獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

高病原性トリインフルエンザの多発に思う

2011-02-06 00:23:09 | 仕事

この冬は高病原性トリインフルエンザの発生が異常に多い。養鶏場では、昨年11月末に島根県の採卵養鶏場で発生、それで治まれば良いが、と思っていたところ、今年になって多発している。121日に発生した宮崎県のブロイラー種鶏場の事例を皮切りに、これまでに宮崎県では何と10農場、鹿児島県、愛知県、大分県でもそれぞれ1農場で発生している。

原因ウイルスは、いずれもH5亜型トリインフルエンザウイルス、N亜型についてはこれまでに解析が終了したものはいずれもN1亜型である。すなわち、原因ウイルスはH5N1亜型トリインフルエンザウイルスということであり、原因ウイルスは高病原性で毒性が強いトリインフルエンザウイルスである。

実は、この高病原性トリインフルエンザウイルスは、昨年秋以来、野鳥の死骸からこれまで以上の頻度で分離されており、各県の家畜保健衛生所は警戒を強めていた。それにも関わらず、今年になって13例も発生、現時点ですでに過去最も多発した年の2倍以上も発生している。この増加の原因は、何であろうか。

また、本来はカモのウイルスで、そう簡単には他の種類の野鳥に感染しないはずの本ウイルスが、さまざまな野鳥から分離されていることも心配である。何らかの遺伝子変異が起こっていないか、その点も気がかりである。

原因ウイルスの農場への侵入経路は、これまでところ解明されていない。野鳥がウイルスを持ち込んだ可能性が最も強いとは思われるが、インフルエンザウイルスは実験的にはマウスに容易に感染することから、野鳥の死骸や排泄物を捕食したネズミが鶏舎に持ち込んだ可能性もありうる。感染経路の究明は、国と各県の専門家チームで検討されており、今後の報告を待ちたい。

兎に角、宮崎県は、昨年の口蹄疫の発生で畜産業界、いや地域経済が大打撃を被った。それに追い打ちかけるように、この冬には高病原性トリインフルエンザの多発である。関係者の心痛は如何ばかりであろうか。心からの同情申し上げたい。