみなかった。本当に野外の現場は面白い。
国内だけなく世界中の養鶏場で広く発生している鶏の感染症の一つに鶏痘という病気があり、この原因ウイルスである鶏痘ウイルス(FPV)も養鶏場に広く浸潤している。この鶏痘に対しては生ワクチンが全ての養鶏場で使用されている。最近読んだ文献によると、野外においてREVの遺伝子を取り込んだFPVの存在が確認され、その自然発生の遺伝子組み換えFPVを鶏に接種すると、FPVだけでなくREVの感染も起こったというのである。さらに悪いことに、そのようなREVの遺伝子を含むFPVが日本の三重県の養鶏場で確認されたとある。
この養鶏場では、最近、MDワクチンを接種しているにも関わらずMDが多発し、三重県の家畜保健衛生所が行った詳しい検査の中で、発病鶏からREVとREVの遺伝子を含むFPVが分離されている。現時点では、この農場のMD多発とREVの遺伝子を含むFPVの感染の関係は不明であるが、REV遺伝子を含有するFPVが感染することで鶏にREVを同時に感染させ、そのために免疫抑制を起こした鶏がMDを発病した可能性は十分に考えらえる、と著者は述べている。
FPVが含まれるポックスウイルスは、最も長い遺伝子を持つウイルスの一種であり、遺伝子組み換え技術の上でベクターウイルスとして研究されてきた。実際、鶏用ワクチンの分野でもFPVの遺伝子にニューカッスル病(ND)ウイルスの遺伝子の一部を組み込んでFPVとNDの両方を予防するためのワクチンが海外では使用されている。しかし、これはあくまで人為的管理された実験施設内で作られたウイルスであり、まさか野外の養鶏場で自然発生的に他のウイルスの遺伝子を組み込んだFPVが生まれて来るとは考えてもみなかった。本当に野外の現場は面白い。